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1章 断罪回避
16 ツッコミを我慢できない
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考え込む間もなく、また狼の魔物が襲ってきた。
「今度は八匹だと……!」
「ギデオン、私に任せて!」
すぐさまリリィがペンダントを握る。
ナギがポフンと現れ、風の刃が魔物に襲いかかる。
しかし、勢いがない。
ナギも苦しそうに咳き込んでいる。
レオナルドたちの動きも鈍い。
かなりまずい状況だ。
私は前のめりになって、
「ねえ、すぐ返すからペンダントを貸して!本当に危ないよ!」
と、叫んだものの。
「集中できない、黙っててくれ!頼むから!」
レオナルドに怒られてしまった。
でも……口出ししたい。
猛烈に。
ナギやリリィも心配だけど、それ以上にじれったい。
みんな、そんなに疲れているんだろうか?
効率が悪すぎる。
回復役が敵を殴ったり。
騎士が傷薬係になったり。
ルークもおかしい。
狼系は睡眠耐性があるのに、睡眠魔法ばかり唱えている。
ツッコミを入れたい。
でも、声をかけたら邪魔になる。
我慢だ。
我慢しないと……
我慢……
「無理ーっ!!」
レオナルドたちが硬直する。
やってしまった……
でも、魔物も固まっている。
今のうちに言いたいことを言おう!
「リリィは元気な敵から攻撃して!雑魚なら魔法で一撃必殺でしょ!レオナルドも、手当たり次第に斬っちゃ駄目!」
「で、でも……」
リリィがオロオロし始めた。
「どの魔物が弱ってるのか、わからないし……」
「右端の奴は無傷だよ!あいつを倒して!」
私は手をメガホン代わりにして叫んだ。
直後、男性陣を見る。
「レオナルドとギデオンは左端の魔物を攻撃!ルークは真ん中に麻痺魔法!」
五人とも、ぽかんとして私を見る。
その間にまた魔物が牙を剥く。
「危ない、前を見て!早く!」
「は、はい!」
リリィがすばやく魔物に向き直る。
みんなが私の指示通りに動く。
魔物は一気に二匹倒れ、一匹は麻痺で動けなくなった。
これでひとまず安心だ。
ふう、と息をつくと、すぐ横で平坦な声がした。
「アナベル様は策士の才もあるのですね」
イザークが私をじっと見ている。
冷静に評価されると、張り切った自分が恥ずかしくなる。
「いや、その……単にゲームのやりすぎっていうか……」
ゲームによっては敵の体力が表示されない。
暗算が当たり前になってしまった。
レベル上げのために戦いまくっていたら、魔物の耐性くらい嫌でも覚える。
「ゲーム……ボードゲームで戦況を読む力を養ったのですか?」
「ま、まあ、そんな感じ」
この場で「乙女ゲームが~」と説明してもわからないだろう。
そうこうしているうちに、リリィたちは戦闘を終えた。
しかしやはりと言うべきか、さっきよりもボロボロだ。
私はたまらず、五人に話しかけた。
「みんな、大丈夫?エリオット、聖術はまだ使えそう?まずはギデオンを……」
「何もしていないくせに上から目線とは、いいご身分ですね」
エリオットが嫌味な笑顔を浮かべる。
私はムッとして言い返した。
「攻撃の指示、出したじゃない!」
「戦ったのは僕らです。あなたは若い男に抱きついていただけでしょう」
その一言でカチンと来た。
私にも事情があるのに!
「そんなに言うなら働けばいいんでしょ!ねぇ、リリィ~。五分だけ、ペンダント貸して?」
親しげな感じで言ってみたけど、即座にギデオンとエリオットが立ちはだかる。
どうしたらいいんだろう。
頭を抱えていると、イザークが口を開いた。
「リリィ様。もう、アナベル様にペンダントを渡すべきだと思います」
「えっ⁉︎」
と、声を上げたのは私だ。
イザークは「アナベルを殺せ」と命令されているのに。
命令には従わなくては、と言ったのに。
どうして私の味方をしてくれるんだろう。
呆然としていると、ギデオンがうなるように言った。
「処刑人……正気か?」
「もちろん。アナベル様の指示は的確でした。それでも皆様は負傷なさった。これ以上の戦闘は危険です。私は、最善の行動を提案しているつもりです」
イザークの返事を聞いて、私は内心で膝を打った。
彼はつまり、AIみたいな人なんだ。
感情に流されず、合理的に判断を下すだけ。
どうしてそうなったかは謎だけど。
「最善ですって?最悪の間違いでは?」
エリオットも眼鏡越しにイザークを睨みつける。
しかしイザークは動じない。
「アナベル様なら、精霊様の力を最大限引き出せます。魔物の討伐をお任せすべきです」
「そうだよ、これ以上怪我をしなくて済むよ!」
私の力も示せるし、一石二鳥。
そう思ったけど、ギデオンは赤鬼みたいな顔で怒鳴った。
「どういう意味です?俺には陛下とリリィ様を守れないとでも⁉︎」
しまった、逆効果だ。
後ずさる私の隣で、イザークはむしろ攻めていく。
「その可能性が高いです。私が戦えればいいのですが、アナベル様の監視が最優先ですので。容易に手をお貸しできません」
「お、お前の汚れた手など必要ない!」
「二人とも、ちょっと落ち着いた方が……」
レオナルドがおずおずと声をかけたが。
「陛下がそのように弱気だから、処刑人風情がつけ上がるのです!」
ギデオンに怒られて、レオナルドは肩を縮こめた。
彼の後ろにいるリリィとルークまで、しょげている。
三人はうつむき、何やら小声で相談を始めた。
「ルーク、レオ。私、やっぱりアナベルにペンダントを……」
「そ、そんな、駄目だよ。危険だってば。だからギデオンとエリオットは必死なんだよ」
「リリィ、大丈夫だ。地の精霊様は、僕たちの力で探し出そう。あとのことも僕に任せて。これでも国王なんだから」
何の話だろう。
というか、私が危険ってどういうことよ。
そこで睨み合うギデオンとイザークの方が……
──待って。
違う、私じゃないかも。
先々週、レオナルドが話していた。
「魔物以外の脅威」について。
(ひょっとして……私が力を使うと、その脅威が近づく?みんなはそれを警戒してるの?)
脅威と聞いて思いつくのはマチルダだ。
とはいえ、マチルダは『危険』という感じじゃない。
(じゃあ何が……えっ⁉︎)
私は考えるのをやめ、身を硬くした。
ガサガサと草を分ける音が、こっちへ近づいてくる。
「今度は八匹だと……!」
「ギデオン、私に任せて!」
すぐさまリリィがペンダントを握る。
ナギがポフンと現れ、風の刃が魔物に襲いかかる。
しかし、勢いがない。
ナギも苦しそうに咳き込んでいる。
レオナルドたちの動きも鈍い。
かなりまずい状況だ。
私は前のめりになって、
「ねえ、すぐ返すからペンダントを貸して!本当に危ないよ!」
と、叫んだものの。
「集中できない、黙っててくれ!頼むから!」
レオナルドに怒られてしまった。
でも……口出ししたい。
猛烈に。
ナギやリリィも心配だけど、それ以上にじれったい。
みんな、そんなに疲れているんだろうか?
効率が悪すぎる。
回復役が敵を殴ったり。
騎士が傷薬係になったり。
ルークもおかしい。
狼系は睡眠耐性があるのに、睡眠魔法ばかり唱えている。
ツッコミを入れたい。
でも、声をかけたら邪魔になる。
我慢だ。
我慢しないと……
我慢……
「無理ーっ!!」
レオナルドたちが硬直する。
やってしまった……
でも、魔物も固まっている。
今のうちに言いたいことを言おう!
「リリィは元気な敵から攻撃して!雑魚なら魔法で一撃必殺でしょ!レオナルドも、手当たり次第に斬っちゃ駄目!」
「で、でも……」
リリィがオロオロし始めた。
「どの魔物が弱ってるのか、わからないし……」
「右端の奴は無傷だよ!あいつを倒して!」
私は手をメガホン代わりにして叫んだ。
直後、男性陣を見る。
「レオナルドとギデオンは左端の魔物を攻撃!ルークは真ん中に麻痺魔法!」
五人とも、ぽかんとして私を見る。
その間にまた魔物が牙を剥く。
「危ない、前を見て!早く!」
「は、はい!」
リリィがすばやく魔物に向き直る。
みんなが私の指示通りに動く。
魔物は一気に二匹倒れ、一匹は麻痺で動けなくなった。
これでひとまず安心だ。
ふう、と息をつくと、すぐ横で平坦な声がした。
「アナベル様は策士の才もあるのですね」
イザークが私をじっと見ている。
冷静に評価されると、張り切った自分が恥ずかしくなる。
「いや、その……単にゲームのやりすぎっていうか……」
ゲームによっては敵の体力が表示されない。
暗算が当たり前になってしまった。
レベル上げのために戦いまくっていたら、魔物の耐性くらい嫌でも覚える。
「ゲーム……ボードゲームで戦況を読む力を養ったのですか?」
「ま、まあ、そんな感じ」
この場で「乙女ゲームが~」と説明してもわからないだろう。
そうこうしているうちに、リリィたちは戦闘を終えた。
しかしやはりと言うべきか、さっきよりもボロボロだ。
私はたまらず、五人に話しかけた。
「みんな、大丈夫?エリオット、聖術はまだ使えそう?まずはギデオンを……」
「何もしていないくせに上から目線とは、いいご身分ですね」
エリオットが嫌味な笑顔を浮かべる。
私はムッとして言い返した。
「攻撃の指示、出したじゃない!」
「戦ったのは僕らです。あなたは若い男に抱きついていただけでしょう」
その一言でカチンと来た。
私にも事情があるのに!
「そんなに言うなら働けばいいんでしょ!ねぇ、リリィ~。五分だけ、ペンダント貸して?」
親しげな感じで言ってみたけど、即座にギデオンとエリオットが立ちはだかる。
どうしたらいいんだろう。
頭を抱えていると、イザークが口を開いた。
「リリィ様。もう、アナベル様にペンダントを渡すべきだと思います」
「えっ⁉︎」
と、声を上げたのは私だ。
イザークは「アナベルを殺せ」と命令されているのに。
命令には従わなくては、と言ったのに。
どうして私の味方をしてくれるんだろう。
呆然としていると、ギデオンがうなるように言った。
「処刑人……正気か?」
「もちろん。アナベル様の指示は的確でした。それでも皆様は負傷なさった。これ以上の戦闘は危険です。私は、最善の行動を提案しているつもりです」
イザークの返事を聞いて、私は内心で膝を打った。
彼はつまり、AIみたいな人なんだ。
感情に流されず、合理的に判断を下すだけ。
どうしてそうなったかは謎だけど。
「最善ですって?最悪の間違いでは?」
エリオットも眼鏡越しにイザークを睨みつける。
しかしイザークは動じない。
「アナベル様なら、精霊様の力を最大限引き出せます。魔物の討伐をお任せすべきです」
「そうだよ、これ以上怪我をしなくて済むよ!」
私の力も示せるし、一石二鳥。
そう思ったけど、ギデオンは赤鬼みたいな顔で怒鳴った。
「どういう意味です?俺には陛下とリリィ様を守れないとでも⁉︎」
しまった、逆効果だ。
後ずさる私の隣で、イザークはむしろ攻めていく。
「その可能性が高いです。私が戦えればいいのですが、アナベル様の監視が最優先ですので。容易に手をお貸しできません」
「お、お前の汚れた手など必要ない!」
「二人とも、ちょっと落ち着いた方が……」
レオナルドがおずおずと声をかけたが。
「陛下がそのように弱気だから、処刑人風情がつけ上がるのです!」
ギデオンに怒られて、レオナルドは肩を縮こめた。
彼の後ろにいるリリィとルークまで、しょげている。
三人はうつむき、何やら小声で相談を始めた。
「ルーク、レオ。私、やっぱりアナベルにペンダントを……」
「そ、そんな、駄目だよ。危険だってば。だからギデオンとエリオットは必死なんだよ」
「リリィ、大丈夫だ。地の精霊様は、僕たちの力で探し出そう。あとのことも僕に任せて。これでも国王なんだから」
何の話だろう。
というか、私が危険ってどういうことよ。
そこで睨み合うギデオンとイザークの方が……
──待って。
違う、私じゃないかも。
先々週、レオナルドが話していた。
「魔物以外の脅威」について。
(ひょっとして……私が力を使うと、その脅威が近づく?みんなはそれを警戒してるの?)
脅威と聞いて思いつくのはマチルダだ。
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