時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
628 / 1,197
第二十三節「驚異襲来 過ち識りて 誓いの再決闘」

~煩 悩 露 呈~

しおりを挟む
「それじゃ、今度は私の番ね……私、相沢瀬玲は、魔特隊を辞める事を止めまーす!!」



 笑顔での突然の一言。
 事情を知らない者達はその一言に疑いが晴らせず、皆がキョトンとした顔を浮かべさせる。
 あまりの反応の薄さに、思わず瀬玲が周囲を見渡す様にキョロキョロと伺うが……思った様な反応が来なかったが気に入らなかったのか、笑顔だった顔はどんどんと人を蔑む様な冷たい顔へと変化していった。

「……反応薄くね?」
「っていうか、お前本当にセリかよ……」

 勇がそうぼやくのも無理は無い。
 瀬玲のビフォー&アフターの差に、事情を知らない誰しもが目、耳を疑っているのだから。
 感情の起伏もさることながら、顔芸とも言える程の喜怒哀楽の変化具合が今までの彼女とは思えない程に強烈な個性を押し出している。
 たった数日の内に何が起きたのか……勇達はそう思わずにはいられなかった。

「は? 見紛う事無き私だし。 色々あって・・・・・も、隠す事無く・・・・・衰える事の無い・・・・・・・あるがままの美しい私を魅せてるだけだし?」

 意味深なキーワードを羅列させ、勇を煽る瀬玲……そんな彼女の顔はどこか御満悦だ。
 それに対し勇と言えば……先程の暗さはどこに行ったのか、赤く染まった膨れっ面を浮かばせていた。

「ま、色々あったのは確か。 イ・ドゥールの人達とは仲良くなれたけど、それ以上に得られるものも多かった。 この髪はその副産物みたいなものよ」

 歯を見せた嫌味の一切無い笑顔を向ける瀬玲に違和感を覚えつつも……彼女の言う「ありのままの姿」があまりにも人間らしくて。
 気付けば、そんな彼女の在り方が堪らなく面白くて……周りの者達が皆、勇とのやりとりを前に笑みを浮かべていた。

「そんで私はあっちで戦いを知った。 命を知った。 泥臭い程に、ぐっちゃぐちゃの、ね。 ……だから私はようやくここに立てるんだと思う……コイツの苦労を知ったから」

 その時、彼女が指差したのは当然……勇である。

「今の私が、それを知った本当の私。 そして戦いの楽しさ・・・・を知ってしまった私。 これは隠すつもりも無いし、むしろ理解して欲しい。 今までのただクールでいようと思うだけの私とは違う……相沢瀬玲という、壊れて再構築リビルドされたヒト・・の事をね」

 今放たれた彼女の言葉……それはどこか重圧に似た、心に来る言葉。
 一つ一つの声に命力でも乗っているのではないかと思われる程に、それは奥底を掴み持ち上げる様な……力ある言霊とすら感じられる程であった。
 福留ですらも、彼女の言葉を前にただ静かに息を飲む他無かったのだ。

 彼女の語りが終わったのか、静寂が場を包むと……ウンウンと頷いた福留がその口を開いた。

「瀬玲さん……変わられましたねぇ、まるで悟りを開いたかの様です」

 すると、彼のその一言に何かを気付いたのか……瀬玲が「あぁ~」と言わんばかりに口を開け、福留に向けて人差し指をくるくると回しながら反応する。

「それですよ福留さん、さしずめ今の私は……仙女せんにょって言った所かなぁ」
「あぁ、なるほど……確かにそうかもしれませんねぇ」

 悟りを開き、見通す目を得た女……風貌からも、まさにその姿は仙女。
 命を知り、戦いを知り、そして自身を知る。
 力を得て、心を得て、己の業を得た。
 ありのままを受け入れたからこそ……今の彼女がそう呼ばれる事に、事情を知らずとも誰しもが納得していた。

 それが今の……相沢瀬玲という存在感の塊が成し得るわざ

「まぁそういう訳だから……これからも皆、改めてよろしくねっ!」





 最後の締めが可愛さを押し出したポーズでなければ……きっとそう、格好良かったのだろう。





 誰もが失笑する中……またしても気に入らなかったのか、瀬玲が再び冷たい目を浮かべる。
 だが、そこで何かに気が付いたのか……瀬玲が途端その手を打ち、勇と茶奈をその手で招く。

「ちょっとちょっと、二人共こっちきて」
「え? あ、ああ……」
「はい……?」

 何かわからず誘われるがままに彼女の前に歩み寄る二人。
 すると瀬玲はおもむろにニッコリとした笑顔を二人に向けた。
 
「折角だから私があっちで覚えた秘術を実演しようと思ってねぇ、二人にはちょっと被検者になって欲しいなってさ。 痛くないヤツだから。 むしろ命力回復出来るスゴイヤツだから」
「え、そうなのか……? まぁそれくらいなら」
「わ、わかりましたっ」

 彼女の言われるがままに背を向け、勇と茶奈はその手を繋ぐ。
 だが、二人が背を向けた途端……誰しもが恐怖で引きつる程に、瀬玲の顔が歪んだ笑顔を浮かべた。



「ンフフフ……この時を待っていた……待っていたのよォーーーーーー!!」


 
 瀬玲が声高々に叫び、その両手を掲げ……一気に振り下ろした。



パパァーーーーーン!!



 勢いよくその両手が二人の背中へと当てられ、軽快な音が響き渡る。
 その瞬間、彼女の手が、腕が、体が……淡い光と共に命力の潮流を生み出した。



―――悶えろ!! そして痴態を晒せ!! 私の笑いの為にィーーー!!―――



「ハァァァァッ!! 連鎖命力陣ッ!!」



コォォォォーーーーンッ!!



 彼等の周りに突如生まれる命力の光の流れ。
 瀬玲を通して注がれた命力が、勇と茶奈と、そして再び瀬玲を通し幾度と無く循環し、そして大きくなっていく。
 三人を包む命力が溢れ、虹色の光が瞬いた。

「う、うわぁぁぁ!?」
「こ、これって……!!」

 高揚していく二人の感情。
 幾重にも混ぜられた命力の輝きが、三人の心を溶け合わせていく。



「凄い……まるで清流の中に身を委ねてるみたいに……心が澄んでいく……!!」
「あああっ……心が、気持ちが、露わに成って……ステキです……!!」
「なんでよ!!??」



 途端、その光が一気に収束し……包んでいた命力が大気に消えた。
 残ったのは、光悦な笑顔を浮かべた勇と茶奈……そして不満な顔を浮かべた瀬玲。

「なんでよ!!??」
「何が!?」

 瀬玲は二人が自身と同じ様に悶えて転げる姿を予想していたのだろう。
 だが二人が思った以上に純真で、誠実だったからか……溶け合った心は殆どその形を変える事は無かった。

 予想外の展開に、瀬玲の怒りは収まらない。

「んっがああっ!! なんでよぉぉぉぉお!! どうして上手くいかないワケ!?」
「いや、知らねぇよ!?」



 結局その日、瀬玲達の帰還パーティは彼女の茶番劇にて終幕した。
 その場面の一部始終を見届けた福留は後に語る……「悟りを開いて煩悩に塗れた希有な例の仙女かもしれませんねぇ」と。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...