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1章 断罪回避
10 ひとまず助かった?
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みんな、この世の終わりみたいな顔で固まっている。
どうやって収拾しよう。
一人ずつ励まして回ろうか。
でも現実的じゃないな……
考え込んでいると、どこからか怒鳴り声が聞こえた。
「殺さなくてもいいじゃないか!」
群衆の中にいる青年だ。
彼の一言が引き金になった。
転生直後とは正反対の叫びが、次々に飛び出す。
「そうだ、聖女かもしれないんだろ!」
「議会で審議をやり直せ!」
「アナベル様が本物だったら責任を取れるのか⁉︎」
「処刑を中止しろ!」
数百人分の怒号が、私たちを包む。
この場で処刑を強行すれば、暴動が起きそうだ。
穏便に済ませたいなら、処刑は中止するしかないだろう。
マチルダは悪あがきしているけど。
「早く!早く黙らせなさい!」
後ずさりながら、自分の護衛兵を怒鳴りつけている。
しかし、護衛兵たちは全員フリーズ状態。
レオナルドとリリィは戸惑いつつも、
「ねえ、レオ。今なら処刑をやめても……」
「う、うん。わかってる」
と、明らかにホッとしている。
これは期待できそうだ。
(レオナルド、お願い。死刑は取り消すって言って……!)
私はレオナルドに念を送った。
彼は深呼吸をすると、決意を顔に浮かべ、サッと手を挙げた。
「皆の声は聞き届けた!処刑は延期だ、アナベルを牢へ戻す!」
怒号の渦が静まった。
落ち着いたんじゃない。
困惑しているのだ。
なぜ延期なのか、と。
私もレオナルドに向かって口を尖らせる。
「処刑命令、取り消してくれないの?」
民の暴徒化を防ぐため──そう言えば、レオナルド一人で決定を下しても、貴族は納得しそうなのに。
すると、レオナルドは気まずそうに目をそらした。
「まだ、君が聖女だと断定できない……改めて議会で話し合う。そうしないと、またマチルダが……」
レオナルドが目を伏せ、うなだれる。
マチルダが何かしてくるのだろうか。
首を傾げて、アナベルの記憶を探ってみる。
そして理解した。
敵はマチルダだけじゃない。
今、多くの貴族はマチルダの言いなりだ。
彼女を怒らせたら、魔物に襲われてもリリィに助けてもらえないから。
そんな状況で、レオナルドが私の処刑を取り消したら……
私を殺したがっているマチルダは、レオナルドをこれでもかと非難するはず。
そこへ大勢の貴族が続く。
下手を打てば、王座から引きずり下ろされかねない。
処刑の延期が、レオナルドの精一杯なのだ。
「わかった……でも、死刑取り消しの提案はしてほしいな」
「……努力はする。とりあえず、今日の夕方に結果報告するよ」
レオナルドは暗い顔でため息をついた。
理由はわかる。
議会にはマチルダも出席する。
きっと嫌味が飛んでくるだろう。
当のマチルダは、今は暴動を恐れて肩を縮こめてるけど。
(マチルダも完璧じゃないんだよね……方向性は狂ってるけど、子どもは可愛いみたいだし)
娘が本気で頼めば聞くだろうか。
リリィ……死刑の取り消し、マチルダにおねだりしてくれないかな。
私はチラッとリリィを見た。
しかし、彼女と目が合うことはなかった。
リリィは両手を握り合わせて、ぎゅっと目をつむり、何度も同じ言葉を呟いている。
「大丈夫、お母様はわかってくれる。大丈夫……」
「リリィ?」
どうしたんだろう。
そんなに母親が怖いんだろうか。
マチルダは、表面的には娘に優しいのに。
あなたは私の誇りよ、なんてリリィの機嫌まで取っていた。
だから、そこまで怯えなくてもいいと思うけど……
リリィに話を聞きたかったけど、できなかった。
群衆が戸惑っている隙に、マチルダが連れていってしまったからだ。
その後、私は兵士に付き添われて牢屋に戻った。
牢屋といっても、塔の最上階にある貴族用の監禁部屋だ。
床には絨毯が敷かれて、テーブルや姿見まである。
両手を縛る縄はほどかれ、やっと自由になった。
ひとまずベッドに腰掛ける。
座り心地はふかふかだ。
なのに、はしゃぐ気分になれない。
今頃、議会でどんな話をしているのか。
レオナルドがマチルダに押し切られたら、私は今度こそ首を──
いや、悩んでいても仕方ない。
楽しいことを考えよう。
例の最凶乙女ゲームで魔王を倒した時。
苦労した分、達成感も大きかった。
犠牲も大きかったけど。
目を閉じて回想に浸っていると、
「アナベル……」
と、弱々しく名前を呼ばれた。
「ん?」
私は目を開けた。
いつの間にか、レオナルドが部屋に入ってきていた。
彼は私を呼んだきり、何も言わずに突っ立っている。
(もしかして、処刑取り消しに失敗した?)
不安を覚えつつ、ベッドから腰を上げる。
すると、レオナルドは大きくため息をついた。
「ど、どうかした?大丈夫?」
思わず聞いてしまった。
だって、今のレオナルドはどう見ても大丈夫じゃない。
顔は土気色。
時折、足元もふらついている。
議会で散々責められたのだろう。
とはいえ話は聞かないと。
レオナルドに無理させないように……
私はレオナルドに歩み寄り、そっと尋ねた。
「レオナルド、言えるところから教えて。議会でどんな話をしたの?」
どうやって収拾しよう。
一人ずつ励まして回ろうか。
でも現実的じゃないな……
考え込んでいると、どこからか怒鳴り声が聞こえた。
「殺さなくてもいいじゃないか!」
群衆の中にいる青年だ。
彼の一言が引き金になった。
転生直後とは正反対の叫びが、次々に飛び出す。
「そうだ、聖女かもしれないんだろ!」
「議会で審議をやり直せ!」
「アナベル様が本物だったら責任を取れるのか⁉︎」
「処刑を中止しろ!」
数百人分の怒号が、私たちを包む。
この場で処刑を強行すれば、暴動が起きそうだ。
穏便に済ませたいなら、処刑は中止するしかないだろう。
マチルダは悪あがきしているけど。
「早く!早く黙らせなさい!」
後ずさりながら、自分の護衛兵を怒鳴りつけている。
しかし、護衛兵たちは全員フリーズ状態。
レオナルドとリリィは戸惑いつつも、
「ねえ、レオ。今なら処刑をやめても……」
「う、うん。わかってる」
と、明らかにホッとしている。
これは期待できそうだ。
(レオナルド、お願い。死刑は取り消すって言って……!)
私はレオナルドに念を送った。
彼は深呼吸をすると、決意を顔に浮かべ、サッと手を挙げた。
「皆の声は聞き届けた!処刑は延期だ、アナベルを牢へ戻す!」
怒号の渦が静まった。
落ち着いたんじゃない。
困惑しているのだ。
なぜ延期なのか、と。
私もレオナルドに向かって口を尖らせる。
「処刑命令、取り消してくれないの?」
民の暴徒化を防ぐため──そう言えば、レオナルド一人で決定を下しても、貴族は納得しそうなのに。
すると、レオナルドは気まずそうに目をそらした。
「まだ、君が聖女だと断定できない……改めて議会で話し合う。そうしないと、またマチルダが……」
レオナルドが目を伏せ、うなだれる。
マチルダが何かしてくるのだろうか。
首を傾げて、アナベルの記憶を探ってみる。
そして理解した。
敵はマチルダだけじゃない。
今、多くの貴族はマチルダの言いなりだ。
彼女を怒らせたら、魔物に襲われてもリリィに助けてもらえないから。
そんな状況で、レオナルドが私の処刑を取り消したら……
私を殺したがっているマチルダは、レオナルドをこれでもかと非難するはず。
そこへ大勢の貴族が続く。
下手を打てば、王座から引きずり下ろされかねない。
処刑の延期が、レオナルドの精一杯なのだ。
「わかった……でも、死刑取り消しの提案はしてほしいな」
「……努力はする。とりあえず、今日の夕方に結果報告するよ」
レオナルドは暗い顔でため息をついた。
理由はわかる。
議会にはマチルダも出席する。
きっと嫌味が飛んでくるだろう。
当のマチルダは、今は暴動を恐れて肩を縮こめてるけど。
(マチルダも完璧じゃないんだよね……方向性は狂ってるけど、子どもは可愛いみたいだし)
娘が本気で頼めば聞くだろうか。
リリィ……死刑の取り消し、マチルダにおねだりしてくれないかな。
私はチラッとリリィを見た。
しかし、彼女と目が合うことはなかった。
リリィは両手を握り合わせて、ぎゅっと目をつむり、何度も同じ言葉を呟いている。
「大丈夫、お母様はわかってくれる。大丈夫……」
「リリィ?」
どうしたんだろう。
そんなに母親が怖いんだろうか。
マチルダは、表面的には娘に優しいのに。
あなたは私の誇りよ、なんてリリィの機嫌まで取っていた。
だから、そこまで怯えなくてもいいと思うけど……
リリィに話を聞きたかったけど、できなかった。
群衆が戸惑っている隙に、マチルダが連れていってしまったからだ。
その後、私は兵士に付き添われて牢屋に戻った。
牢屋といっても、塔の最上階にある貴族用の監禁部屋だ。
床には絨毯が敷かれて、テーブルや姿見まである。
両手を縛る縄はほどかれ、やっと自由になった。
ひとまずベッドに腰掛ける。
座り心地はふかふかだ。
なのに、はしゃぐ気分になれない。
今頃、議会でどんな話をしているのか。
レオナルドがマチルダに押し切られたら、私は今度こそ首を──
いや、悩んでいても仕方ない。
楽しいことを考えよう。
例の最凶乙女ゲームで魔王を倒した時。
苦労した分、達成感も大きかった。
犠牲も大きかったけど。
目を閉じて回想に浸っていると、
「アナベル……」
と、弱々しく名前を呼ばれた。
「ん?」
私は目を開けた。
いつの間にか、レオナルドが部屋に入ってきていた。
彼は私を呼んだきり、何も言わずに突っ立っている。
(もしかして、処刑取り消しに失敗した?)
不安を覚えつつ、ベッドから腰を上げる。
すると、レオナルドは大きくため息をついた。
「ど、どうかした?大丈夫?」
思わず聞いてしまった。
だって、今のレオナルドはどう見ても大丈夫じゃない。
顔は土気色。
時折、足元もふらついている。
議会で散々責められたのだろう。
とはいえ話は聞かないと。
レオナルドに無理させないように……
私はレオナルドに歩み寄り、そっと尋ねた。
「レオナルド、言えるところから教えて。議会でどんな話をしたの?」
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