10 / 33
第5話 初めての労働 俯瞰視点(2)
しおりを挟む
「「「……つか、れた……」」」
ピエールもミサもポーリーヌも。それぞれベッドで大の字になり、力なく呟きました。
「身体中が……。パンパン、だ……」
「手も脚も、もう……。ちゃんと、動かせないわ……」
「それに、身体も、重い……。重力が倍になったみたい、ですわ……」
生まれて一度も肉体労働をしてこなかった者達が、半日間動きっぱなしだった。肉体への負担は非常に激しく、疲労で吐き気すらもよおしていました。
「辛い、苦しい。……だが、とても心地いい」
「身体は苦しいのに、心は真逆。スッキリしているわ」
「充実感で満ちていますわ……!」
まだまだ未熟なものの、確実にホライザの役に立てた――恩人のお役に立てた。それがなにより嬉しく、三人の顔には自然と笑みが浮かびました。
「僅かではあるが、目標に向かって前進できた。明日はもっと前に進まねばな」
「そうね、あなた。明日もオズアさんにしっかり教わって、しっかりと身につけましょう……!」
「掃除や洗濯に関する知識や技術。すべてを乾いたスポンジみたいに吸収してみせますわ……!!」
今の三人は、とにかく『成長』したい。ピエール達は声を弾ませて決意をし、残念ながら身体を動かせないため、頭の中で今日覚えたことの復習を始めました。
「廊下を掃く角度は、あれくらいがベスト……。階段を掃くときは、あそこに気をつけつつやる……」
「Aは便器で、Bは壁や床……。床は…………ああすれば、より効率よくよごれを落せる……」
「シーツは、乱暴にしない……。丁寧に…………でも、ちゃんと力を加えて……。あんな風に、洗う……」
「皿やボウルは……。キュッキュと音がするまで、洗う……」
「コップやグラスは、あの道具を使って……。あそこに逆さに置いて、乾燥させる……」
「肉料理に使ったナイフとフォークは、あの洗剤で洗って……。他よりも、少し長めに洗う……」
などなど。三人は夕食を食べたあとも就寝時間ギリギリまで今日学んだことを振り返り、
「「「ヴァランタン様とレアナ様のために!!」」」
恩人の姿を思い浮かべながら、気合に満ち満ちた状態で眠りにつきました。
そうして彼らにとって激動の一日が終わり、次の日もその次の日も気合に満ちた日々が続く。他の従業員が目を見張るほど三人は熱心に働き続け、そのかいあって2週間経つ頃には『期待の新人』と呼ばれるほどになる――のですが。その時期を境に、評判以外にも『変わる』ところが生まれ始めることとなるのでした。
「…………ミサ、ポーリーヌ。少しくらい力を抜いてもいいとは思わんか?」
ピエールもミサもポーリーヌも。それぞれベッドで大の字になり、力なく呟きました。
「身体中が……。パンパン、だ……」
「手も脚も、もう……。ちゃんと、動かせないわ……」
「それに、身体も、重い……。重力が倍になったみたい、ですわ……」
生まれて一度も肉体労働をしてこなかった者達が、半日間動きっぱなしだった。肉体への負担は非常に激しく、疲労で吐き気すらもよおしていました。
「辛い、苦しい。……だが、とても心地いい」
「身体は苦しいのに、心は真逆。スッキリしているわ」
「充実感で満ちていますわ……!」
まだまだ未熟なものの、確実にホライザの役に立てた――恩人のお役に立てた。それがなにより嬉しく、三人の顔には自然と笑みが浮かびました。
「僅かではあるが、目標に向かって前進できた。明日はもっと前に進まねばな」
「そうね、あなた。明日もオズアさんにしっかり教わって、しっかりと身につけましょう……!」
「掃除や洗濯に関する知識や技術。すべてを乾いたスポンジみたいに吸収してみせますわ……!!」
今の三人は、とにかく『成長』したい。ピエール達は声を弾ませて決意をし、残念ながら身体を動かせないため、頭の中で今日覚えたことの復習を始めました。
「廊下を掃く角度は、あれくらいがベスト……。階段を掃くときは、あそこに気をつけつつやる……」
「Aは便器で、Bは壁や床……。床は…………ああすれば、より効率よくよごれを落せる……」
「シーツは、乱暴にしない……。丁寧に…………でも、ちゃんと力を加えて……。あんな風に、洗う……」
「皿やボウルは……。キュッキュと音がするまで、洗う……」
「コップやグラスは、あの道具を使って……。あそこに逆さに置いて、乾燥させる……」
「肉料理に使ったナイフとフォークは、あの洗剤で洗って……。他よりも、少し長めに洗う……」
などなど。三人は夕食を食べたあとも就寝時間ギリギリまで今日学んだことを振り返り、
「「「ヴァランタン様とレアナ様のために!!」」」
恩人の姿を思い浮かべながら、気合に満ち満ちた状態で眠りにつきました。
そうして彼らにとって激動の一日が終わり、次の日もその次の日も気合に満ちた日々が続く。他の従業員が目を見張るほど三人は熱心に働き続け、そのかいあって2週間経つ頃には『期待の新人』と呼ばれるほどになる――のですが。その時期を境に、評判以外にも『変わる』ところが生まれ始めることとなるのでした。
「…………ミサ、ポーリーヌ。少しくらい力を抜いてもいいとは思わんか?」
65
あなたにおすすめの小説
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
「君からは打算的な愛しか感じない」と婚約破棄したのですから、どうぞ無償の愛を貫きください。
木山楽斗
恋愛
「君からは打算的な愛しか感じない」
子爵令嬢であるフィリアは、ある時婚約者マルギスからそう言われて婚約破棄されることになった。
彼女は物事を損得によって判断する傾向にある。マルギスはそれを嫌に思っており、かつての恋人シェリーカと結ばれるために、フィリアとの婚約を破棄したのだ。
その選択を、フィリアは愚かなものだと思っていた。
一時の感情で家同士が決めた婚約を破棄することは、不利益でしかなかったからだ。
それを不可解に思いながら、フィリアは父親とともにマルギスの家に抗議をした。彼女はこの状況においても、利益が得られるように行動したのだ。
それからしばらく経った後、フィリアはシェリーカが危機に陥っていることを知る。
彼女の家は、あくどい方法で金を稼いでおり、それが露呈したことで没落に追い込まれていたのだ。
そのことを受けて元婚約者マルギスが、フィリアを訪ねてきた。彼は家が風評被害を恐れたことによって家を追い出されていたのだ。
マルギスは、フィリアと再び婚約したいと申し出てきた。彼はそれによって、家になんとか戻ろうとしていたのである。
しかし、それをフィリアが受け入れることはなかった。彼女はマルギスにシェリーカへの無償の愛を貫くように説き、追い返すのだった。
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。
姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。
coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。
お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません?
私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。
あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす
青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。
幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。
スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。
ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族
物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
「役立たず」と婚約破棄されたけれど、私の価値に気づいたのは国中であなた一人だけでしたね?
ゆっこ
恋愛
「――リリアーヌ、お前との婚約は今日限りで破棄する」
王城の謁見の間。高い天井に声が響いた。
そう告げたのは、私の婚約者である第二王子アレクシス殿下だった。
周囲の貴族たちがくすくすと笑うのが聞こえる。彼らは、殿下の隣に寄り添う美しい茶髪の令嬢――伯爵令嬢ミリアが勝ち誇ったように微笑んでいるのを見て、もうすべてを察していた。
「理由は……何でしょうか?」
私は静かに問う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる