婚約破棄された公爵令嬢は真の聖女でした ～偽りの妹を追放し、冷徹騎士団長に永遠を誓う～

第21話: ガイアの告白

第21話: ガイアの告白

式典の喧騒が収まった夜、王宮の庭園は静寂に包まれていた。

月明かりが大理石の道を銀色に染め、薔薇の香りが優しく漂う。  
かつてアプリリアとルキノがよく散歩した場所だが、今夜は違う。

アプリリアは一人でベンチに座り、今日の出来事を振り返っていた。  
エテルナの暴露。  
ヴェゼルの没落。  
王宮のすべてが、自分の味方になった。

だが、心のどこかで、まだ小さな棘が残っていた。

ルキノの後悔の視線。  
あの人は、本当に私を愛していたのだろうか。

足音が近づいてきた。

「――ここにいたか」

ガイアだった。  
銀髪が月光に輝き、黒い騎士服のまま静かに立つ。  
いつもより、少し緊張した様子。

アプリリアは微笑んで立ち上がった。

「ガイア。  
今日は、本当にありがとう。  
あなたがいてくれたから、強くなれた」

ガイアはアプリリアの前に立ち、珍しく視線を逸らした。

「……お前が、強いからだ」

短い言葉。  
だが、その声は低く、熱を帯びていた。

二人は自然と、庭園の奥へ歩き始めた。

噴水のそばで、立ち止まる。

水音が、静かに響く。

ガイアが、ゆっくりと口を開いた。

「アプリリア。  
俺は……言葉が、下手だ。  
剣を振るうことしか、知らなかった」

アプリリアは、ガイアの横顔を見つめた。

「そんなことないわ。  
ガイアの言葉は、いつも心に届く」

ガイアが、アプリリアに向き直った。

青い瞳が、まっすぐにアプリリアを捉える。

「辺境で、お前と出会ってから……  
俺の人生が変わった。  
家族を失って、空っぽだった心に、  
光が戻った」

アプリリアの胸が、熱くなった。

「ガイア……」

「戦場で、お前の光を見た時、  
守りたいと思った。  
お前が笑う顔を、ずっと見ていたいと思った」

ガイアが、一歩近づく。

「野営の夜、キスした時……  
もう、抑えられなかった」

アプリリアの頰が、赤く染まる。

ガイアが、両手でアプリリアの頰を包んだ。

温かい。

「アプリリア。  
俺は、お前を愛している。  
聖女としてじゃなく、  
一人の女として、  
アプリリアとして」

その言葉に、アプリリアの目から涙がこぼれた。

「ガイア……私もよ。  
あなたに出会えて、  
王宮で失ったものを、全部取り戻せた気がする」

ガイアの瞳が、優しく細められる。

「俺のそばに、いてくれ。  
ずっと」

アプリリアは、頷いた。

「ええ……ずっと」

ガイアが、ゆっくりと顔を近づけた。

唇が、重なる。

最初は優しく、触れるだけ。

やがて、深く。

ガイアの腕が、アプリリアの腰を抱き寄せる。

アプリリアの手が、ガイアの胸に置かれる。

月光が、二人の影を一つに重ねる。

薔薇の香りと、水音。

甘い、長いキス。

息が混じり、心臓の音が聞こえるほど近く。

離れた時、二人は額を合わせたまま。

ガイアの声が、囁く。

「お前は、俺の光だ」

アプリリアが、涙を浮かべて笑う。

「あなたは、私の剣よ。  
守ってくれて、支えてくれて……  
大好き」

ガイアが、再びキスをする。

今度は、頰に、額に、優しく何度も。

二人はベンチに座り、手を繋いだまま月を見上げた。

「王宮でのことは、もう終わったな」

ガイアの言葉に、アプリリアは頷く。

「ええ。  
エテルナのことは、追放で決着がついた。  
ルキノも……自分の過ちと向き合うしかない」

ガイアが、アプリリアの肩を抱いた。

「これからは、俺とお前で、  
新しい道を歩こう」

アプリリアは、ガイアの胸に頭を預けた。

「一緒に、領地をさらに豊かにして、  
王国を守って……  
そして、いつか家族を持って」

ガイアの耳が、赤くなる。

「……家族、か。  
いいな、それ」

二人は、くすりと笑い合った。

庭園の風が、優しく吹く。

甘い夜。

ガイアの告白は、  
アプリリアの心を完全に満たした。

ルキノの影は、もうない。

エテルナの嫉妬も、遠い過去。

今は、ただガイアの温もりだけ。

二人は、夜遅くまで語らい、  
何度もキスを交わした。

詳細に、甘く。

アプリリアの頰を撫で、  
髪を梳き、  
耳元で愛を囁く。

読者のキュンが、最大に。

王宮の庭園は、  
二人の恋の証人となった。

告白の夜は、  
永遠に忘れられないものになった。

明日からは、また新しい日々。

だが、今はこの瞬間を、  
ただ味わう。

ガイアの腕の中で、  
アプリリアは幸せに浸った。

愛は、確かなものになった。