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第2章
凍りついたあなたへの誓い
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『シルヴィッ!』
セディの悲鳴が私を貫きます。
ハッと目が覚めました。
この5年間慣れ親しんだ、私の部屋です。私の目を覚まさないようにとのことでしょうか、ほんのりとした明るさに調整されています。
私の右手は冷たいものに握られていました。
手の先を見ると、セディが両手で握りしめ額に当てています。
「セディ…」
かすれた声しか出てきません。
それでも、セディは息を呑み、顔を上げました。覆面は外され、白いまでに青ざめた顔が私に向けられました。
「お茶の準備を致します」
シャーリーが小さく声をかけ、部屋から出ていきました。
その間、セディはピクリとも動かず、ただ私を見ています。
そして再び私の右手を額に当てました。額は驚くほど冷えています。
「君が…、目の前で…、死んでしまったと…っ!」
声を絞り出すようにして囁いた後、痛いほどに手を握りしめます。触れた部分からセディの震えが伝わります。
―――「もうあんな無茶はしないで。僕にとって…、一番大切なことは君が生きていてくれることなんだ」
以前、中庭で言われた言葉が蘇ります。
「ごめんなさいっ」
私は起き上がり、自由な左手でセディにしがみつきました。
セディの肩が揺れ、そして、私を抱きしめてきます。震えながら、私の頭をかき抱き、しがみつくように背中を抱きすくめ、私を確かめていきます。
私は精一杯の力で抱き返します。私から意図せず治癒の力がセディに向けられましたが、セディの震えは止まりません。
「ごめんなさい」
私はセディの胸を涙で濡らしながら声をかけます。頭の上から掠れた声が降ってきました。
「僕の名前を呼んでおくれ」
私は厚い胸を力の限り抱きしめながら答えました。
「セディ…」
セディはさらに抱きしめます。息が苦しいぐらいです。
私は治癒の力を送り続けます。それでも、セディの身体は震えたままです。
私の髪に頬を押し当て、かすれた声が絞り出されます。
「もう一度…」
私は何度もセディの名前を声にします。心でも呼びかけます。
その度にセディは強く私を抱きすくめていました。
ようやくセディの震えが収まり、セディは私を離しました。
細くくっきりした美しい眉が困ったように下げられ、ドアに視線が向けられました。
「シャーリー、悪かったね。入っておくれ」
シャーリーの答えを聞きながら、セディはドアを開けて招き入れました。
林檎の香りが漂ってきます。セディはまだ青ざめたままシャーリーに話しかけ、紅茶を受け取っています。
少しでもセディに元の顔色に戻ってほしいと、私は用意していたものを転移させました。
セディが目を見開きました。
「セディ、受け取ってほしいの」
白い木で作られた箱をセディに差し出しました。私より軽く一回りは大きい手が箱を受け取ったとき、重なった手はまだ冷えていました。
「腕輪なの」
祈るような思いでセディがそれを着けてくれるのを待ちます。
親指の先ほどの大きさの魔法石が白金のリングに取り付けられているシンプルなデザインです。
セディはその場で着けてくれました。瞬間、リングがうっすらと光ります。
胸の痛みに思わず私は目を閉じてしまいました。
「ありがとう」
柔らかくよく透る声が響きました。声は元に戻ってくれたようです。
私はゆっくりと目を開きました。
淡い緑の瞳は光がないものの、私を映してくれています。
「見送ったときの僕の願いを覚えている?」
私は、かすかに頷きました。
――「5年後、卒業のお祝いにまた守護石を贈らせてくれる?」
セディはあの時のように、ポケットから箱を取り出し、私の掌に載せてくれました。
セディの手と再び重なります。私は必死に思いを抑えました。
息を吸い込み気持ちを整え、箱を開けると、一瞬、胸の痛みは消え去りました。
約束通り、イヤリングが入っています。
私が贈った石と同じぐらいの大きさの淡い緑の石には、5年前よりも強く、そしてやはり丁寧に守護の魔法が組み込まれています。
セディの想いを感じて、一層強い胸の痛みが戻ってきました。
「ありがとう」
早速、耳につけてセディを見つめます。耳元に温かな魔力が流れてきました。
セディの魔力も発動したようです。
私はセディに気づかれないよう、セディに抱き着きました。
驚いたように一瞬セディの身体は強張りましたが、私をしっかりと受け止めてくれました。
これだけ密着して、私の治癒の力がセディに届いているはずなのに、背中に添えられた手は、やはりまだ冷えたままです。
心の声が溢れることも一度もありません。まるで、心に結界が張られているようです。
―――「お願いだ。自分を大切にしておくれ。君が生きていてくれないと、僕は……」
私は治癒の力を再びリングに注ぎながら、想いを声に出しました。
「セディの傍に戻ります。セディが嫌がっても、離れません」
同時に胸の中で誓いました。
私は私の一番大事なあなたを傷つけてしまいました。
あなたが子どものころ、王太子殿下の暗殺の場にいて、どれだけ死というものに衝撃を受け、恐れていたのか、知っていたのに。
私があなたにもう一度恐怖を与えてしまいました。
あなたの手が、あなたの心が温まるよう、あなたがリングを光らせなくなるよう、
私はしがみついてでもあなたの傍にいます。
柔らかな声が、ゆっくりと言葉を紡ぎます。
「僕の隣は…いつでも…君のための……君だけの場所だよ」
冷たい唇が頭に触れます。冷えたままの手が私の頬を包み、見上げさせます。
青ざめたそして氷のような美しい顔が、近づいてきます。
目を閉じると、額に冷たい口づけが落とされました。
「お帰り、シルヴィ」
セディの悲鳴が私を貫きます。
ハッと目が覚めました。
この5年間慣れ親しんだ、私の部屋です。私の目を覚まさないようにとのことでしょうか、ほんのりとした明るさに調整されています。
私の右手は冷たいものに握られていました。
手の先を見ると、セディが両手で握りしめ額に当てています。
「セディ…」
かすれた声しか出てきません。
それでも、セディは息を呑み、顔を上げました。覆面は外され、白いまでに青ざめた顔が私に向けられました。
「お茶の準備を致します」
シャーリーが小さく声をかけ、部屋から出ていきました。
その間、セディはピクリとも動かず、ただ私を見ています。
そして再び私の右手を額に当てました。額は驚くほど冷えています。
「君が…、目の前で…、死んでしまったと…っ!」
声を絞り出すようにして囁いた後、痛いほどに手を握りしめます。触れた部分からセディの震えが伝わります。
―――「もうあんな無茶はしないで。僕にとって…、一番大切なことは君が生きていてくれることなんだ」
以前、中庭で言われた言葉が蘇ります。
「ごめんなさいっ」
私は起き上がり、自由な左手でセディにしがみつきました。
セディの肩が揺れ、そして、私を抱きしめてきます。震えながら、私の頭をかき抱き、しがみつくように背中を抱きすくめ、私を確かめていきます。
私は精一杯の力で抱き返します。私から意図せず治癒の力がセディに向けられましたが、セディの震えは止まりません。
「ごめんなさい」
私はセディの胸を涙で濡らしながら声をかけます。頭の上から掠れた声が降ってきました。
「僕の名前を呼んでおくれ」
私は厚い胸を力の限り抱きしめながら答えました。
「セディ…」
セディはさらに抱きしめます。息が苦しいぐらいです。
私は治癒の力を送り続けます。それでも、セディの身体は震えたままです。
私の髪に頬を押し当て、かすれた声が絞り出されます。
「もう一度…」
私は何度もセディの名前を声にします。心でも呼びかけます。
その度にセディは強く私を抱きすくめていました。
ようやくセディの震えが収まり、セディは私を離しました。
細くくっきりした美しい眉が困ったように下げられ、ドアに視線が向けられました。
「シャーリー、悪かったね。入っておくれ」
シャーリーの答えを聞きながら、セディはドアを開けて招き入れました。
林檎の香りが漂ってきます。セディはまだ青ざめたままシャーリーに話しかけ、紅茶を受け取っています。
少しでもセディに元の顔色に戻ってほしいと、私は用意していたものを転移させました。
セディが目を見開きました。
「セディ、受け取ってほしいの」
白い木で作られた箱をセディに差し出しました。私より軽く一回りは大きい手が箱を受け取ったとき、重なった手はまだ冷えていました。
「腕輪なの」
祈るような思いでセディがそれを着けてくれるのを待ちます。
親指の先ほどの大きさの魔法石が白金のリングに取り付けられているシンプルなデザインです。
セディはその場で着けてくれました。瞬間、リングがうっすらと光ります。
胸の痛みに思わず私は目を閉じてしまいました。
「ありがとう」
柔らかくよく透る声が響きました。声は元に戻ってくれたようです。
私はゆっくりと目を開きました。
淡い緑の瞳は光がないものの、私を映してくれています。
「見送ったときの僕の願いを覚えている?」
私は、かすかに頷きました。
――「5年後、卒業のお祝いにまた守護石を贈らせてくれる?」
セディはあの時のように、ポケットから箱を取り出し、私の掌に載せてくれました。
セディの手と再び重なります。私は必死に思いを抑えました。
息を吸い込み気持ちを整え、箱を開けると、一瞬、胸の痛みは消え去りました。
約束通り、イヤリングが入っています。
私が贈った石と同じぐらいの大きさの淡い緑の石には、5年前よりも強く、そしてやはり丁寧に守護の魔法が組み込まれています。
セディの想いを感じて、一層強い胸の痛みが戻ってきました。
「ありがとう」
早速、耳につけてセディを見つめます。耳元に温かな魔力が流れてきました。
セディの魔力も発動したようです。
私はセディに気づかれないよう、セディに抱き着きました。
驚いたように一瞬セディの身体は強張りましたが、私をしっかりと受け止めてくれました。
これだけ密着して、私の治癒の力がセディに届いているはずなのに、背中に添えられた手は、やはりまだ冷えたままです。
心の声が溢れることも一度もありません。まるで、心に結界が張られているようです。
―――「お願いだ。自分を大切にしておくれ。君が生きていてくれないと、僕は……」
私は治癒の力を再びリングに注ぎながら、想いを声に出しました。
「セディの傍に戻ります。セディが嫌がっても、離れません」
同時に胸の中で誓いました。
私は私の一番大事なあなたを傷つけてしまいました。
あなたが子どものころ、王太子殿下の暗殺の場にいて、どれだけ死というものに衝撃を受け、恐れていたのか、知っていたのに。
私があなたにもう一度恐怖を与えてしまいました。
あなたの手が、あなたの心が温まるよう、あなたがリングを光らせなくなるよう、
私はしがみついてでもあなたの傍にいます。
柔らかな声が、ゆっくりと言葉を紡ぎます。
「僕の隣は…いつでも…君のための……君だけの場所だよ」
冷たい唇が頭に触れます。冷えたままの手が私の頬を包み、見上げさせます。
青ざめたそして氷のような美しい顔が、近づいてきます。
目を閉じると、額に冷たい口づけが落とされました。
「お帰り、シルヴィ」
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