断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝

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1章 断罪回避

11 アナベルの処遇

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「……父上が生きていた頃、リリィがペンダントを使えるか試して、聖女に認定したんだって」

「うんうん、それで?」

「『国王が決定したことだから、すぐには覆せない』って。『議会でも審議したのに』って……」

「えっ、議会も?かなりしっかり審査するんだね」

 その議会は、私をどうするつもりなのか。
 そろそろ聞きたいけど、レオナルドの話はまだ止まらない。

「当然だよ……資質のない者がペンダントを使うと、精霊様が暴走するんだ」

「暴走?」

「うん……昔、騎士隊長が言ってた。コソ泥のせいで竜巻が出て、民家二十棟が崩壊したらしい」

「嘘っ、めちゃくちゃ危ないじゃない!」

 私の背筋を冷や汗が伝う。
 ゲーム通り、私が本物でよかった。

「だから、審査は厳正に行うんだけど……それを『間違いだったかもしれない』って、僕が指摘したら、議員たちが怒り出して……」

 レオナルドは拳を握りしめ、声を絞り出した。
 まだ顔色は戻っていない。

 もう少し、気持ちを落ち着けてあげようか。
 私は小さく咳払いをして、なるべく優しい声を作った。

「レオナルド……ごめん。『私が本物の聖女です』なんて、突然言われても困るよね」

「アナベル?」

「議員だってひどいよね。自分たちの間違いを認めないで、レオナルドに怒りをぶつけるなんて」

 レオナルドは意外そうに瞬きをして、私を見つめてくる。
 驚きもあってか、動揺は収まったらしい。

 ソシャゲのトラブル回避方法が役立った。
 学生時代、「ひとまず相手の気持ちを汲み取って」と教えてくれたギルドマスター、ありがとうございます。
 
「レオナルドは必死に頑張ってるのに。……私なんかが言っても、説得力はないだろうけど」

 話しながら申し訳なくなってくる。

 今までのアナベルは、彼をぞんざいに扱いすぎた。
 晩餐会でレオナルドが馬鹿にされても、かばいもせずにリリィへ絡んでいた。
 彼の婚約者として最低だ。

 ……胃が痛くなってきた。
 思い出すのはやめよう。
 これから支えてあげればいいんだ。
 リリィもギデオンも、この国の全員まとめて助けよう。
 
 私はレオナルドに向かって、一歩踏み出した。
 勢い余って胸がぶつかりそうになる。

「ア、アナベル!近いって……」

 やっぱり近かったか。
 かといって、元の位置に戻るのも変な話だ。
 このまま話を続けよう。

「でも、これからは私も頑張るから。私が魔物を一掃して、うるさい議員を黙らせてあげる。レオナルドやリリィも戦わなくて済むでしょ?」

 私はレオナルドの手を取った。
 この子も大変なんだよね。

 八歳の時に母親が、十七歳で父親が魔物に殺された。
 味方もほとんどいない中、一国の王になった。

 そういえば、攻略対象の中で唯一泣き顔の立ち絵がなかったっけ。
 我慢してるんだろうな……

 かわいそうになって、思わず彼の手を握りしめる。
 そこで、レオナルドの顔が赤いことに気付いた。
 それにぼんやりしているような。

 もしかして熱っぽいんだろうか。
 顔が土気色だったのは、風邪の引き始めだったから?

 それなら早く議会の決定を聞いて、休ませてあげないと。
 
「ところで、私の死刑は取り消せた?」

 手を離して、レオナルドの頭をポンポンと叩いてみる。
 彼はハッとして、すごい勢いで後ずさった。

「は、話すよ!話すから、そんなに簡単に触らないでくれ!」

 彼は姿勢を正し、ゴホンと咳払いをした。

「処刑は……延期のままだ。でも、アナベルを試すことになった」

「試す?」

「ああ。君は、聖女のペンダントを奪おうとした大罪人だ。でも、本当に聖女なら処刑するのはまずい」

「そうだよ、まずいって。私を殺したら、魔王との戦いで騎士隊長の上半身がなくなるよ」

 乙女ゲームのくせに、強烈な表現が山のように出てきた。
 胸キュンだけを期待した人たちからは酷評されていた。

 私は高難度のバトルも楽しかったから、全員のハッピーエンドを見たけど。
 メンタルは辛かったけど、頑張った。
 大変だったよ、本当に。

 しみじみしているうちに、レオナルドの顔が引きつっていく。
 そうだ、彼にとってはゲームじゃないんだ。

「ごめん、ごめん。怖がらせて。でも今は大丈夫!本物の聖女がここにいるからね」

「だからそれを確かめるんだよ……まずは二週間後、リリィの精霊集めに同行してもらう。そこで、君の資質を見ることになった」

「精霊集めで、私の資質を?」

 心の中でガッツポーズを取った。
 精霊が私に懐くところを見せられる。
 聖女の力を示す大チャンスだ。
 
「次に会うのは地の精霊だよね」

「なんで知ってるんだ⁉︎」

 レオナルドが叫んだ直後、ドアがノックされた。

「はい、どうぞー」

 私が声をかけると、剣士姿の男性が入ってきた。
 一瞬誰かと思ったけど、美しすぎる顔のおかげですぐ特定できた。

「あれ?イザークさん……なんでここに?」
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