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第3章
叔父様との対立
こんな日が来るなんて、夢にも思いませんでした。
私は、全く叔父様に賛同できず、叔父様を見据えていたのです。
◇
敵が王都に侵入して、一週間。
あれだけの魔力の持ち主なら、すぐにも居場所を割り出せるだろうという予想は見事に裏切られたのです。
気配も感じ取れないのです。
移動する必要がなく、もともと外からの干渉に対して結界のあるようなしっかりした隠れ家に籠っていると思われます。
それは恐らく国内の貴族が提供した可能性が高く、魔法使いの棟は、ただならぬ緊張と焦りに満ちていました。
何の手がかりも得られていませんが、できることをしっかりとこなすことが大切です。
今、お披露目の会での配置について叔父様が皆に指示を出す前に、先輩と私に意見を求めています。
トレントさんが叔父様の指示を受けて作った配置の案を見て、私は驚きました。
会場と城内を中心に、魔法使いの名が振り分けられていました。ダニエル先輩と私は会場の担当です。
ですが、叔父様の名前が見つからないのです。不測の事態に備えて執務室に待機するということでしょうか。
「皆には、もし赤い光の魔法使いと遭遇したら、直ちに殿下の近くへ移動するように伝えなさい」
嫌な予感が体を駆け抜けました。
私は予感の一つ前の事柄を言葉に出しました。
「敵の魔法使いは放置するのですか?」
叔父様にはもう私の考えは届いているのでしょう。
感情を乗せない眼差しを私に向けました。叔父様のこのような眼差しは初めて見ます。
美しい彫像を見つめている心地がしました。
「放置はしない。感知すれば私が向かう」
部屋に緊張が走りました。
隣で先輩の身体が震え、拳を握ったのが見えました。
私は、凍りつきそうなほど表情を消した叔父様を見つめ返しました。
「私も向かいます」
隣から声が続きました。
「俺もだ!」
叔父様は全く表情を変えません。
「あの敵は、私でようやく相手になるといったところだろう。無駄に戦力を失う訳にはいかない」
「多勢で相手をすれば、倒せる可能性は上がるはずです」
「皆の魔力なら一撃で倒されて終わりだろう」
叔父様は容赦なく言い切りました。
そうかもしれません。ですが、私は納得できませんでした。
考えたくもありませんが、戦略として考えなくてはいけないことを叔父様にぶつけます。
「叔父様が倒されれば、結局、皆さんで相手をすることになるのです。
それなら叔父様とともに戦った方がよいと思います」
「私なら敵を弱らせることなら、必ずできるはずだ」
「「必ず」など、作戦を立てるときに排除すべきことだろう」
先輩が加勢してくれます。
「では、言い方を変えよう。私ならかなりの確率で敵を弱らせることができる」
叔父様は淡々と返します。
「私やダニエル先輩が付いていれば、さらに確率を上げられます」
「お前たちは、もしもの場合の砦だ」
「他の皆さんが勢ぞろいするなら、必要ないでしょう。「もしもの場合」を減らすことに注力するべきです」
叔父様は、眩しい程に銀の魔力を立ち上らせたのです。
「シルヴィア、お前をあの敵に向かわせることはしない。絶対に」
清らかな魔力は強く激しく、肌に突き刺さるようです。叔父様の銀の髪は魔力を受けて輝きながら、舞い上がっています。
こんな叔父様は見たことがありません。
いつも私を包み込むように見守ってくださった叔父様からこんな魔力を受けることに、私は討たれた心地でした。
「なぜですか。私の魔力は叔父様の次に――」
口にした途端、私は自分で答えが分かりました。
叔父様の机の端に置かれている黒い木の箱を見ました。私の作った封印石はまだ叔父様の手元にあるのです。
私は自分の手首を見ました。叔父様の作った強固な守護の腕輪が揺れています。最近、毎日、叔父様は私が腕輪を嵌めているかを確認していました。
私は全く信頼されていないのです。
大きな穴が開いた思いがしました。
「せめて…」
声を絞り出しました。今は戦略を考える時です。私の気持ちは関係ありません。
「せめて、先輩は叔父様の傍で――」
「ダニエルは、お前の護衛に必要だ」
目の前で扉を閉められた気がしました。
目を閉じても眩しい銀の光は、私に護衛をつけるなどおかしいと訴えることすら拒絶しています。
潰されそうな失意の中、ゆっくりと考えが形をとりました。
――叔父様、ですが、これぐらいは妥協してください。
私は自分の魔力が立ち上るのを感じました。
「当日、私は朝から殿下の傍に付かせて頂きます」
叔父様に初めて動きが見られました。
目が微かに見開かれたのです。
敵が仕事を成し遂げることを最優先にするなら、真っ先に殿下の傍に転移してくる可能性が高いでしょう。
殿下の傍についていれば、敵と遭遇する可能性が残されます。
転移してきた叔父様と交代する、その一瞬だけでも、叔父様に加勢する機会が得られるのです。
――ほんの一瞬です。 その後は殿下を会場に転移させ、私の全てでお守りします。
ですから、この点を譲る気はありません。
私は決意を固めて、叔父様の濃い青の瞳を見据えました。
白金の光が強さを増し、銀の光と競わんばかりです。
「おい…」
先輩の心配そうな声がポツリと落とされました。
私は目を逸らし魔力を収めて、配置図の紙を取り上げました。
「皆さんに、伝えてきます」
叔父様は何も言いませんでした。
私も叔父様を見ることはなく、部屋から出ました。
私の要求は拒絶されませんでした。
それでも私の足取りは重いものでした。
私は、全く叔父様に賛同できず、叔父様を見据えていたのです。
◇
敵が王都に侵入して、一週間。
あれだけの魔力の持ち主なら、すぐにも居場所を割り出せるだろうという予想は見事に裏切られたのです。
気配も感じ取れないのです。
移動する必要がなく、もともと外からの干渉に対して結界のあるようなしっかりした隠れ家に籠っていると思われます。
それは恐らく国内の貴族が提供した可能性が高く、魔法使いの棟は、ただならぬ緊張と焦りに満ちていました。
何の手がかりも得られていませんが、できることをしっかりとこなすことが大切です。
今、お披露目の会での配置について叔父様が皆に指示を出す前に、先輩と私に意見を求めています。
トレントさんが叔父様の指示を受けて作った配置の案を見て、私は驚きました。
会場と城内を中心に、魔法使いの名が振り分けられていました。ダニエル先輩と私は会場の担当です。
ですが、叔父様の名前が見つからないのです。不測の事態に備えて執務室に待機するということでしょうか。
「皆には、もし赤い光の魔法使いと遭遇したら、直ちに殿下の近くへ移動するように伝えなさい」
嫌な予感が体を駆け抜けました。
私は予感の一つ前の事柄を言葉に出しました。
「敵の魔法使いは放置するのですか?」
叔父様にはもう私の考えは届いているのでしょう。
感情を乗せない眼差しを私に向けました。叔父様のこのような眼差しは初めて見ます。
美しい彫像を見つめている心地がしました。
「放置はしない。感知すれば私が向かう」
部屋に緊張が走りました。
隣で先輩の身体が震え、拳を握ったのが見えました。
私は、凍りつきそうなほど表情を消した叔父様を見つめ返しました。
「私も向かいます」
隣から声が続きました。
「俺もだ!」
叔父様は全く表情を変えません。
「あの敵は、私でようやく相手になるといったところだろう。無駄に戦力を失う訳にはいかない」
「多勢で相手をすれば、倒せる可能性は上がるはずです」
「皆の魔力なら一撃で倒されて終わりだろう」
叔父様は容赦なく言い切りました。
そうかもしれません。ですが、私は納得できませんでした。
考えたくもありませんが、戦略として考えなくてはいけないことを叔父様にぶつけます。
「叔父様が倒されれば、結局、皆さんで相手をすることになるのです。
それなら叔父様とともに戦った方がよいと思います」
「私なら敵を弱らせることなら、必ずできるはずだ」
「「必ず」など、作戦を立てるときに排除すべきことだろう」
先輩が加勢してくれます。
「では、言い方を変えよう。私ならかなりの確率で敵を弱らせることができる」
叔父様は淡々と返します。
「私やダニエル先輩が付いていれば、さらに確率を上げられます」
「お前たちは、もしもの場合の砦だ」
「他の皆さんが勢ぞろいするなら、必要ないでしょう。「もしもの場合」を減らすことに注力するべきです」
叔父様は、眩しい程に銀の魔力を立ち上らせたのです。
「シルヴィア、お前をあの敵に向かわせることはしない。絶対に」
清らかな魔力は強く激しく、肌に突き刺さるようです。叔父様の銀の髪は魔力を受けて輝きながら、舞い上がっています。
こんな叔父様は見たことがありません。
いつも私を包み込むように見守ってくださった叔父様からこんな魔力を受けることに、私は討たれた心地でした。
「なぜですか。私の魔力は叔父様の次に――」
口にした途端、私は自分で答えが分かりました。
叔父様の机の端に置かれている黒い木の箱を見ました。私の作った封印石はまだ叔父様の手元にあるのです。
私は自分の手首を見ました。叔父様の作った強固な守護の腕輪が揺れています。最近、毎日、叔父様は私が腕輪を嵌めているかを確認していました。
私は全く信頼されていないのです。
大きな穴が開いた思いがしました。
「せめて…」
声を絞り出しました。今は戦略を考える時です。私の気持ちは関係ありません。
「せめて、先輩は叔父様の傍で――」
「ダニエルは、お前の護衛に必要だ」
目の前で扉を閉められた気がしました。
目を閉じても眩しい銀の光は、私に護衛をつけるなどおかしいと訴えることすら拒絶しています。
潰されそうな失意の中、ゆっくりと考えが形をとりました。
――叔父様、ですが、これぐらいは妥協してください。
私は自分の魔力が立ち上るのを感じました。
「当日、私は朝から殿下の傍に付かせて頂きます」
叔父様に初めて動きが見られました。
目が微かに見開かれたのです。
敵が仕事を成し遂げることを最優先にするなら、真っ先に殿下の傍に転移してくる可能性が高いでしょう。
殿下の傍についていれば、敵と遭遇する可能性が残されます。
転移してきた叔父様と交代する、その一瞬だけでも、叔父様に加勢する機会が得られるのです。
――ほんの一瞬です。 その後は殿下を会場に転移させ、私の全てでお守りします。
ですから、この点を譲る気はありません。
私は決意を固めて、叔父様の濃い青の瞳を見据えました。
白金の光が強さを増し、銀の光と競わんばかりです。
「おい…」
先輩の心配そうな声がポツリと落とされました。
私は目を逸らし魔力を収めて、配置図の紙を取り上げました。
「皆さんに、伝えてきます」
叔父様は何も言いませんでした。
私も叔父様を見ることはなく、部屋から出ました。
私の要求は拒絶されませんでした。
それでも私の足取りは重いものでした。
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