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第8話 最初の試用期間が終わって 俯瞰視点(2)
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「? どうしたの、あなた?」
「お父様……?」
次の掃除場所へと向かうべく、三階の廊下を歩いている時でした。先頭を歩いていたピエールが、突然立ち止まりました。
「…………あそこに落ちているのは……。まさか……」
「? あなた……?」
「あそこ……?」
「こんな場所に、あるとは思えん……。だが……。しかし――確かめるのはタダだ! ミサっ、ポーリーヌっ、来てくれ!」
ピエールは二人を手招きしつつ走り出し、10メートルほど先にある大きな花瓶の傍でしゃがみ込みました。
「そこに……。なにかあるんですの……?」
「ああ、そうなのだよ。さっきチラッと光って………………!! おおむぐ!」
何かを拾ったピエールは、慌てて自分の口を塞ぎました。
「「???」」
(いいな、絶対に大きな声を出すんじゃないぞ? ここな、こんなものが落ちていたのだよ)
(それは――っっ!!)(なにが――っっ!!)
怪訝そうに覗き込んだミサとポーリーヌもまた、ピエールとおんなじ反応をしました。
なぜから彼が手に持っているのは、エメラルドのイヤリングの片割れだったのですから。
(こいつは本物のエメラルドだ。サイズは小さいが質はいいし、周りも上質な金属で作られている。売れば15万は軽く超えるだろう)
ピエールはステータスとして多くの貴金属を所有しており、これらに造詣が深い。すぐに正確な金額を弾き出しました。
(15万!? こんなものが、なんでこんな場所に……?)
(平民が気軽につけるようなものではないはず……。どうなっているんでしょうね……?)
(私も疑問に思ったが、合点がいったよ。昨日の夕方、階段で見た客を思い出すのだ)
他の客よりワンランク上に感じる出で立ちの女性が、夫と思しき男性と共に宿泊客として訪れていました。
(アレが泊まっていたのはこの階で、他の従業員によると急用か何かで早朝に慌ただしくチェックアウトしたそうじゃないか。あの女が落としていったのだよ)
(そういうこと。ふぅん)
(……………………)
ミサ、ポーリーヌ、そしてピエールも。三人の視線が、イヤリングに集中しました。
(……お前達、まさかふざけたことを考えてはいないだろうな?)
(あなた達こそ、どうなの?)
(心配要らないとは思いますが、念のため確認致しましょう。このイヤリングは)
全員が視線を交錯させ、
(((もらっておく)))
声が三つ、揃いました。
(周りに誰もいない。ならば決まっていますわ)
(15万も臨時収入があれば、予定よりも随分と早くアレを取りに行けるんだもの。もらわない手はないわ)
(さすが私の妻と娘だ。そう、そうなのだよ。クレバーに生きねばならんのだ)
三人に、困っているはずだから届けないと、という思いは微塵もありません。ピエール達は一切悪びれることなく、高価な落とし物を懐に忍ばせたのでした。
「お父様……?」
次の掃除場所へと向かうべく、三階の廊下を歩いている時でした。先頭を歩いていたピエールが、突然立ち止まりました。
「…………あそこに落ちているのは……。まさか……」
「? あなた……?」
「あそこ……?」
「こんな場所に、あるとは思えん……。だが……。しかし――確かめるのはタダだ! ミサっ、ポーリーヌっ、来てくれ!」
ピエールは二人を手招きしつつ走り出し、10メートルほど先にある大きな花瓶の傍でしゃがみ込みました。
「そこに……。なにかあるんですの……?」
「ああ、そうなのだよ。さっきチラッと光って………………!! おおむぐ!」
何かを拾ったピエールは、慌てて自分の口を塞ぎました。
「「???」」
(いいな、絶対に大きな声を出すんじゃないぞ? ここな、こんなものが落ちていたのだよ)
(それは――っっ!!)(なにが――っっ!!)
怪訝そうに覗き込んだミサとポーリーヌもまた、ピエールとおんなじ反応をしました。
なぜから彼が手に持っているのは、エメラルドのイヤリングの片割れだったのですから。
(こいつは本物のエメラルドだ。サイズは小さいが質はいいし、周りも上質な金属で作られている。売れば15万は軽く超えるだろう)
ピエールはステータスとして多くの貴金属を所有しており、これらに造詣が深い。すぐに正確な金額を弾き出しました。
(15万!? こんなものが、なんでこんな場所に……?)
(平民が気軽につけるようなものではないはず……。どうなっているんでしょうね……?)
(私も疑問に思ったが、合点がいったよ。昨日の夕方、階段で見た客を思い出すのだ)
他の客よりワンランク上に感じる出で立ちの女性が、夫と思しき男性と共に宿泊客として訪れていました。
(アレが泊まっていたのはこの階で、他の従業員によると急用か何かで早朝に慌ただしくチェックアウトしたそうじゃないか。あの女が落としていったのだよ)
(そういうこと。ふぅん)
(……………………)
ミサ、ポーリーヌ、そしてピエールも。三人の視線が、イヤリングに集中しました。
(……お前達、まさかふざけたことを考えてはいないだろうな?)
(あなた達こそ、どうなの?)
(心配要らないとは思いますが、念のため確認致しましょう。このイヤリングは)
全員が視線を交錯させ、
(((もらっておく)))
声が三つ、揃いました。
(周りに誰もいない。ならば決まっていますわ)
(15万も臨時収入があれば、予定よりも随分と早くアレを取りに行けるんだもの。もらわない手はないわ)
(さすが私の妻と娘だ。そう、そうなのだよ。クレバーに生きねばならんのだ)
三人に、困っているはずだから届けないと、という思いは微塵もありません。ピエール達は一切悪びれることなく、高価な落とし物を懐に忍ばせたのでした。
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