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第3章
予言を与えられた日(ダニエル)
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あいつの気配が遠のいていったのを感じながら、俺は守護師を振り返った。
守護師は、魔力を収め小さく溜息を吐いた。
珍しいことだ。
城で守護師の傍で勤め始めてから、どんなことがあっても守護師が溜息を吐いたのを見た記憶がなかった。
魔法使いだけでなく、貴族や役人の無理難題も彼は淡々といなしていた。
代わりに俺が憤ることは多々あったが。
やはり、守護師にとってあいつは特別なんだろう。
だから、俺は分からなかった。
先ほどのやり取りは守護師らしくなかった。
いつもの彼なら、あいつに対して反則技の笑顔を実に効果的に駆使して、ことを荒げずにあいつを丸め込んだはずだ。
一体、どうしてあそこまで一切を拒否したのだろう。
余裕がなさすぎる。
「いい加減、失礼なことを延々と考えるのはやめろ」
身体を貫き通すような声が俺の思考を遮った。
畏怖さえ感じさせる美貌がこちらを睨んでいた。
「どうして、あんな言い方をしたんです」
俺は答えを求めることにした。
彼は眉を微かに上げ、平然と答えた。
「単に、何があっても妥協はしないことを示しただけだ」
「いつもなら笑顔で――」
「確かに余裕がなかったのだ」
彼は珍しく言葉を遮って、横を向いた。銀の髪がサラリと揺れた。
「私の目の前で、シルヴィが命の危険にさらされることは耐えられない」
叔父ばか、と笑えない雰囲気がその口調にはあった。
俺が踏み込んでいいものではない雰囲気も感じた。
俺は肩をすくめて、別の答えを求めた。
こちらは俺が踏み込んでいい、いや、許されなくとも踏み込むつもりのものだ。
「貴方が死ぬようなことになれば、あいつは一生幸せになれないことは、分かっているんですか」
これだけは確認しなければならなかった。
守護師は目を閉じた。
沈黙が部屋に落ちた。
答えがもらえない俺は焦れた。
「セドリックが死ねば、あいつは死んだも同然になるだろう。
実際に、死んでしまうかもしれない。あいつにとってのセドリックは、あいつ自身だ。」
守護師は目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
俺は苛立ちを覚えた。
「だけど、貴方だって、あいつにとっては、あいつの魂の片割れなんだろう」
守護師は、あいつにとって魔法に関する師であり、父とも兄とも言える存在だ。
加えて人間を超えた魔力の持ち主同士、俺の分からない結びつきがこの二人には確かにある。
「こんなやり取りのまま貴方が逝ったら、いや、こんなやり取りがなくても――」
守護師は全てを見透かす瞳を開き、部屋の空気を支配するような魔力を乗せて声を出した。
「分かっている」
たった一言だった。
だが、その一言は俺の苛立ちを溶かした。
一言が真実だと信じられた。
「俺ぐらい貴方の傍につくことはできないんですか」
それなら、あいつも少しは気持ちが収まるだろう。
守護師はゆっくりと笑顔を浮かべた。
「お前をシルヴィの傍につけるのは、お前のためだ」
「は?」
あまりに予想外の言葉で、俺は声が出てしまった。
守護師はふわりと柔らかな銀の光を放ち、歌うように囁いた。
「私の予知が正しければ、お前は会場で、シルヴィアの真の力を体感することになるだろう」
――真の力
その言葉に俺は総毛立った。
次の瞬間、守護師への心配を忘れ去った自分を恥じた。
明るい笑い声が、魔力も畏怖も感じない純粋な笑い声が、部屋に響いた。
「私がお前の立場なら、恥すら感じないぞ」
あいつを思い起こさせる、何の計算もない、輝くような笑顔を向けられた。
だから…! その笑顔はさっき使えばよかっただろう…!
俺は熱くなった顔を手で覆い、横を向いた。
再び守護師の青空のような笑い声が部屋に響いた。
守護師は、魔力を収め小さく溜息を吐いた。
珍しいことだ。
城で守護師の傍で勤め始めてから、どんなことがあっても守護師が溜息を吐いたのを見た記憶がなかった。
魔法使いだけでなく、貴族や役人の無理難題も彼は淡々といなしていた。
代わりに俺が憤ることは多々あったが。
やはり、守護師にとってあいつは特別なんだろう。
だから、俺は分からなかった。
先ほどのやり取りは守護師らしくなかった。
いつもの彼なら、あいつに対して反則技の笑顔を実に効果的に駆使して、ことを荒げずにあいつを丸め込んだはずだ。
一体、どうしてあそこまで一切を拒否したのだろう。
余裕がなさすぎる。
「いい加減、失礼なことを延々と考えるのはやめろ」
身体を貫き通すような声が俺の思考を遮った。
畏怖さえ感じさせる美貌がこちらを睨んでいた。
「どうして、あんな言い方をしたんです」
俺は答えを求めることにした。
彼は眉を微かに上げ、平然と答えた。
「単に、何があっても妥協はしないことを示しただけだ」
「いつもなら笑顔で――」
「確かに余裕がなかったのだ」
彼は珍しく言葉を遮って、横を向いた。銀の髪がサラリと揺れた。
「私の目の前で、シルヴィが命の危険にさらされることは耐えられない」
叔父ばか、と笑えない雰囲気がその口調にはあった。
俺が踏み込んでいいものではない雰囲気も感じた。
俺は肩をすくめて、別の答えを求めた。
こちらは俺が踏み込んでいい、いや、許されなくとも踏み込むつもりのものだ。
「貴方が死ぬようなことになれば、あいつは一生幸せになれないことは、分かっているんですか」
これだけは確認しなければならなかった。
守護師は目を閉じた。
沈黙が部屋に落ちた。
答えがもらえない俺は焦れた。
「セドリックが死ねば、あいつは死んだも同然になるだろう。
実際に、死んでしまうかもしれない。あいつにとってのセドリックは、あいつ自身だ。」
守護師は目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
俺は苛立ちを覚えた。
「だけど、貴方だって、あいつにとっては、あいつの魂の片割れなんだろう」
守護師は、あいつにとって魔法に関する師であり、父とも兄とも言える存在だ。
加えて人間を超えた魔力の持ち主同士、俺の分からない結びつきがこの二人には確かにある。
「こんなやり取りのまま貴方が逝ったら、いや、こんなやり取りがなくても――」
守護師は全てを見透かす瞳を開き、部屋の空気を支配するような魔力を乗せて声を出した。
「分かっている」
たった一言だった。
だが、その一言は俺の苛立ちを溶かした。
一言が真実だと信じられた。
「俺ぐらい貴方の傍につくことはできないんですか」
それなら、あいつも少しは気持ちが収まるだろう。
守護師はゆっくりと笑顔を浮かべた。
「お前をシルヴィの傍につけるのは、お前のためだ」
「は?」
あまりに予想外の言葉で、俺は声が出てしまった。
守護師はふわりと柔らかな銀の光を放ち、歌うように囁いた。
「私の予知が正しければ、お前は会場で、シルヴィアの真の力を体感することになるだろう」
――真の力
その言葉に俺は総毛立った。
次の瞬間、守護師への心配を忘れ去った自分を恥じた。
明るい笑い声が、魔力も畏怖も感じない純粋な笑い声が、部屋に響いた。
「私がお前の立場なら、恥すら感じないぞ」
あいつを思い起こさせる、何の計算もない、輝くような笑顔を向けられた。
だから…! その笑顔はさっき使えばよかっただろう…!
俺は熱くなった顔を手で覆い、横を向いた。
再び守護師の青空のような笑い声が部屋に響いた。
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