行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

文字の大きさ
15 / 33

第9話 その日の夜 俯瞰視点(1)

しおりを挟む
「すみません、ピエールさん、ミサさん、ポーリーヌさん。お時間をいただけますか?」

 良いことがあった仕事を終えて美味しい夕食を摂り、部屋に戻ってきて3時間ほどたっぷりとお喋り。それぞれが上機嫌でヘッドに入ろうとした、その時でした。ノックと共に、ヴァランタンの声が聞こえてきました。

((チッ、タイミングが悪い))「もちろんでございます!」

 ピエールだけではなくミサとポーリーヌも心の中で舌打ちをし、本心とは真逆で笑顔を浮かべて扉を開けました。

「「「本日も一日、お疲れ様でした!」」」
「こちらこそ、一日お疲れ様でした。夜分に申し訳ございません」
「いえいえ、そんな。こんなお時間に珍しいですね。いかがなさいましたか?」

 普段ならヴァランタンは、ホライザの裏にある自宅に戻っている時間。実際コレは初めての出来事で、三人は少々驚いていました。

「宿泊していただいたお客様から、緊急のご連絡があったのですよ。現在全スタッフに、そちらへの対応に関するお願いをして回っているんです」
「へ、へぇ、ご連絡。どういったものなのでしょう……?」

 ドクン。
 ピエール、ミサ、ポーリーヌの心臓が、強く脈打ちました。

「そのお客様は、落とし物をされたそうです。イヤリングを――エメラルドのイヤリングを、片方落としてしまわれたそうなのですよ」

 ドクン!
 ピエール、ミサ、ポーリーヌの心臓が、更に強く脈打ちました。

「落とした可能性があるのはチェックアウトの際で、不幸中の幸いホライザ以外の可能性は0だそうです。そこでこれから館内の捜索を行うことになりまして、皆さんには三階の廊下を一緒に調べていただきたいのですが構いませんでしょか?」
「もちろん、お力になりますよ。な、二人とも」
「ええ」
「はい。ご協力させていただきますわ」

 大丈夫。大丈夫だ。
 あの時周りには誰もいなかった。
 誰に居ないのなら気付かれるはずがない。
 知らないふりを続けたらバレはしない。
 各自そう自分に言い聞かせ、平然を装って頷きました。

「助かります。では参りましょう」
「「「はいっ!」」」

 そうして緊急の捜索が始まり、三人はヴァランタンと共に一番落とした可能性が高いとされる三階を捜索しましたが――。もちろん、発見されませんでした。

「ヴァランタン様……。ありません、でしたね……」
「そう、ですね。……一階にも二階にも、他の部分はないです……。となると…………考えたくはありませんが……」

 苦々しい声音になっていたヴァランタン。そんな彼の口から、

 ドクン!!

 更に三人の心音を跳ね上げる言葉が、飛び出したのでした。


「もしかすると……。誰かが盗ってしまったのかもしれませんね……」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。 幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。 スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。 ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族 物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。

見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです

天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。 魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。 薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。 それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。

公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に

ゆっこ
恋愛
 王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。  私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。 「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」  唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。  婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。 「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」  ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

地味で無才な私を捨てたことを、どうぞ一生後悔してください。

有賀冬馬
恋愛
「お前のような雑用女、誰にでも代わりはいる」 そう言って私を捨てたディーン様。でも、彼は気づいていなかったのです。公爵家の繁栄を支えていたのは、私の事務作業と薬草の知識だったということに。 追放された辺境の地で、私はようやく自分らしく生きる道を見つけました。無口な辺境伯様に「君がいなければダメだ」と熱烈に求められ、凍っていた心が溶けていく。 やがて王都で居場所をなくし、惨めな姿で私を追いかけてきた元婚約者。 「もう、私の帰る場所はここしかありませんから」 絶望する彼を背に、私は最愛の人と共に歩み出します。

処理中です...