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第3章
前夜3
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石鹸とお日様の匂いのするシーツの心地よさを感じながらも、私は眠ることが出来ませんでした。
思いが、願いが消せないのです。
やはり明日に心残りを持ち越したくはありません。
私は印を通してセディの位置を確かめました。近くですのですぐ分かります。
さらに私の魔力を通してセディがまだ起きて動いていることも分かりました。
寝ていないのなら、やはり会いたいです。
転移しました。
印を頼りにした転移は初めてでしたが、目標に自分の魔力があるため隣の部屋に行くような感覚です。
セディはちょうどお風呂上がりだったようで、髪をタオルで拭いている形で固まっていました。腕輪がぼんやりとした光を放っています。
私は慌てて背中を向けました。思念で先に知らせておけば良かったです。
「ごめんなさい。どうしても、少しだけでも、顔を見たかったの」
「ありがとう。少しだけ待ってくれるかな」
掠れた声で返事をされました。風邪でしょうか。
後で治癒の魔力を送り込むことを心に決めました。
背後で慌ただしく衣擦れの音がします。クローゼットを開けている音もします。
何やら申し訳なくて、もうこのまま話を始めました。
「セディ、後4日で誕生日ね」
「覚えていてくれたんだ。もう自分でも明日までのことしか考えられなかったよ」
苦笑いを含んだ今のセディの声は掠れていませんでした。
慌ただしい気配は止みました。
ふわりと私の肩に布がかけられました。ガウンです。
「あの、ありがとう」
私は頬が熱くなったのを感じました。寝間着のままで転移していたのです。
慌ててガウンを羽織り、息を整えてからセディに振り向きました。
艶やかな茶色の髪は、もう乾いていました。
ですが、私の視線はセディの薄っすら染まった頬に行ってしまいます。
私は恥ずかしさのあまり飛びそうになる思考を取り戻して、話を続けました。
「あの、パーティは開かないと聞いたのだけど、誕生日にはお祝いに行ってもいい?」
「こんな時期だから、パーティはしないことにしたんだ。もちろんシルヴィにお祝いしてもらえるなら、うれしいよ」
セディは整った顔にわずかに明るい表情を浮かべます。
「セディもパーティはしないのね。それなら、ぜひとも、セディのように私もプレゼントを部屋に持って行ってお祝いしたいわ」
私の誕生日に、疲れを圧してセディが部屋に来てくれたことは、思い出すだけでもうれしいものでした。
…あら? あのときも寝間着だけでしたが、セディは特に何も…
セディのよく透る声が私を今に引き戻しました。
「ありがとう。でも、シルヴィはアリスの結婚披露宴に出発するのではなかったかい?」
「転移で行く予定だから、大丈夫です。セディのお祝いは絶対にしたいのです」
そうです。転移した理由はこれを伝えたかったからです。
私はセディに抱き着きました。
セディの身体が強張り、鼓動が速まるのを感じました。
それでも私は腕を緩めませんでした。
「セディ、明日は絶対に生き延びて」
セディの息を呑む音が聞こえました。
私は印を通して魔力を送り込みながら、伝えました。
「セディ、絶対に誕生日のお祝いをしましょう」
セディは額を私の額に合わせて、囁きました。
「そうだね。絶対に二人でお祝いをしよう」
どうしても欲しかった約束をもらえました。
これで、明日を迎えられます。
私はゆっくりと笑みが顔に広がるのを感じました。
「遅くにごめんなさい。それではまた明日」
セディは、見惚れてしまうほどの綺麗な笑顔を返してくれました。
私の大好きなその笑顔に思わず転移を止めてしまうと、セディの瞳がいたずらを秘めた、そして熱いものを秘めたものに変わりました。
「シルヴィ、今度、夜に僕の部屋に来たときは、以前とは違う意味で離さないよ。
覚悟しておくれ」
真っ赤になった私は慌てて転移しました。転移の間際、クスリと笑うセディの声が聞こえた気がしました。
シーツに横になっても私の鼓動は収まらず、またもや眠りから遠ざかってしまいました。
諦めた私は、自分に暗示をかけて眠りに落ちました。
思いが、願いが消せないのです。
やはり明日に心残りを持ち越したくはありません。
私は印を通してセディの位置を確かめました。近くですのですぐ分かります。
さらに私の魔力を通してセディがまだ起きて動いていることも分かりました。
寝ていないのなら、やはり会いたいです。
転移しました。
印を頼りにした転移は初めてでしたが、目標に自分の魔力があるため隣の部屋に行くような感覚です。
セディはちょうどお風呂上がりだったようで、髪をタオルで拭いている形で固まっていました。腕輪がぼんやりとした光を放っています。
私は慌てて背中を向けました。思念で先に知らせておけば良かったです。
「ごめんなさい。どうしても、少しだけでも、顔を見たかったの」
「ありがとう。少しだけ待ってくれるかな」
掠れた声で返事をされました。風邪でしょうか。
後で治癒の魔力を送り込むことを心に決めました。
背後で慌ただしく衣擦れの音がします。クローゼットを開けている音もします。
何やら申し訳なくて、もうこのまま話を始めました。
「セディ、後4日で誕生日ね」
「覚えていてくれたんだ。もう自分でも明日までのことしか考えられなかったよ」
苦笑いを含んだ今のセディの声は掠れていませんでした。
慌ただしい気配は止みました。
ふわりと私の肩に布がかけられました。ガウンです。
「あの、ありがとう」
私は頬が熱くなったのを感じました。寝間着のままで転移していたのです。
慌ててガウンを羽織り、息を整えてからセディに振り向きました。
艶やかな茶色の髪は、もう乾いていました。
ですが、私の視線はセディの薄っすら染まった頬に行ってしまいます。
私は恥ずかしさのあまり飛びそうになる思考を取り戻して、話を続けました。
「あの、パーティは開かないと聞いたのだけど、誕生日にはお祝いに行ってもいい?」
「こんな時期だから、パーティはしないことにしたんだ。もちろんシルヴィにお祝いしてもらえるなら、うれしいよ」
セディは整った顔にわずかに明るい表情を浮かべます。
「セディもパーティはしないのね。それなら、ぜひとも、セディのように私もプレゼントを部屋に持って行ってお祝いしたいわ」
私の誕生日に、疲れを圧してセディが部屋に来てくれたことは、思い出すだけでもうれしいものでした。
…あら? あのときも寝間着だけでしたが、セディは特に何も…
セディのよく透る声が私を今に引き戻しました。
「ありがとう。でも、シルヴィはアリスの結婚披露宴に出発するのではなかったかい?」
「転移で行く予定だから、大丈夫です。セディのお祝いは絶対にしたいのです」
そうです。転移した理由はこれを伝えたかったからです。
私はセディに抱き着きました。
セディの身体が強張り、鼓動が速まるのを感じました。
それでも私は腕を緩めませんでした。
「セディ、明日は絶対に生き延びて」
セディの息を呑む音が聞こえました。
私は印を通して魔力を送り込みながら、伝えました。
「セディ、絶対に誕生日のお祝いをしましょう」
セディは額を私の額に合わせて、囁きました。
「そうだね。絶対に二人でお祝いをしよう」
どうしても欲しかった約束をもらえました。
これで、明日を迎えられます。
私はゆっくりと笑みが顔に広がるのを感じました。
「遅くにごめんなさい。それではまた明日」
セディは、見惚れてしまうほどの綺麗な笑顔を返してくれました。
私の大好きなその笑顔に思わず転移を止めてしまうと、セディの瞳がいたずらを秘めた、そして熱いものを秘めたものに変わりました。
「シルヴィ、今度、夜に僕の部屋に来たときは、以前とは違う意味で離さないよ。
覚悟しておくれ」
真っ赤になった私は慌てて転移しました。転移の間際、クスリと笑うセディの声が聞こえた気がしました。
シーツに横になっても私の鼓動は収まらず、またもや眠りから遠ざかってしまいました。
諦めた私は、自分に暗示をかけて眠りに落ちました。
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