54 / 55
53.悪役令息(冤罪)が婿に来た 終
しおりを挟む
天気は雲1つない晴れ、雰囲気は緊張混じりでありつつも穏やかだ。
(前世の事全て思い出してる訳じゃないけど結婚した事も結婚式をやった事も、なかったと思う)
1番記憶に残っているのは学生の時で前世は成人したかどうか分からない。
「イヴァ」
「お母様!お父様!」
控え室に両親が来てくれた。
ウェディングドレスに身を包んでいる私に2人共涙ぐんでいる。
「イヴァ、とても綺麗よ」
「とうとう娘が結婚を…うぅ」
今まで大変な事も苦しい事もあったけれどそれと同じぐらい楽しい事も幸せな事もあった。
もし何か違えば目の前にいる両親は悪役のような存在になっていたかもしれなくてそれは私も同じ。
私が前世の記憶を思い出した理由は分からないままだがさして大きな問題じゃないのかも。
「お母様お父様…ここまで育ててくれて本当にありがとうございます。
ふふふっそんな顔なさらないで結婚してもこの家にいるんですから」
「そうなんだけれどね」
「分かってはいるんだが、それはそれでこれはこれだ」
両親を話していると式場のスタッフさんに呼ばれる。
とうとう結婚式が始まるのだ。
お母様とは別れて扉の前でお父様と腕を組み背筋を伸ばす。
「イヴァ…幸せになりなさい。それだけが私とお母様の願いだよ」
「っ!…はいっ」
扉が開いた。
皆がいる。
お母様が、ミラが、オーウェン様が、レイラ様が、アンドレア王太子殿下が、参列してくれている
お父様と共に真っ直ぐ歩く。
その先にはヒューゴ様が立っていた。
(タ、タキシードがとっても似合ってる!しかも前髪を上げてて新鮮!)
あまりのカッコ良さに心の中で悲鳴染みた声を出しながらも必死にポーカーフェイスを保つ。
彼の目の前について私はお父様から手を離した。
「ヒューゴくん、娘をよろしくね」
「はい」
お父様は離れお母様の隣に座る。
「イヴァ」
差し出された手を取りとうとう聖壇の前に立った。
私達を見て神父様は微笑み問いかけを始める。
「新郎ヒューゴ・ガンダー、貴方はイヴァ・クレマーを妻とし、健やかなる時も病める時も妻を愛し、敬い、共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい!誓います」
「新婦イヴァ・クレマー、貴女はヒューゴ・ガンダーを夫とし、喜びの時も悲しみの時も夫を愛し、敬い、慰め合いその命ある限り真心を尽くす事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「よろしい…今ここに2人を夫婦と認め新たな人生の門出を心より祝福いたします」
神父様の言葉が終わった瞬間沢山の拍手が教会内に響いた。
「「おめでとうー!」」
「「「おめでとうございます!」」」
ありったけの祝福の言葉を浴びる。
ゴーンゴーンゴーン
丁度いいタイミングで鐘の音が鳴り響き私達は顔を見合わせた。
「さぁ、受け取ってくれ」
「まぁ…綺麗」
私の左手を取り薬指に指輪を填めてくれる
指輪についている宝石はヒューゴ様の瞳の色に近い真っ赤なルビーだった。
そして彼の薬指に填められたのは私の瞳の色に近いアメジスト。
(ヒューゴ様ったらわざわざお互いの瞳の色に近い物を探したのね)
教会での結婚式を終えて披露宴に移行する
と言ってもほぼ親族しかいない和やかなもので皆で笑い合う。
「イヴァ、流石にそろそろいいんじゃないか?」
「あら?何がです?」
私はキョトンとすると拗ねたような顔で言葉を続けた。
「名前を、その」
「…あぁ!」
漸く彼の言いたい事が分かり納得がいく
確かヒューゴ様がクレマー家に来たばかりの頃に呼び捨てで呼んでくれて構わないと言われた事を思い出した。
「ふふふっ!
これからもよろしくねヒューゴ」
初めて彼の名前を呼び捨てにし敬語も外してみたらヒューゴは目を見開く。
「ははっ!漸く呼んでくれたな!」
心底幸せそうに笑う彼、その笑顔を見て胸の奥から温かくなった。
(まさかこんな結婚式を迎えられるなんて思わなかったなぁ
本当に幸せだわ)
こうして我がクレマー家に悪役令息のような扱いを受けた男が婿に来たのでした。
完。
(前世の事全て思い出してる訳じゃないけど結婚した事も結婚式をやった事も、なかったと思う)
1番記憶に残っているのは学生の時で前世は成人したかどうか分からない。
「イヴァ」
「お母様!お父様!」
控え室に両親が来てくれた。
ウェディングドレスに身を包んでいる私に2人共涙ぐんでいる。
「イヴァ、とても綺麗よ」
「とうとう娘が結婚を…うぅ」
今まで大変な事も苦しい事もあったけれどそれと同じぐらい楽しい事も幸せな事もあった。
もし何か違えば目の前にいる両親は悪役のような存在になっていたかもしれなくてそれは私も同じ。
私が前世の記憶を思い出した理由は分からないままだがさして大きな問題じゃないのかも。
「お母様お父様…ここまで育ててくれて本当にありがとうございます。
ふふふっそんな顔なさらないで結婚してもこの家にいるんですから」
「そうなんだけれどね」
「分かってはいるんだが、それはそれでこれはこれだ」
両親を話していると式場のスタッフさんに呼ばれる。
とうとう結婚式が始まるのだ。
お母様とは別れて扉の前でお父様と腕を組み背筋を伸ばす。
「イヴァ…幸せになりなさい。それだけが私とお母様の願いだよ」
「っ!…はいっ」
扉が開いた。
皆がいる。
お母様が、ミラが、オーウェン様が、レイラ様が、アンドレア王太子殿下が、参列してくれている
お父様と共に真っ直ぐ歩く。
その先にはヒューゴ様が立っていた。
(タ、タキシードがとっても似合ってる!しかも前髪を上げてて新鮮!)
あまりのカッコ良さに心の中で悲鳴染みた声を出しながらも必死にポーカーフェイスを保つ。
彼の目の前について私はお父様から手を離した。
「ヒューゴくん、娘をよろしくね」
「はい」
お父様は離れお母様の隣に座る。
「イヴァ」
差し出された手を取りとうとう聖壇の前に立った。
私達を見て神父様は微笑み問いかけを始める。
「新郎ヒューゴ・ガンダー、貴方はイヴァ・クレマーを妻とし、健やかなる時も病める時も妻を愛し、敬い、共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい!誓います」
「新婦イヴァ・クレマー、貴女はヒューゴ・ガンダーを夫とし、喜びの時も悲しみの時も夫を愛し、敬い、慰め合いその命ある限り真心を尽くす事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「よろしい…今ここに2人を夫婦と認め新たな人生の門出を心より祝福いたします」
神父様の言葉が終わった瞬間沢山の拍手が教会内に響いた。
「「おめでとうー!」」
「「「おめでとうございます!」」」
ありったけの祝福の言葉を浴びる。
ゴーンゴーンゴーン
丁度いいタイミングで鐘の音が鳴り響き私達は顔を見合わせた。
「さぁ、受け取ってくれ」
「まぁ…綺麗」
私の左手を取り薬指に指輪を填めてくれる
指輪についている宝石はヒューゴ様の瞳の色に近い真っ赤なルビーだった。
そして彼の薬指に填められたのは私の瞳の色に近いアメジスト。
(ヒューゴ様ったらわざわざお互いの瞳の色に近い物を探したのね)
教会での結婚式を終えて披露宴に移行する
と言ってもほぼ親族しかいない和やかなもので皆で笑い合う。
「イヴァ、流石にそろそろいいんじゃないか?」
「あら?何がです?」
私はキョトンとすると拗ねたような顔で言葉を続けた。
「名前を、その」
「…あぁ!」
漸く彼の言いたい事が分かり納得がいく
確かヒューゴ様がクレマー家に来たばかりの頃に呼び捨てで呼んでくれて構わないと言われた事を思い出した。
「ふふふっ!
これからもよろしくねヒューゴ」
初めて彼の名前を呼び捨てにし敬語も外してみたらヒューゴは目を見開く。
「ははっ!漸く呼んでくれたな!」
心底幸せそうに笑う彼、その笑顔を見て胸の奥から温かくなった。
(まさかこんな結婚式を迎えられるなんて思わなかったなぁ
本当に幸せだわ)
こうして我がクレマー家に悪役令息のような扱いを受けた男が婿に来たのでした。
完。
318
あなたにおすすめの小説
【完結】すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ
エレインたちの父親 シルベス・オルターナ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?
ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」
華やかな夜会の真っ最中。
王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。
「……あ、そうなんですね」
私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。
「で? 次のご予定は?」
「……は?」
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる