『「落とし物しか探せない無能」と離縁されましたが、私だけが忘れられた王弟殿下を覚えています ~捨てられた品々の声を聞く相談所を始めたら、王国
「落とし物しか探せない女を、侯爵家に置いておく意味はない」
そう言って夫アルベールが差し出した離縁状は、かつてクラリス自身が整えた書式で作られていた。
結婚して八年。クラリスは、失われた品に残る記憶を読み取る《拾憶》の祝福を使い、消えた帳簿も、盗まれた印章も、行方不明になった使用人も見つけてきた。領地の収支を立て直し、使用人同士の揉め事を収め、夫が社交界で恥をかかないよう陰で支え続けた。
けれどアルベールは、その働きをすべて「妻なら当然」の一言で片づけ、クラリスの旧友を新しい妻に迎えるという。
泣いて縋ると思われていることに腹を立てたクラリスは、結婚指輪を置き、亡き母から渡された古い鍵だけを持って侯爵家を出た。
彼女が向かったのは、王都から遠く離れた辺境の鐘楼町。そこで古びた税関小屋を借り、捨てられた品と、帰る場所をなくした人々のための「遺失物相談所」を開くことにする。
最初に現れた客は、ルシアンと名乗る無愛想な男だった。
ところが宿の主人も、町の兵士も、前夜に彼と酒を飲んだ者さえ、朝になると彼の存在を忘れていた。
ただ一人、クラリスを除いて。
「おはようございます、ルシアン殿下。砂糖は一つでしたね」
何気なく名前を呼ばれた男は、ひどく傷ついた人のような顔でクラリスを見つめた。
ルシアンの正体は、十二年前に王国の記録から消された第三王弟。彼にかけられた忘却の呪いを解くには、王国各地に隠された七つの遺失物を探し出さなければならないという。
そして最初の手がかりは、クラリスの離縁状に押された侯爵家の印章だった。
捨てられた指輪、届かなかった手紙、持ち主を拒む人形、名前を削られた墓石。それらの声を拾うたび、二人は王家が歴史から消した罪へ近づいていく。
一方、クラリスを追い出した侯爵家では、帳簿も領地経営も立ち行かなくなり、アルベールはようやく妻が担っていたものの大きさに気づき始める。
けれど、もう遅い。
他の誰があなたを忘れても、私は何度でも見つけます。
これは「無能」と捨てられた元侯爵夫人が、忘れられた王弟とともに国中の記憶を取り戻し、誰かに与えられた居場所ではなく、自分で選んだ家へ帰るまでの物語。
※元夫との復縁はありません。じれじれの恋愛と謎解きを経て、最後はハッピーエンドです。
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けれどアルベールは、その働きをすべて「妻なら当然」の一言で片づけ、クラリスの旧友を新しい妻に迎えるという。
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最初に現れた客は、ルシアンと名乗る無愛想な男だった。
ところが宿の主人も、町の兵士も、前夜に彼と酒を飲んだ者さえ、朝になると彼の存在を忘れていた。
ただ一人、クラリスを除いて。
「おはようございます、ルシアン殿下。砂糖は一つでしたね」
何気なく名前を呼ばれた男は、ひどく傷ついた人のような顔でクラリスを見つめた。
ルシアンの正体は、十二年前に王国の記録から消された第三王弟。彼にかけられた忘却の呪いを解くには、王国各地に隠された七つの遺失物を探し出さなければならないという。
そして最初の手がかりは、クラリスの離縁状に押された侯爵家の印章だった。
捨てられた指輪、届かなかった手紙、持ち主を拒む人形、名前を削られた墓石。それらの声を拾うたび、二人は王家が歴史から消した罪へ近づいていく。
一方、クラリスを追い出した侯爵家では、帳簿も領地経営も立ち行かなくなり、アルベールはようやく妻が担っていたものの大きさに気づき始める。
けれど、もう遅い。
他の誰があなたを忘れても、私は何度でも見つけます。
これは「無能」と捨てられた元侯爵夫人が、忘れられた王弟とともに国中の記憶を取り戻し、誰かに与えられた居場所ではなく、自分で選んだ家へ帰るまでの物語。
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