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一章 10歳
悪役令息もまだ子供なのです
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「殿下はあの方をご存知で?」
「あぁ、確かダイン子爵家のルークスとか言う奴だな」
「さすが殿下。記憶力がよろしいことで」
「お前が無理やり教えたんだろ!」
酷いです殿下。まるで私が勉強を強要したかのような言い方は辞めてください。魔術で体の自由を奪っただけじゃないですか。
非難の目を向けていると、リアム殿下が改まった様子で言う。
「それで、奴になんの用があったんだ? お前は重要な用件無く俺との約束を破ったりしないだろ」
「約束した覚えは無いのですが、········そうですねぇ。あの方が言うには私は亡くなってしまうそうですよ」
「はぁ!? 化け物みたいなお前がか? お前以外皆殺しの間違えじゃないのか?!」
「殿下。少しお言葉が過ぎるかと。これ、忠告ですよ?」
ニコリと微笑めば、彼は顔を真っ青にしました。
忠告。つまるところ「あまり図に乗るなよ? 黙っとけ」ということですね。私は汚い言葉をあまり使えないので不便なのですよ。
「とりあえずダイン子爵家に探りを入れましょうか? あの家は少し特殊ですからね」
ダイン子爵家は預言者パラドの子孫。過去に起こった魔物の暴走を予知し、国を救った英雄の家系。
おそらくエメラルド少年が言っていた私の死についても先祖返りによる能力の覚醒。つまり予知能力によるものでしょうね。
「しかしダイン家はあの方の管轄だろ? いくらお前でも干渉できないと思うが······」
「··········やはりルークス公子に聞いた方が早いでしょう。ちょっと行ってきますね」
殿下に断りを入れ、エメラルド少年もといルークス公子に近づく。
さすがに鼻血は止まったようですが、貧血気味なのでしょうか。少しふらついていますね。それに、廊下に血の海が出来ています。これでは殺人現場とさほど変わりません。
「少し掃除しますか」
──パチン
指を鳴らすと全ての血液が空中に集まり、小さな赤い玉が出来上がる。
人間の血には魔力が含まれています。血を使い魔術の実験を行う者も少なくありません。
魔術を行使すると必ず代償が付きまといます。血を発動源にすると使用した血の消失だけで済むので。そういった目的の殺人事件や誘拐事件もよく起こっているとか。
··········私も昔に誘拐されたことがあります。その時の記憶は父上によって封印されているのですが········。思い出すのはやめておきましょう。
私は血を集めて作った赤い玉を口にくわえ、ふらふらと壁に寄りかかったルークス公子の顔を持ち上げます。
「にゃっ! な、なんですか? ちょ、顔が近っ·····ッ······!?」
ちょうど口を開けてくれて助かりました。私はくわえた玉をルークス公子の口の中へと移していきます。
「んっ···ぁ·····まっ········て······」
「お、おい!? 何をしている!?」
あら、そういえば殿下が居るのを忘れていました。これは教育上宜しくないですね。急いで魔術を行使し、口を離します。ルークス公子は地面にへたり込んでしまいました。
私はハンカチを口元に当てながら、リアム殿下に向き直ります。
「魔力と血液の枯渇が見られたので肉体を活性化させる魔術を行使しました。一時的な処置を行った次第です」
そう、これはただの治療。なので赤面するのをやめてください。邪な行為ではありませんよ?
リアム殿下が真っ赤なお顔のままこちらを見ました。
「お、俺も魔力が足りない」
「嘘ですよね? 魔力が有り余っているの間違えでは?」
さすがに10歳で目覚めるのは早いです。やめてください。何かあっては私が陛下に色々言われるのですよ? 自分では手に負えないからとリアム殿下を子供の私に押し付けるような方なのですから。
「殿下、お忘れですか? 魔術師は魔力を過剰に摂取、または行使すれば精神が崩壊するのですよ?」
「ふんっ······お前なら調整出来るだろ」
「私にも不可能はあります!」
思わずムッとしてしまいます。
みんなして酷いです。私だってまだ10歳なのですよ? もちろん調整することは可能ですが、不可能だってあります。多分!
「もう殿下なんて知りませんっ」
ぷいっと顔を背け、呼び止める殿下を無視して教室に向かいます。
リアム殿下のわがままに付き合う私の身にもなってください。周囲は私を天才だって言いますけどいっぱい努力してるんです。なんでも簡単に出来る訳では無いんですよ!
「···········子供っぽい、ですかね······」
なんだか急に恥ずかしくなってきました。
私が教室に戻れたのは顔に集まった熱が冷めた数十分後のことでした。
今後リアム殿下の勉強量を増やすことにします。
「あぁ、確かダイン子爵家のルークスとか言う奴だな」
「さすが殿下。記憶力がよろしいことで」
「お前が無理やり教えたんだろ!」
酷いです殿下。まるで私が勉強を強要したかのような言い方は辞めてください。魔術で体の自由を奪っただけじゃないですか。
非難の目を向けていると、リアム殿下が改まった様子で言う。
「それで、奴になんの用があったんだ? お前は重要な用件無く俺との約束を破ったりしないだろ」
「約束した覚えは無いのですが、········そうですねぇ。あの方が言うには私は亡くなってしまうそうですよ」
「はぁ!? 化け物みたいなお前がか? お前以外皆殺しの間違えじゃないのか?!」
「殿下。少しお言葉が過ぎるかと。これ、忠告ですよ?」
ニコリと微笑めば、彼は顔を真っ青にしました。
忠告。つまるところ「あまり図に乗るなよ? 黙っとけ」ということですね。私は汚い言葉をあまり使えないので不便なのですよ。
「とりあえずダイン子爵家に探りを入れましょうか? あの家は少し特殊ですからね」
ダイン子爵家は預言者パラドの子孫。過去に起こった魔物の暴走を予知し、国を救った英雄の家系。
おそらくエメラルド少年が言っていた私の死についても先祖返りによる能力の覚醒。つまり予知能力によるものでしょうね。
「しかしダイン家はあの方の管轄だろ? いくらお前でも干渉できないと思うが······」
「··········やはりルークス公子に聞いた方が早いでしょう。ちょっと行ってきますね」
殿下に断りを入れ、エメラルド少年もといルークス公子に近づく。
さすがに鼻血は止まったようですが、貧血気味なのでしょうか。少しふらついていますね。それに、廊下に血の海が出来ています。これでは殺人現場とさほど変わりません。
「少し掃除しますか」
──パチン
指を鳴らすと全ての血液が空中に集まり、小さな赤い玉が出来上がる。
人間の血には魔力が含まれています。血を使い魔術の実験を行う者も少なくありません。
魔術を行使すると必ず代償が付きまといます。血を発動源にすると使用した血の消失だけで済むので。そういった目的の殺人事件や誘拐事件もよく起こっているとか。
··········私も昔に誘拐されたことがあります。その時の記憶は父上によって封印されているのですが········。思い出すのはやめておきましょう。
私は血を集めて作った赤い玉を口にくわえ、ふらふらと壁に寄りかかったルークス公子の顔を持ち上げます。
「にゃっ! な、なんですか? ちょ、顔が近っ·····ッ······!?」
ちょうど口を開けてくれて助かりました。私はくわえた玉をルークス公子の口の中へと移していきます。
「んっ···ぁ·····まっ········て······」
「お、おい!? 何をしている!?」
あら、そういえば殿下が居るのを忘れていました。これは教育上宜しくないですね。急いで魔術を行使し、口を離します。ルークス公子は地面にへたり込んでしまいました。
私はハンカチを口元に当てながら、リアム殿下に向き直ります。
「魔力と血液の枯渇が見られたので肉体を活性化させる魔術を行使しました。一時的な処置を行った次第です」
そう、これはただの治療。なので赤面するのをやめてください。邪な行為ではありませんよ?
リアム殿下が真っ赤なお顔のままこちらを見ました。
「お、俺も魔力が足りない」
「嘘ですよね? 魔力が有り余っているの間違えでは?」
さすがに10歳で目覚めるのは早いです。やめてください。何かあっては私が陛下に色々言われるのですよ? 自分では手に負えないからとリアム殿下を子供の私に押し付けるような方なのですから。
「殿下、お忘れですか? 魔術師は魔力を過剰に摂取、または行使すれば精神が崩壊するのですよ?」
「ふんっ······お前なら調整出来るだろ」
「私にも不可能はあります!」
思わずムッとしてしまいます。
みんなして酷いです。私だってまだ10歳なのですよ? もちろん調整することは可能ですが、不可能だってあります。多分!
「もう殿下なんて知りませんっ」
ぷいっと顔を背け、呼び止める殿下を無視して教室に向かいます。
リアム殿下のわがままに付き合う私の身にもなってください。周囲は私を天才だって言いますけどいっぱい努力してるんです。なんでも簡単に出来る訳では無いんですよ!
「···········子供っぽい、ですかね······」
なんだか急に恥ずかしくなってきました。
私が教室に戻れたのは顔に集まった熱が冷めた数十分後のことでした。
今後リアム殿下の勉強量を増やすことにします。
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