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19.領地問題(ソフィアside)
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「くそ!セルジュークめ!」
「あいつ等のせいだ!父上!抗議してやりましょう!!」
「そうしたいのは山々だが……セルジュークの倅は国王陛下の覚えがめでたい。下手に抗議すれば、こちらが悪くなる」
「くっ!」
「それに、奴らが整備した道だ。文句が言えん!」
「ああ!忌々しい!」
「くそっ!」
父と兄がアルスラーン様を罵る言葉ばかりが耳に入ってきます。
何故、そこまで嫌うのでしょう?私には分かりませんでした。
後から母に聞いたのですが、ハルト伯爵領とセルジューク辺境伯領の交流が途絶えたせいだと。
交流が途絶えた結果、今までセルジューク辺境伯領から受けていた恩恵が受けられなくなったそうなのです。
「それだけなら良かったんだけど……」
「まだ何かあるのですか?」
「セルジューク辺境伯が自領の湿地帯を数年前に整備したの。莫大な費用をつぎ込んでね」
「聞いたことがあります」
当時、兄がそれを心底馬鹿にしたように語っていたのを覚えています。
「金の無駄使いだ」と。
「物好きな男だ。あれが次の辺境伯だとはお笑いだ」「道路整備して、何になる?しかも多額の費用を使ってまでやる事業か?」と、嘲笑していたのを今でもはっきり覚えています。
友人達と笑いのネタにしていたことも。
「その道路整備が無駄じゃなかったのよ」
「え?」
「それがね、整備した道路のお陰でセルジューク領は他国との貿易が盛んになったのよ」
「……え?どういうことです?」
意味が分かりません。
どうしてそれで交流が盛んになるのでしょう? 私の疑問に母は答えてくれました。
「セルジューク辺境伯領は他国と国境を接しているわ。湿地帯を整備することで、他国との貿易がしやすくなったの。今では交易の中心になっているわ。商人達も挙ってセルジューク辺境伯領にやってくるの」
溜息をつき、母は「羨ましい」と呟きました。
「あの道路整備は無駄じゃなかったの。寧ろ、大成功だったのよ。セルジューク辺境伯領は潤ったわ。でも、その利益がうちに回ってくることはなかった。当然よね。だってもう関係ないんだもの。ただ領地が隣り合っているだけの他人。昔、ちょっと交流していただけの顔見知り程度よ」
「え?」
「うちの伯爵家のセルジューク辺境伯家と交流があったのは、金鉱山の管理を一緒にしていたから。それが無くなったら交流なんてなくなるわ。個人的な付き合いなんてしていなんだもの」
「……」
「道路整備のお陰でセルジューク辺境伯家は潤ったわ。でも、うちは違うわ」
「お母様……」
「ここだけの話し、セルジューク辺境伯家との共同管理をしている時が一番良かったのかもしれないわ。金鉱山の利権は手に入ったのに、鉱山の作業員からクレームが増えているの。作業員が作業中に怪我をしたとか、事故にあったとか……そんな報告ばかりなのよ。今までそういったことはセルジューク辺境伯家に任せていたのがいけなかったのかもしれないわ。うちの作業員の管理はうちの仕事だったのに……」
「え?でも、それはセルジューク辺境伯家のお仕事だったのでは?」
「違うわよ。勿論、セルジューク辺境伯家で雇っている者達は彼らが管理するわ。でもね、うちで雇っている金鉱夫達を管理する必要はなかったの。お義父様同士が仲良かったでしょう?結構、なあなあでやってたのよね。今じゃあ、金鉱夫達から苦情が凄いの。あぁ……共同管理を持続させていたら……こんなことには……」
母はそう言って、深い溜息を吐き出しました。
なんだか途轍もなく大変なことになっているのは分かりました。アルスラーン様の領地が繁栄していることも。
実家に帰るたびに、父と兄の怒声を聞く羽目になり、母の愚痴もその都度聞く羽目になりました。
それでも実家に帰るのを止められなかったのは、嫁ぎ先の公爵家に居場所がないからでした。
あの時も、実家に帰省していたのですが……
「あいつ等のせいだ!父上!抗議してやりましょう!!」
「そうしたいのは山々だが……セルジュークの倅は国王陛下の覚えがめでたい。下手に抗議すれば、こちらが悪くなる」
「くっ!」
「それに、奴らが整備した道だ。文句が言えん!」
「ああ!忌々しい!」
「くそっ!」
父と兄がアルスラーン様を罵る言葉ばかりが耳に入ってきます。
何故、そこまで嫌うのでしょう?私には分かりませんでした。
後から母に聞いたのですが、ハルト伯爵領とセルジューク辺境伯領の交流が途絶えたせいだと。
交流が途絶えた結果、今までセルジューク辺境伯領から受けていた恩恵が受けられなくなったそうなのです。
「それだけなら良かったんだけど……」
「まだ何かあるのですか?」
「セルジューク辺境伯が自領の湿地帯を数年前に整備したの。莫大な費用をつぎ込んでね」
「聞いたことがあります」
当時、兄がそれを心底馬鹿にしたように語っていたのを覚えています。
「金の無駄使いだ」と。
「物好きな男だ。あれが次の辺境伯だとはお笑いだ」「道路整備して、何になる?しかも多額の費用を使ってまでやる事業か?」と、嘲笑していたのを今でもはっきり覚えています。
友人達と笑いのネタにしていたことも。
「その道路整備が無駄じゃなかったのよ」
「え?」
「それがね、整備した道路のお陰でセルジューク領は他国との貿易が盛んになったのよ」
「……え?どういうことです?」
意味が分かりません。
どうしてそれで交流が盛んになるのでしょう? 私の疑問に母は答えてくれました。
「セルジューク辺境伯領は他国と国境を接しているわ。湿地帯を整備することで、他国との貿易がしやすくなったの。今では交易の中心になっているわ。商人達も挙ってセルジューク辺境伯領にやってくるの」
溜息をつき、母は「羨ましい」と呟きました。
「あの道路整備は無駄じゃなかったの。寧ろ、大成功だったのよ。セルジューク辺境伯領は潤ったわ。でも、その利益がうちに回ってくることはなかった。当然よね。だってもう関係ないんだもの。ただ領地が隣り合っているだけの他人。昔、ちょっと交流していただけの顔見知り程度よ」
「え?」
「うちの伯爵家のセルジューク辺境伯家と交流があったのは、金鉱山の管理を一緒にしていたから。それが無くなったら交流なんてなくなるわ。個人的な付き合いなんてしていなんだもの」
「……」
「道路整備のお陰でセルジューク辺境伯家は潤ったわ。でも、うちは違うわ」
「お母様……」
「ここだけの話し、セルジューク辺境伯家との共同管理をしている時が一番良かったのかもしれないわ。金鉱山の利権は手に入ったのに、鉱山の作業員からクレームが増えているの。作業員が作業中に怪我をしたとか、事故にあったとか……そんな報告ばかりなのよ。今までそういったことはセルジューク辺境伯家に任せていたのがいけなかったのかもしれないわ。うちの作業員の管理はうちの仕事だったのに……」
「え?でも、それはセルジューク辺境伯家のお仕事だったのでは?」
「違うわよ。勿論、セルジューク辺境伯家で雇っている者達は彼らが管理するわ。でもね、うちで雇っている金鉱夫達を管理する必要はなかったの。お義父様同士が仲良かったでしょう?結構、なあなあでやってたのよね。今じゃあ、金鉱夫達から苦情が凄いの。あぁ……共同管理を持続させていたら……こんなことには……」
母はそう言って、深い溜息を吐き出しました。
なんだか途轍もなく大変なことになっているのは分かりました。アルスラーン様の領地が繁栄していることも。
実家に帰るたびに、父と兄の怒声を聞く羽目になり、母の愚痴もその都度聞く羽目になりました。
それでも実家に帰るのを止められなかったのは、嫁ぎ先の公爵家に居場所がないからでした。
あの時も、実家に帰省していたのですが……
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