11 / 105
1章 断罪回避
11 アナベルの処遇
しおりを挟む
「……父上が生きていた頃、リリィがペンダントを使えるか試して、聖女に認定したんだって」
「うんうん、それで?」
「『国王が決定したことだから、すぐには覆せない』って。『議会でも審議したのに』って……」
「えっ、議会も?かなりしっかり審査するんだね」
その議会は、私をどうするつもりなのか。
そろそろ聞きたいけど、レオナルドの話はまだ止まらない。
「当然だよ……資質のない者がペンダントを使うと、精霊様が暴走するんだ」
「暴走?」
「うん……昔、騎士隊長が言ってた。コソ泥のせいで竜巻が出て、民家二十棟が崩壊したらしい」
「嘘っ、めちゃくちゃ危ないじゃない!」
私の背筋を冷や汗が伝う。
ゲーム通り、私が本物でよかった。
「だから、審査は厳正に行うんだけど……それを『間違いだったかもしれない』って、僕が指摘したら、議員たちが怒り出して……」
レオナルドは拳を握りしめ、声を絞り出した。
まだ顔色は戻っていない。
もう少し、気持ちを落ち着けてあげようか。
私は小さく咳払いをして、なるべく優しい声を作った。
「レオナルド……ごめん。『私が本物の聖女です』なんて、突然言われても困るよね」
「アナベル?」
「議員だってひどいよね。自分たちの間違いを認めないで、レオナルドに怒りをぶつけるなんて」
レオナルドは意外そうに瞬きをして、私を見つめてくる。
驚きもあってか、動揺は収まったらしい。
ソシャゲのトラブル回避方法が役立った。
学生時代、「ひとまず相手の気持ちを汲み取って」と教えてくれたギルドマスター、ありがとうございます。
「レオナルドは必死に頑張ってるのに。……私なんかが言っても、説得力はないだろうけど」
話しながら申し訳なくなってくる。
今までのアナベルは、彼をぞんざいに扱いすぎた。
晩餐会でレオナルドが馬鹿にされても、かばいもせずにリリィへ絡んでいた。
彼の婚約者として最低だ。
……胃が痛くなってきた。
思い出すのはやめよう。
これから支えてあげればいいんだ。
リリィもギデオンも、この国の全員まとめて助けよう。
私はレオナルドに向かって、一歩踏み出した。
勢い余って胸がぶつかりそうになる。
「ア、アナベル!近いって……」
やっぱり近かったか。
かといって、元の位置に戻るのも変な話だ。
このまま話を続けよう。
「でも、これからは私も頑張るから。私が魔物を一掃して、うるさい議員を黙らせてあげる。レオナルドやリリィも戦わなくて済むでしょ?」
私はレオナルドの手を取った。
この子も大変なんだよね。
八歳の時に母親が、十七歳で父親が魔物に殺された。
味方もほとんどいない中、一国の王になった。
そういえば、攻略対象の中で唯一泣き顔の立ち絵がなかったっけ。
我慢してるんだろうな……
かわいそうになって、思わず彼の手を握りしめる。
そこで、レオナルドの顔が赤いことに気付いた。
それにぼんやりしているような。
もしかして熱っぽいんだろうか。
顔が土気色だったのは、風邪の引き始めだったから?
それなら早く議会の決定を聞いて、休ませてあげないと。
「ところで、私の死刑は取り消せた?」
手を離して、レオナルドの頭をポンポンと叩いてみる。
彼はハッとして、すごい勢いで後ずさった。
「は、話すよ!話すから、そんなに簡単に触らないでくれ!」
彼は姿勢を正し、ゴホンと咳払いをした。
「処刑は……延期のままだ。でも、アナベルを試すことになった」
「試す?」
「ああ。君は、聖女のペンダントを奪おうとした大罪人だ。でも、本当に聖女なら処刑するのはまずい」
「そうだよ、まずいって。私を殺したら、魔王との戦いで騎士隊長の上半身がなくなるよ」
乙女ゲームのくせに、強烈な表現が山のように出てきた。
胸キュンだけを期待した人たちからは酷評されていた。
私は高難度のバトルも楽しかったから、全員のハッピーエンドを見たけど。
メンタルは辛かったけど、頑張った。
大変だったよ、本当に。
しみじみしているうちに、レオナルドの顔が引きつっていく。
そうだ、彼にとってはゲームじゃないんだ。
「ごめん、ごめん。怖がらせて。でも今は大丈夫!本物の聖女がここにいるからね」
「だからそれを確かめるんだよ……まずは二週間後、リリィの精霊集めに同行してもらう。そこで、君の資質を見ることになった」
「精霊集めで、私の資質を?」
心の中でガッツポーズを取った。
精霊が私に懐くところを見せられる。
聖女の力を示す大チャンスだ。
「次に会うのは地の精霊だよね」
「なんで知ってるんだ⁉︎」
レオナルドが叫んだ直後、ドアがノックされた。
「はい、どうぞー」
私が声をかけると、剣士姿の男性が入ってきた。
一瞬誰かと思ったけど、美しすぎる顔のおかげですぐ特定できた。
「あれ?イザークさん……なんでここに?」
「うんうん、それで?」
「『国王が決定したことだから、すぐには覆せない』って。『議会でも審議したのに』って……」
「えっ、議会も?かなりしっかり審査するんだね」
その議会は、私をどうするつもりなのか。
そろそろ聞きたいけど、レオナルドの話はまだ止まらない。
「当然だよ……資質のない者がペンダントを使うと、精霊様が暴走するんだ」
「暴走?」
「うん……昔、騎士隊長が言ってた。コソ泥のせいで竜巻が出て、民家二十棟が崩壊したらしい」
「嘘っ、めちゃくちゃ危ないじゃない!」
私の背筋を冷や汗が伝う。
ゲーム通り、私が本物でよかった。
「だから、審査は厳正に行うんだけど……それを『間違いだったかもしれない』って、僕が指摘したら、議員たちが怒り出して……」
レオナルドは拳を握りしめ、声を絞り出した。
まだ顔色は戻っていない。
もう少し、気持ちを落ち着けてあげようか。
私は小さく咳払いをして、なるべく優しい声を作った。
「レオナルド……ごめん。『私が本物の聖女です』なんて、突然言われても困るよね」
「アナベル?」
「議員だってひどいよね。自分たちの間違いを認めないで、レオナルドに怒りをぶつけるなんて」
レオナルドは意外そうに瞬きをして、私を見つめてくる。
驚きもあってか、動揺は収まったらしい。
ソシャゲのトラブル回避方法が役立った。
学生時代、「ひとまず相手の気持ちを汲み取って」と教えてくれたギルドマスター、ありがとうございます。
「レオナルドは必死に頑張ってるのに。……私なんかが言っても、説得力はないだろうけど」
話しながら申し訳なくなってくる。
今までのアナベルは、彼をぞんざいに扱いすぎた。
晩餐会でレオナルドが馬鹿にされても、かばいもせずにリリィへ絡んでいた。
彼の婚約者として最低だ。
……胃が痛くなってきた。
思い出すのはやめよう。
これから支えてあげればいいんだ。
リリィもギデオンも、この国の全員まとめて助けよう。
私はレオナルドに向かって、一歩踏み出した。
勢い余って胸がぶつかりそうになる。
「ア、アナベル!近いって……」
やっぱり近かったか。
かといって、元の位置に戻るのも変な話だ。
このまま話を続けよう。
「でも、これからは私も頑張るから。私が魔物を一掃して、うるさい議員を黙らせてあげる。レオナルドやリリィも戦わなくて済むでしょ?」
私はレオナルドの手を取った。
この子も大変なんだよね。
八歳の時に母親が、十七歳で父親が魔物に殺された。
味方もほとんどいない中、一国の王になった。
そういえば、攻略対象の中で唯一泣き顔の立ち絵がなかったっけ。
我慢してるんだろうな……
かわいそうになって、思わず彼の手を握りしめる。
そこで、レオナルドの顔が赤いことに気付いた。
それにぼんやりしているような。
もしかして熱っぽいんだろうか。
顔が土気色だったのは、風邪の引き始めだったから?
それなら早く議会の決定を聞いて、休ませてあげないと。
「ところで、私の死刑は取り消せた?」
手を離して、レオナルドの頭をポンポンと叩いてみる。
彼はハッとして、すごい勢いで後ずさった。
「は、話すよ!話すから、そんなに簡単に触らないでくれ!」
彼は姿勢を正し、ゴホンと咳払いをした。
「処刑は……延期のままだ。でも、アナベルを試すことになった」
「試す?」
「ああ。君は、聖女のペンダントを奪おうとした大罪人だ。でも、本当に聖女なら処刑するのはまずい」
「そうだよ、まずいって。私を殺したら、魔王との戦いで騎士隊長の上半身がなくなるよ」
乙女ゲームのくせに、強烈な表現が山のように出てきた。
胸キュンだけを期待した人たちからは酷評されていた。
私は高難度のバトルも楽しかったから、全員のハッピーエンドを見たけど。
メンタルは辛かったけど、頑張った。
大変だったよ、本当に。
しみじみしているうちに、レオナルドの顔が引きつっていく。
そうだ、彼にとってはゲームじゃないんだ。
「ごめん、ごめん。怖がらせて。でも今は大丈夫!本物の聖女がここにいるからね」
「だからそれを確かめるんだよ……まずは二週間後、リリィの精霊集めに同行してもらう。そこで、君の資質を見ることになった」
「精霊集めで、私の資質を?」
心の中でガッツポーズを取った。
精霊が私に懐くところを見せられる。
聖女の力を示す大チャンスだ。
「次に会うのは地の精霊だよね」
「なんで知ってるんだ⁉︎」
レオナルドが叫んだ直後、ドアがノックされた。
「はい、どうぞー」
私が声をかけると、剣士姿の男性が入ってきた。
一瞬誰かと思ったけど、美しすぎる顔のおかげですぐ特定できた。
「あれ?イザークさん……なんでここに?」
94
あなたにおすすめの小説
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる