悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

文字の大きさ
53 / 55

52.婚約者から

しおりを挟む
父親との最後の会話の後ヒューゴ様は何か重荷が降りたような顔をしていた。

漸く本当の意味で父親の呪縛が外れたのかもしれない。
(少しでも彼の心の傷が癒えたのなら…良かった本当に)


今までの一連の事件は真犯人が捕まり本当に全てが終息し久しぶりの平穏な日々を送っている。
そんな私の側には当然のようにヒューゴ様がいてすっかりこのクレマー家に馴染んで商人として修行中だ。

父曰くなかなか腕が良いとの事、彼は頭が良いし頭の回転も早い。
全容を理解し何度か成功を経験すればあっという間に凄腕の商人になるだろう。


「どうですか?商人の仕事は」
「とてもやり甲斐があって楽しいよ」
頬をほんのり赤く染めながら興奮気味に言う姿はどこか幼く見えた。

もしかしたら褒めてもらえなかった認めてもらえなかった幼少期の分を今、少しでも埋めようとしているのかもしれない。

本人はきっと無自覚だろう。

けれどそれでいい、わざわざ指摘する程の事でもない。

「今度は私も同行致しますね」
「っ!あぁ!一緒にやろう!」
約束をして微笑み合った。





そうして少しずつ2人だけで仕事をするようになりそれにも慣れてきた頃。


「イヴァ」
「はいヒューゴ様」



「俺は君を誰よりも愛してる」
「ふふふっ私も愛しておりますわ」



「だからどうか…俺と結婚してほしい」
「…はい喜んでっ」



私達は婚約者から夫婦となる為に行動を始めた。
まずは私の両親に正式に結婚する事を伝えそれから結婚式の準備も進める。


式場の予約、招待客のリスト化、料理のメニュー、ドレスとタキシード選びなどなど。


(た、大変過ぎる…結婚式の準備ってこんなに大変なのね)
疲労困憊になりながらも1つ1つ片付けていった。

「イヴァ…大丈夫か?」
「ヒューゴ様も…顔色がよろしくないですわ」
お互いげっそりした顔を見合わせる。
そっと頬を触れられてピクリと体が跳ねた。


「少し、休もう。

俺達は頑張ってるからな」
いつもならば根を詰めるのはヒューゴ様の方でそれを止めるのが私だったけど今回は逆になっている。
「そう…ですね」

私達は早めに切り上げて泥のように眠り次の日のお昼近くまで眠ってしまった。

「だいぶ寝過ごしてしまいました…」
「久しぶりにぐっすり寝たな」
2人共ある程度寝不足が解消されて顔色が良くなっていて安心する。


体力が回復したのでドレス選びに向かった。


「やっぱり私にプリンセスラインは似合いませんね」
「そんな事はないぞ?だがそうだな俺としては、このエンパイアライン?というのがよく似合うと思う」

彼が指差したドレスはとても綺麗で似合うと言われても本当に自分に似合うのか些か疑問である。

「こ、こんな素敵なドレスが私に?」
「絶対に似合う!」

ヒューゴ様の押しに負けて私はそのドレスを試着してみる事にした。


「ど、どうでしょうか」
「…とても、とてもよく似合っている」

何の裏もない賞賛の言葉に照れてしまう。
「ん?色も選べるようだぞ」
「えっウェディングドレスなら白…ホワイト、オフホワイト、アイボリーですかなるほど白にも種類があるんですね」

(なんか今更だけど現代日本の結婚式とそんな違い無さそう…流石ファンタジー世界という事にしときましょう)


「イヴァはホワイトが1番似合いそうだ」
「そうですね」

ホワイトのエンパイアラインドレスを注文しに店員さんと話すとフリルやレースなど装飾を増やせるらしい。

「それなら…」





ドレスを選び終わりヒューゴ様のタキシードも選んで私達は帰路に着いた。




後もう少しで結婚式だ。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました

ほーみ
恋愛
 王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。  貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。 「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」  会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

婚約破棄?はい、どうぞお好きに!悪役令嬢は忙しいんです

ほーみ
恋愛
 王国アスティリア最大の劇場──もとい、王立学園の大講堂にて。  本日上演されるのは、わたくしリリアーナ・ヴァレンティアを断罪する、王太子殿下主催の茶番劇である。  壇上には、舞台の主役を気取った王太子アレクシス。その隣には、純白のドレスをひらつかせた侯爵令嬢エリーナ。  そして観客席には、好奇心で目を輝かせる学生たち。ざわめき、ひそひそ声、侮蔑の視線。  ふふ……完璧な舞台準備ね。 「リリアーナ・ヴァレンティア! そなたの悪行はすでに暴かれた!」  王太子の声が響く。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの
恋愛
「失礼いたしますわ」――断罪の広場で令嬢が告げたのは、たった一言の沈黙だった。 侯爵令嬢レオノーラ=ヴァン=エーデルハイトは、“涙の聖女”によって悪役とされ、王太子に婚約を破棄され、すべてを失った。だが彼女は泣かない。反論しない。赦しも求めない。ただ静かに、矛盾なき言葉と香りの力で、歪められた真実と制度の綻びに向き合っていく。 「誰にも属さず、誰も裁かず、それでもわたくしは、生きてまいりますわ」 これは、断罪劇という筋書きを拒んだ“悪役令嬢”が、沈黙と香りで“未来”という舞台を歩んだ、静かなる反抗と再生の物語。

処理中です...