行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

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第8話 最初の試用期間が終わって 俯瞰視点(1)

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「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」

 副支配人室でとあるやり取りがあった、次の日の朝。まさにその部屋に呼ばれたピエール、ミサ、ポーリーヌの三人は、パッと笑顔の花を咲かせました。
 なぜならば、

「一か月間お疲れ様でした。本日より仮採用とさせていただきます」

 ヴァランタンから合格をもらい、次のステップへと進めるようになったからです。

「今日からオズアは担当から外れ、皆さんのみで仕事を行っていただくようになります。ただそれでもいきなり個々は難しいと思いますので、本採用を目指す一か月間は三人一組となって行動していただきます」
「「「承知しました!」」」」
「こちらが今週の当番表となっております。当番表に関して何か質問はございますか?」
「いえ、なにもございません。引き続き全員誠心誠意、粉骨砕身で励ませていただきます」
「それは頼もしい。今後も期待させていただきますね」
「「「はいっ!」」」

 ピエール達は威勢よく返事をしたあと退室し、支度を行うため一度自室に戻り――部屋の扉を閉めるや、仲良くニッと笑みを浮かべました。

「やっと鬱陶しい男が消えた!」「やっと鬱陶しい男が消える!」「やっと鬱陶しい男が消えますわ!」

 自分より年下のクセに指導してくる男。自分より学がまるでないくせに生意気に指導してくる男。自分より圧倒的にレベルが低く汚い血が流れているくせに生意気に指導してくる男。
 当初の感情がすっかりなくなった三人にとって、オズアは不愉快な邪魔者。ずっと消えろと思っていた存在がいなくなることとなり、嬉しくてたまらなかったのです。

「ストレスが一気に減るし、やっとここ以外でもあの相談ができるようになる。いいこと尽くめだ!」
「ふぅ、イライラから解放される。これでお肌が随分と若返るはずよ」
「すでに肌に潤いが戻ってきた気がしますわ……! ヴァランタンに感謝ですわ」

 すでに恩人からも敬称が消えており、その後も三人は時間ギリギリまで悪口を連発。たっぷり苛立ちを発散した三人は仲良く部屋を出て、

「昨日までとは別のようだ」
「仕事により集中できるようになったわね」
「私達ならもっと効率よく動けるはず、と思っていたんですのよ。アレが私たちの質を下げていたんですのね」

 気持ちよく仕事に取り組めるようになった――のですが、それから一週間後。そんな三人に、とある出来事が発生するのでした。


「ん? あれは……」


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