48 / 247
第三部・第18話 「動き出す国家構想――油芋庁、設立への道」
しおりを挟む
☀️ 油芋畑にて――確かな手応え
「これなら……王都の全人口分も、まかなえるな」
陽介は収穫を終えたばかりの油芋畑を見渡し、深く頷いた。
この“油芋”――特殊な土壌と堆肥、湿度と温度を管理することで高品質の植物油へと変化する奇跡の作物は、いまや王国の未来を左右する燃料源となりつつある。
だがその一方で、情報が広がるにつれ、粗悪な“模倣栽培”も増えていた。
「……このままだと、油芋の評判そのものが危ういな」
信頼を損ねれば、市場も政策も崩れる。
________________________________________
📋 紬の手帳と、陽介の提案
その夜。ミズノ農場の執務室。
紬は資料を広げ、油芋の等級試験をにらんでいた。
「ツム、話がある」
「……ん? どうしたの、陽ちゃん」
陽介は手元のメモを見せながら言った。
「このままだと、油芋が“普通の商品”として流されていく。
でも、これは“インフラ”なんだ。
だから国が制度化して管理すべきだと思う」
「つまり、“エネルギー庁”を作れってこと?」
「その制度設計を……ツムにお願いしたい」
紬は驚きながらも、すぐに笑みを浮かべる。
「……うん。やってみる。
だって私たち、現世で“会社”作って、制度も仕組みも一緒に作ってきたんだもんね」
________________________________________
🕊️ 王都・レオネルへの書簡
翌日、陽介はレオネル宛に緊急の使いを出す。
「“油芋”を国家インフラとする提案です。
現在、無認可の生産が乱立し品質にばらつきが出ております。
規格化・検査制度・国家備蓄を含む法整備をお願いしたく存じます。
制度設計には、共同創業者のミズノ紬が当たります」
________________________________________
🏛️ レオネルの決断(王都視点)
レオネルは書状を読み終え、政務官たちに向き直った。
「“次世代の火”は、今、ミズノ農場にある。
貴族たちの利権がどうのと騒ぐ前に、“国としての基盤”を築かねばならん」
政務官たちが一斉に頷く。
________________________________________
🛠️ ミズノ農場・品質管理室、始動!
「まずは、栽培条件を明文化する。土壌分析、温湿度帯、堆肥比率……」
紬は農場の一角に“品質管理室”を立ち上げ、動き出していた。
• 規格書の整備
• 検査魔導士の配置
• 出荷先ごとの履歴管理(魔符による追跡)
• “国家認証マーク”の設計案
「ツム、すごいな……」
「会社作るときもやったでしょ?あの頃のExcel地獄に比べれば楽勝だよ」
「……あれは地獄だったな」
笑い合う二人。その背には、未来のインフラを背負う責任があった。
________________________________________
🔖 エピローグ:新たな称号
数日後、王都より正式な通達が届いた。
「王政庁内に“農業エネルギー管理庁”を創設します。
初代技術顧問官に、ミズノ紬殿を任命。
制度設計・流通基準制定にあたるものとする」
紬は封を閉じると、そっと陽介を見た。
「いよいよ、本当に国の一部になるんだね。
この芋も、この農場も、この……私たちの物語も」
「“成り上がる”って、こういうことなんだな」
「これなら……王都の全人口分も、まかなえるな」
陽介は収穫を終えたばかりの油芋畑を見渡し、深く頷いた。
この“油芋”――特殊な土壌と堆肥、湿度と温度を管理することで高品質の植物油へと変化する奇跡の作物は、いまや王国の未来を左右する燃料源となりつつある。
だがその一方で、情報が広がるにつれ、粗悪な“模倣栽培”も増えていた。
「……このままだと、油芋の評判そのものが危ういな」
信頼を損ねれば、市場も政策も崩れる。
________________________________________
📋 紬の手帳と、陽介の提案
その夜。ミズノ農場の執務室。
紬は資料を広げ、油芋の等級試験をにらんでいた。
「ツム、話がある」
「……ん? どうしたの、陽ちゃん」
陽介は手元のメモを見せながら言った。
「このままだと、油芋が“普通の商品”として流されていく。
でも、これは“インフラ”なんだ。
だから国が制度化して管理すべきだと思う」
「つまり、“エネルギー庁”を作れってこと?」
「その制度設計を……ツムにお願いしたい」
紬は驚きながらも、すぐに笑みを浮かべる。
「……うん。やってみる。
だって私たち、現世で“会社”作って、制度も仕組みも一緒に作ってきたんだもんね」
________________________________________
🕊️ 王都・レオネルへの書簡
翌日、陽介はレオネル宛に緊急の使いを出す。
「“油芋”を国家インフラとする提案です。
現在、無認可の生産が乱立し品質にばらつきが出ております。
規格化・検査制度・国家備蓄を含む法整備をお願いしたく存じます。
制度設計には、共同創業者のミズノ紬が当たります」
________________________________________
🏛️ レオネルの決断(王都視点)
レオネルは書状を読み終え、政務官たちに向き直った。
「“次世代の火”は、今、ミズノ農場にある。
貴族たちの利権がどうのと騒ぐ前に、“国としての基盤”を築かねばならん」
政務官たちが一斉に頷く。
________________________________________
🛠️ ミズノ農場・品質管理室、始動!
「まずは、栽培条件を明文化する。土壌分析、温湿度帯、堆肥比率……」
紬は農場の一角に“品質管理室”を立ち上げ、動き出していた。
• 規格書の整備
• 検査魔導士の配置
• 出荷先ごとの履歴管理(魔符による追跡)
• “国家認証マーク”の設計案
「ツム、すごいな……」
「会社作るときもやったでしょ?あの頃のExcel地獄に比べれば楽勝だよ」
「……あれは地獄だったな」
笑い合う二人。その背には、未来のインフラを背負う責任があった。
________________________________________
🔖 エピローグ:新たな称号
数日後、王都より正式な通達が届いた。
「王政庁内に“農業エネルギー管理庁”を創設します。
初代技術顧問官に、ミズノ紬殿を任命。
制度設計・流通基準制定にあたるものとする」
紬は封を閉じると、そっと陽介を見た。
「いよいよ、本当に国の一部になるんだね。
この芋も、この農場も、この……私たちの物語も」
「“成り上がる”って、こういうことなんだな」
90
あなたにおすすめの小説
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか
宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。
溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。
アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」
果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レイルークは誰の手(恋)をとるのか。
これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分)
⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。
物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。
『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。
ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。
一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。
もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。
かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
稀代の悪女は死してなお
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる