【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます？

第２話

　本日の全ての講義が終わった後、ルシアは自分の家から迎えに来ていた馬車に乗り、ローレル伯爵邸へと帰宅した。

　帰宅後、ルシアは執事に彼女の父であり、ローレル伯爵であるサミュエルは今時間が取れるかと尋ねたら、執務室で領地関係の書類仕事をしており、今はちょうど休憩中とのことなので、ルシアはサミュエルに今日の出来事の報告をする為に執務室へ足を運んだ。


「お父様。本日、学園にてイアン様から婚約破棄を言い渡されましたので承諾しました。なんでも真実の愛を見つけたとか。イアン様曰く、私と結ばれるより真実の愛のお相手と結ばれた方が利益が大きいそうで。婚約破棄に伴う慰謝料についての相談や後処理は後日するということをイアン様には言っておりますので、お手数をおかけしますが、お父様にお任せしますわ」

「わかった。私の可愛いルシアを捨ててまで真実の愛とやらを選んだ彼の今後が楽しみだ。慰謝料はたっぷり請求するし、今まで無利子で貸していたお金を利子付きで返済してもらう。それに、ルシアの次の婚約者はこんな馬鹿なことをしない相手をしっかり選んでくる。バルデ伯爵があまりにもしつこくイアン君をルシアの婚約者として差し出す代わりに無利子でお金を貸してくれと頼んでくるから、仕方なく受けたがこんなことになるなら断固として受け入れなければよかった。ルシアには本当に申し訳ないことをした」


　イアンとルシアの婚約はお金絡みの事情があった。

　ローレル伯爵家は割と裕福な部類に入る家で、バルデ伯爵家は散財によって家計が火の車だ。

　イアンは顔はまずまず美形ではあるが、肝心の頭の出来は特別優秀でもなんでもなく、むしろ学園の成績は下から数えた方が早い。

　おまけに無利子でお金を貸しているので、ローレル伯爵家には婚約による旨みなど皆無である。

　だからサミュエルはルシアには婚約が嫌になったら解消しても良いと言っており、カフェテリアでの婚約破棄の一件も承諾したのである。


　家格は同じ伯爵家でもお金を貸している分、ローレル伯爵家のほうが力関係は上だが、何の瑕疵もないのに婚約解消するのは外聞が悪い。

　今回はルシアは婚約破棄を突き付けられこそすれ、実態はイアンの浮気によるものなので、何の問題もなく婚約解消出来る。


「お父様、気になさらないで下さいませ。悪いのはイアン様よ。では、後のことはよろしくお願いします」


　このやり取りから一週間後、イアンとルシアの婚約は無事解消された。

　サミュエルがバルデ伯爵家に出向き、バルデ伯爵と話をした結果、慰謝料はその場で払って貰い、ローレル伯爵家から今まで借りたお金は今すぐは用意出来ないが、今後は利子付きで返済すると署名をもらってきた。

　ルシアがサミュエルに聞いたところによると、バルデ伯爵は終始笑顔で不気味だったそうである。