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38.届かない訴え※ヴォルフside
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アトランシアでの赤恥と、それ以上に心を動かされた現実を胸に王都へと帰還した。来た時とはまるで違う。馬の蹄が刻む一歩一歩が自らの罪の重さを問いかけてくるようだった。
ただ、感傷に浸っている暇はない。アトランシアで見た光景――活気に満ちた街、生き生きとした民の笑顔、そして国の基盤となりうる工業地帯――。あれこそが沈みゆく我が王都を救う唯一の処方箋。自らが受けた屈辱を胸の奥に押し込め、国王である父上に会うため、謁見室の扉を叩いた。
「……それで何の成果も得られず、恥をかいて戻ってきたと。そういうことか、ヴォルフ」
報告を聞き終えた父上の顔には失望と怒りが色濃く浮かんでいた。隣に立つ宰相も不満げに顔をしかめている。
「恥をかいたことは認めます。ですが父上、俺はこの目で見てきたのです。アトランシアはもはや辺境の寂れた街ではありません。この王都以上に力強く脈打つ生命体として生まれ変わっていました」
俺は必死に言葉を続けた。あの街の熱気、人々の力強い眼差しをどうにか伝えようと言葉を尽くす。
「彼らの成功の要因は魔鉱鉄だけではありません。根本にあるのはルティア・ヴェルフェンの政策です。彼女は民の生活を第一に考え、民が豊かになることで街そのものが豊かになるという好循環を生み出しているのです。我々も彼女に学ぶべきです!これ以上の増税で民を苦しめるのではなく、彼らの生活を支え、産業を育てる政策に切り替えるのです!」
アトランシアでは子供たちが笑っていた。王都では見られなくなった何の屈託もない笑顔。あの笑顔を取り戻すことこそ、王族の務めではないのか。
俺の熱弁を父上は冷ややかに鼻で笑った。
「小娘一人に感化されおって!民に媚びを売ってどうするというのだ。民とは我ら王家に導かれ、従うもの。与えられた務めを黙々とこなすのが奴らの本分だ。甘やかせばつけあがるだけ。そもそも、あの追放された女のやり方をこの由緒ある王都が真似ろと申すか!聞き捨てならん!」
父上には民の顔が見えていない。王は絶対。それが当然の秩序だと信じて疑っていない。その旧態依然とした考えこそが都を蝕む病巣だというのに……。
「父上、そのお考えが王都を滅ぼすのです!民が痩せ細れば国もまた痩せ細る!それだけの単純な道理がなぜお分かりにならないのですか!」
「黙れ、ヴォルフ!お前はしばらく自室にて謹慎していろ。これ以上、我が決定に水を差すというなら、王太子の座も危うくなると思え!」
それは議論の余地なき、王としての命令だった。俺は唇を噛み締め無力感を抱えたまま、後戻りするしかなかった。冷たい廊下を一人歩く。ルティアに約束した「正式な形で助力を請う」という道すら、父によって閉ざされてしまった。
ただ、感傷に浸っている暇はない。アトランシアで見た光景――活気に満ちた街、生き生きとした民の笑顔、そして国の基盤となりうる工業地帯――。あれこそが沈みゆく我が王都を救う唯一の処方箋。自らが受けた屈辱を胸の奥に押し込め、国王である父上に会うため、謁見室の扉を叩いた。
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アトランシアでは子供たちが笑っていた。王都では見られなくなった何の屈託もない笑顔。あの笑顔を取り戻すことこそ、王族の務めではないのか。
俺の熱弁を父上は冷ややかに鼻で笑った。
「小娘一人に感化されおって!民に媚びを売ってどうするというのだ。民とは我ら王家に導かれ、従うもの。与えられた務めを黙々とこなすのが奴らの本分だ。甘やかせばつけあがるだけ。そもそも、あの追放された女のやり方をこの由緒ある王都が真似ろと申すか!聞き捨てならん!」
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それは議論の余地なき、王としての命令だった。俺は唇を噛み締め無力感を抱えたまま、後戻りするしかなかった。冷たい廊下を一人歩く。ルティアに約束した「正式な形で助力を請う」という道すら、父によって閉ざされてしまった。
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