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3章 隣国へ
3-15 精霊の条件
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「何?私にできることかな?」
「あなたにしか頼めまセン。ここは私たちの故郷。守護を失ったあと、どうなるのか不安なんデス。ですから、私たちの代わりに、ファルガランを守ってくだサイ」
「つまり……私がファルガランで暮らすなら、フーたちはリリィとアルデリアへ行くってこと?」
「そうデス」
「そんな、駄目よ……!」
かすれた悲鳴が上がった。
リリィが、フーに向かって泣きそうな顔でまくし立てる。
「アナベルだって、アルデリアに家族がいるのよ。だから、ファルガランには……わ、私が……」
リリィは青白い顔で、手綱を握る手を震わせている。
当たり前だ。
彼女はアルデリアで、たくさんの人と支え合って生きてきたのだから。
そんなリリィと、最も苦楽を共にしてきたのは、レオナルドたち。
彼らは今、私かリリィかの二者択一を迫られ、苦しげな顔で黙りこくっている。
悩む彼らを前に、私は胸が痛くなった。
だって、フーの出した条件に対して、何の躊躇いもなく「いいよ」と言うつもりだったから。
家族やリリィたちと離れることが、寂しくないわけじゃない。
だけど、どうやら私にとって大切なのは、精霊たちと──イザークなのだ。
とはいえ、この場ではっきりとは言いづらい。
リリィたちは複雑だろうし、イザークに聞かれるのは私が恥ずかしい。
ここは、平気な顔をしてみせよう。
うつむくリリィに、私は明るく声をかけた。
「リリィ、ありがとう。でも大丈夫だよ。私がファルガランに行くから。精霊も一緒だから、寂しくないし」
「でも、ヘイルフォード公爵は悲しむでしょう?私だって寂しいわ……」
リリィは目元をぬぐい、鼻をすすった。
そこまで言ってくれて、ありがたいことこの上ない。
しかし正直なところ、父は喜んで私を送り出す気がする。
イザークは王に、私は聖女に──アルデリアに友好的な人間が、ファルガランのトップに立つのだ。
国益最優先の父が、ほくそ笑む姿が目に浮かぶ。
「お父様は湿っぽい人じゃないし……今でも毎日は会ってないよ。それに、永遠の別れってわけじゃないから。時々はアルデリアへ遊びに行っていいでしょ?」
フーに尋ねると、「はイ」と返ってくる。
「ほら、だから大丈夫」
「ちょっと寂しいけど、それなら……」
「僕たちもアナベルさんに会いに行っていいなら……」
リリィとルークを始め、みんなは渋々納得したようだった。
「本当に平気だよ。イザークも一緒だもん。だよね?」
私は、背後で手綱を握るイザークを振り返った。
彼は、しっかりと頷いた。
「はい。ただ、一度はアルデリアに戻りますが」
「サムエルさんが身代わりをしてくれてるもんね……」
「ええ、早く交代しなくては」
父は心配いらないと言っていたが、サムエルさんはもちろん、リリィやルーシーも不安だろう。
「その後は、レオナルドとリリィが王宮に戻るから、議会で話し合いかな。イザークの処遇をどうするか……父は対策があるって言ってたから、何とかなると思うけど」
「ならなければ脱獄します」
イザークの問題発言に、ギデオンが「おい!」とツッコミを入れた。
「何でしょう?」
イザークがギデオンを見る。
ギデオンは何か言おうとしたが、眉間に皺を寄せて、
「……いや、何でもない。イザークには色々と助けてもらったからな。聞かなかったことにしておく」
と、呟いた。
私は心の中で、ありがとう、と手を合わせた。
そして、誰にともなく呟いた。
「それにしても、イザークを助けるための対策って何なんだろう」
「え?」
聞き返してきたのはレオナルドだ。
「それは、君が一番よくわかってるんじゃないのか?」
「私が?どういうこと?」
共感を求めて周りを見回したものの、リリィもエリオットも、「本当にわからないのか」という目で私を見つめている。
そういえば、父にも同じ目で見られたような。
なんとも居たたまれない空気の中、私はボソボソと言った。
「……ごめんなさい。本当に、わからないです……」
「本当に?」
レオナルドは目を丸くして、それから呆れ混じりの苦笑いをした。
「君の発案で変えたじゃないか、法律を。あれを使うんだよ」
法律?
私が変えた法律といえば──
「……あっ!」
どうして思いつかなかったんだろう。
私自身が、「変えてくれなきゃ魔王を倒さない」と駄々をこねたくせに。
恥ずかしすぎる。
私は、ヘイルフォード公爵邸に帰るまで、みんなの生温かい笑顔に囲まれ続けたのだった。
「あなたにしか頼めまセン。ここは私たちの故郷。守護を失ったあと、どうなるのか不安なんデス。ですから、私たちの代わりに、ファルガランを守ってくだサイ」
「つまり……私がファルガランで暮らすなら、フーたちはリリィとアルデリアへ行くってこと?」
「そうデス」
「そんな、駄目よ……!」
かすれた悲鳴が上がった。
リリィが、フーに向かって泣きそうな顔でまくし立てる。
「アナベルだって、アルデリアに家族がいるのよ。だから、ファルガランには……わ、私が……」
リリィは青白い顔で、手綱を握る手を震わせている。
当たり前だ。
彼女はアルデリアで、たくさんの人と支え合って生きてきたのだから。
そんなリリィと、最も苦楽を共にしてきたのは、レオナルドたち。
彼らは今、私かリリィかの二者択一を迫られ、苦しげな顔で黙りこくっている。
悩む彼らを前に、私は胸が痛くなった。
だって、フーの出した条件に対して、何の躊躇いもなく「いいよ」と言うつもりだったから。
家族やリリィたちと離れることが、寂しくないわけじゃない。
だけど、どうやら私にとって大切なのは、精霊たちと──イザークなのだ。
とはいえ、この場ではっきりとは言いづらい。
リリィたちは複雑だろうし、イザークに聞かれるのは私が恥ずかしい。
ここは、平気な顔をしてみせよう。
うつむくリリィに、私は明るく声をかけた。
「リリィ、ありがとう。でも大丈夫だよ。私がファルガランに行くから。精霊も一緒だから、寂しくないし」
「でも、ヘイルフォード公爵は悲しむでしょう?私だって寂しいわ……」
リリィは目元をぬぐい、鼻をすすった。
そこまで言ってくれて、ありがたいことこの上ない。
しかし正直なところ、父は喜んで私を送り出す気がする。
イザークは王に、私は聖女に──アルデリアに友好的な人間が、ファルガランのトップに立つのだ。
国益最優先の父が、ほくそ笑む姿が目に浮かぶ。
「お父様は湿っぽい人じゃないし……今でも毎日は会ってないよ。それに、永遠の別れってわけじゃないから。時々はアルデリアへ遊びに行っていいでしょ?」
フーに尋ねると、「はイ」と返ってくる。
「ほら、だから大丈夫」
「ちょっと寂しいけど、それなら……」
「僕たちもアナベルさんに会いに行っていいなら……」
リリィとルークを始め、みんなは渋々納得したようだった。
「本当に平気だよ。イザークも一緒だもん。だよね?」
私は、背後で手綱を握るイザークを振り返った。
彼は、しっかりと頷いた。
「はい。ただ、一度はアルデリアに戻りますが」
「サムエルさんが身代わりをしてくれてるもんね……」
「ええ、早く交代しなくては」
父は心配いらないと言っていたが、サムエルさんはもちろん、リリィやルーシーも不安だろう。
「その後は、レオナルドとリリィが王宮に戻るから、議会で話し合いかな。イザークの処遇をどうするか……父は対策があるって言ってたから、何とかなると思うけど」
「ならなければ脱獄します」
イザークの問題発言に、ギデオンが「おい!」とツッコミを入れた。
「何でしょう?」
イザークがギデオンを見る。
ギデオンは何か言おうとしたが、眉間に皺を寄せて、
「……いや、何でもない。イザークには色々と助けてもらったからな。聞かなかったことにしておく」
と、呟いた。
私は心の中で、ありがとう、と手を合わせた。
そして、誰にともなく呟いた。
「それにしても、イザークを助けるための対策って何なんだろう」
「え?」
聞き返してきたのはレオナルドだ。
「それは、君が一番よくわかってるんじゃないのか?」
「私が?どういうこと?」
共感を求めて周りを見回したものの、リリィもエリオットも、「本当にわからないのか」という目で私を見つめている。
そういえば、父にも同じ目で見られたような。
なんとも居たたまれない空気の中、私はボソボソと言った。
「……ごめんなさい。本当に、わからないです……」
「本当に?」
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法律?
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