異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第三部・第17話 「剣と鍬の境界線――ミズノ農場、原野防衛計画始動!」

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🌾朝の始まり――二人の共同作業
「ツム、支柱お願い」
「はーい、陽ちゃんは肥料のチェックね」
朝日が差し込む農地の一区画。
陽介と紬は、並んで新しいトマト棚の組み立てに勤しんでいた。
紬がぴたりと肩を寄せる。
「……最近、騎士団の子たち、陽ちゃんのこと“団長”じゃなくて“先生”って呼びはじめてるよ」
「え、マジで?」
「“先生ー! トマトの花落ちたんですけど!”ってね」
ふたりで吹き出す。
かつて日本で過ごしたあの“夏の放課後”のような空気が、そこにあった。
________________________________________
🛡️原野の壁――守りの準備
午前の作業が終わると、陽介は境界線に向かった。
土木班と魔導班が、石積みとバリア魔法の“併用防壁”を実験していた。
「団長! 新素材の固化粘土、地震にも強そうです!」
「いいね、じゃあそれ第二区に採用しよう」
すぐ背後で、紬がメモを取っていた。
「ねえ陽ちゃん、防衛って言うけど、私たちの農場って……もう“町”だよね」
「……ああ。だからこそ守らなきゃな。
魔物は農作物も、人の笑顔も、関係なく壊してくる」
陽介の表情が一瞬だけ引き締まる。
「だからこそ、農場騎士団は“戦わないために戦う”存在なんだ」
________________________________________
レオネルからの報せ
午後、レオネルからの伝書鳩が届く。
「数日中に、王都より“農業志望の訓練騎士”および“魔導士研究員”計18名を派遣します。
入団試験は形式のみ。志のある者たちです。よろしく頼みます」
「また増えるのか……」
「大所帯だね。でも、嬉しいよね?」
陽介は笑う。
「“ミズノ農場は門戸を開く”。それが俺たちの流儀だろ?」
________________________________________
🌕夜、テラスでの会話
星がきらめく夜。
二人は農場本館のテラスで、麦茶を飲んでいた。
「陽ちゃんさ、最初に“農場”作るって言った時……私、正直不安だったよ」
「え、言ってくれよ、そんなの」
「言ったら止まっちゃいそうだったから」
紬は笑って続ける。
「でも今は違う。
この場所は、ただの畑じゃなくて……
未来への種まきだと思ってる」
陽介は照れくさそうに頭をかいた。
「俺一人じゃ、絶対ここまで来れなかった。
ツムが、隣にいてくれたから」
「これからも一緒にいるよ」
そして、ふたりの視線の先にあるのは、
昼間完成したばかりの第一防壁“ミズノ・ライン”。
夜風が、防壁の上に掲げられた“緑の旗”を揺らしていた。
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