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第3章
恋の締め切りができました
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青白い月の光が美しく部屋に差し込み、夜の静寂を際立たせています。
心が洗われるような静けさです。
ですが、私の頭の中は、まったくその静けさとは逆になっていました。
一体、どうしてこんなことになっているの????
――パンッ!
私は部屋に張っていた結界があっさりと破られたのを感じて目を覚ましました。
刺客が現れたのでしょうか。
緊張で体が強張ります。寝たままの姿勢で辺りを窺うと、バルコニーの窓が開け放たれていることに気が付きました。
そこには月を逆光にした二人の人影がありました。
咄嗟に球形結界を張りながら、その二人に向き合います。
そして、私は安堵の息を付きました。
月を逆光にしていてもなおはっきりと分かるほどの不機嫌が漏れ出ている叔父様と、同じく月を逆光にしていてもなぜだか美しさがあふれ出ている殿下が立っていたのです。
刺客ではないと気が抜けたものの、ふと疑問が湧きあがりました。
一体、どうしてこの二人が、ここに立っているのでしょう。
ここは、私の部屋なのですが??
夜も更けたこんな時間に殿下が王城を出ること自体、加えて一貴族の屋敷に現れること、それもバルコニーから現れることなどありえないことです。
どうやら幻覚を見ているようです。
こんな幻覚を見るなんて、きっと初めての舞踏会で知らぬ間に緊張し疲れていたのでしょう。ここまで疲れていたなんて、驚きです。早く寝て明日に備えなくてはいけません。
私は頭を振りながら、ベッドに戻ろうと踵を返しました。
背後からかけられた爽やかな声が静寂を破りました。
「おや、ここまで来た私を無視するなんて、相変わらずつれないね、シルヴィア。」
腕を取られて振り向かされていました。
残念ながら幻覚ではなかったようです。
今日の舞踏会で年頃のご令嬢の視線をくぎ付けにしていた華やかな美貌がすぐ近くにありました。
艶やかな金の髪が月の光を受けて煌めいています。
殿下は、舞踏会でご令嬢たちに振りまいていたあの笑顔を浮かべました。
幼いころにお傍近くにいた私にはこの笑顔は意味がないとご存じのはずなのに、一体、どういう意図があるのでしょう。
「殿下、今度はどういうおふざけなのです。」
ため息をつきそうになるのを抑えながら、尋ねてみました。魔法使いとしての直感は、やや、尋ねたくない思いがしていたのですが。
殿下は極上の笑みを浮かべ、その美貌を増します。
殿下がこの顔をなさる時はいいことがありません。
幼いころ、殿下のトランプの手札からジョーカーを選ぼうとしたとき、私の苦手な種類のハーブの入った紅茶を出されるとき、殿下は必ずこの笑顔を浮かべていました。
思わず殿下から離れようとしましたが、殿下は逆に私を引き寄せ抱き込みました。
瞬間、バルコニーの叔父様から肌に刺さるような険悪な魔力の波動を感じ、私は焦りました。
叔父様、私の部屋を壊さないでね?
私の部屋のドアを跡形もなく魔力で壊したことのある叔父様なら、機嫌次第で十分にあり得ます。
結界を張るべきか悩んでいると、驚愕すべきことに殿下はその波動を全く無視して、私をさらに強く抱きしめ、にこやかにさわやかに耳元へ言葉を落とされたのです。
「シルヴィア、あと半年でセドリックを落とせなかったら、」
セディの名を出されて、私は思わず顔を上げ殿下を見つめました。
強い眼差しが私を射抜きます。
そしてゆっくりと口が開かれ、それは告げられました。
「そのときは、君は僕の婚約者になってもらう。」
殿下は目を細めて言い切られました。
「もう、きみを甘やかしてはあげないよ。」
心が洗われるような静けさです。
ですが、私の頭の中は、まったくその静けさとは逆になっていました。
一体、どうしてこんなことになっているの????
――パンッ!
私は部屋に張っていた結界があっさりと破られたのを感じて目を覚ましました。
刺客が現れたのでしょうか。
緊張で体が強張ります。寝たままの姿勢で辺りを窺うと、バルコニーの窓が開け放たれていることに気が付きました。
そこには月を逆光にした二人の人影がありました。
咄嗟に球形結界を張りながら、その二人に向き合います。
そして、私は安堵の息を付きました。
月を逆光にしていてもなおはっきりと分かるほどの不機嫌が漏れ出ている叔父様と、同じく月を逆光にしていてもなぜだか美しさがあふれ出ている殿下が立っていたのです。
刺客ではないと気が抜けたものの、ふと疑問が湧きあがりました。
一体、どうしてこの二人が、ここに立っているのでしょう。
ここは、私の部屋なのですが??
夜も更けたこんな時間に殿下が王城を出ること自体、加えて一貴族の屋敷に現れること、それもバルコニーから現れることなどありえないことです。
どうやら幻覚を見ているようです。
こんな幻覚を見るなんて、きっと初めての舞踏会で知らぬ間に緊張し疲れていたのでしょう。ここまで疲れていたなんて、驚きです。早く寝て明日に備えなくてはいけません。
私は頭を振りながら、ベッドに戻ろうと踵を返しました。
背後からかけられた爽やかな声が静寂を破りました。
「おや、ここまで来た私を無視するなんて、相変わらずつれないね、シルヴィア。」
腕を取られて振り向かされていました。
残念ながら幻覚ではなかったようです。
今日の舞踏会で年頃のご令嬢の視線をくぎ付けにしていた華やかな美貌がすぐ近くにありました。
艶やかな金の髪が月の光を受けて煌めいています。
殿下は、舞踏会でご令嬢たちに振りまいていたあの笑顔を浮かべました。
幼いころにお傍近くにいた私にはこの笑顔は意味がないとご存じのはずなのに、一体、どういう意図があるのでしょう。
「殿下、今度はどういうおふざけなのです。」
ため息をつきそうになるのを抑えながら、尋ねてみました。魔法使いとしての直感は、やや、尋ねたくない思いがしていたのですが。
殿下は極上の笑みを浮かべ、その美貌を増します。
殿下がこの顔をなさる時はいいことがありません。
幼いころ、殿下のトランプの手札からジョーカーを選ぼうとしたとき、私の苦手な種類のハーブの入った紅茶を出されるとき、殿下は必ずこの笑顔を浮かべていました。
思わず殿下から離れようとしましたが、殿下は逆に私を引き寄せ抱き込みました。
瞬間、バルコニーの叔父様から肌に刺さるような険悪な魔力の波動を感じ、私は焦りました。
叔父様、私の部屋を壊さないでね?
私の部屋のドアを跡形もなく魔力で壊したことのある叔父様なら、機嫌次第で十分にあり得ます。
結界を張るべきか悩んでいると、驚愕すべきことに殿下はその波動を全く無視して、私をさらに強く抱きしめ、にこやかにさわやかに耳元へ言葉を落とされたのです。
「シルヴィア、あと半年でセドリックを落とせなかったら、」
セディの名を出されて、私は思わず顔を上げ殿下を見つめました。
強い眼差しが私を射抜きます。
そしてゆっくりと口が開かれ、それは告げられました。
「そのときは、君は僕の婚約者になってもらう。」
殿下は目を細めて言い切られました。
「もう、きみを甘やかしてはあげないよ。」
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