――――次は線画ですね。担当さんからOKが出たネームは、どのようにして画面に反映させていますか?
担当さんからネームに修正が入ったPDFデータが返ってくるので、そちらを原稿データに貼り付けて下描き、次に線画という形で進めています。ネーム段階でのセリフの調整を担当さんにお願いしているので、セリフの量に対してフキダシの大きさを適切なものに調整したり、それに応じてキャラの配置も変えたりしていますね。なので確認しておかないと後で大変なことになるという。
――――確かに、防ぐことができるミスは潰しておきたいですね。
あと自分で言うのもなんなんですが、誤字や脱字、書き文字忘れがひどいんですよ! 先ほども言いましたが、勢いでネームを描くのでキャラまで勢いでしゃべらせてしまって、セリフの接続詞がなくて唐突な発言になっていたり、新しい漢字を作り出していたり(笑)
――――(笑)。気を取り直して、実際の線画を見てみましょう! 村上先生の線画はタッチがきれいですね。
最初の線画は、とりあえず人物のレイヤー分けがしやすいように描いているんです。仕上げの時に、後から線をかなり書き足しているので、この時点ではつんつるてんな感じですね(笑)
――――線画で注意している点はなんですか?
描き始めてから気付いたんですが、漫画は全部線で描かないといけないんですよね……! たとえばイラストだと背景は、むしろ人物を際立たせるためにぼかした方が良いという場合も多いんですけど、漫画は全部線で描かないとおかしく見えるというか。その上、カラーだと細部までいろいろな色を何諧調も重ねて1枚の絵にしていく感じですけれど、漫画は服のシワまですべて線。だからといって描き込みすぎると見辛くなるから、ある程度取捨選択をしなければならないし……。すべてにおいて白か黒かって、私はなんでもぼかしておきたいグレーゾーン主義なのに(泣)
――――(笑)。では完成原稿についてですが、仕上げの時に意識していることはありますか?
仕上げに関しては少し画面から離れて見て、白黒のバランスが整う形になるよう気を付けています。例えばこの右ページは、ツッコミセリフの入るウニフラッシュ※がインパクト強めなんで、他の部分はわりとさっぱりした画面にしていますね。それとクモンがこの世界では珍しくリィーンより若い子なんで、トーンや効果線はその貴重な若さや少年らしさが出せるよう意識しています。他のキャラは100歳近い人たちばかりなので、クモンとリィーンが2人の時は、生き生きとした青春っぽさを出していければな、と。
※編集部注「ウニフラッシュ」 集中線を細く引いたフキダシのこと。見た目がウニのようなので、この名称で呼ばれることが多い。主に心の声を表すフキダシに使われ、今回紹介している見開きでは右ページの2、3コマ目左側に配置されている。
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