王道学園は実に面白い

白鳩 唯斗

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第1章

日本語って難しい

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「俺は風紀委員長の九条 涼雅だ。見ない顔だが──もう1人の転入生か」

 もう1人のってことは僕以外にも居るのかな? 覗き魔くんの言ってた王道転入生じゃないと良いけど···。

「はい、僕は転入生の秋月琉翔です。ところで風紀委員長さん」

「なんだ」

「屋上の件は正当防衛になるのでしょうか? 僕を殺るって言われてたのでついやり過ぎちゃって······」

 手加減したつもりだったんだけど、想像の何十倍も弱くて僕もびっくり。

 少し残念そうな表情をすると、風紀委員長さんの眉がぴくりと動く。

「おい、ちょっと待て。もう1回言ってくれないか?」

 険しい顔してどうしたんだろう? 僕何かおかしな事言ったかな?

「殺るって言われたのでついやり過ぎちゃったんです」

「··········翼、紙を持ってきてくれ」

 風紀委員長さんの近くに控えていた風紀委員さんが、紙を持ってきて机に置く。

 なんで紙? 事情聴取ってやつかな?

「さっき言った言葉をここに書いてくれ」

「分かりました」

 僕は風紀委員長さんから渡されたペンを持って、日本語で『殺るって言われたのでついやり過ぎました』と書く。

「書けましたよ」

 風紀委員長さんの前にスっと紙を差し出すと、大きなため息をつかれる。

「あの、何か問題でもありましたか?」

 日本語は一応マスターしたつもりだったんだけど、変だったかな?

 疑問に思って首を傾げていると、風紀委員長さんが額を抑えながら言う。

「こういう時に使うヤるっていうのはだな、レイプや強姦をするって意味のヤるだ」

「······ん?」

 え、どういうこと? 殺るはヤるじゃなくてヤるは殺るではないってこと?

「風紀委員長さん、えっとつまり?」

「盛大な勘違いだ」

 勘違い······日本語って難しいな···。

「僕ってどうなるんですか?」

 理事長の楓鵺さんが僕サイドの人間だから退学は無いだろうけど、学生としてしっかり処分は受けないとね。

「特に何も無い。相手の服を調べたらナイフが出てきたからな」

「あ、はいそうですか」

 なんであんなに自信満々だったのかなぁ、とは思ってたけど、ナイフがあったからか······。

「じゃあ僕帰っていいですか?」

 王道学園についても早く調べたいしね。もう1人の転入生っていうのも気になるし。

「いや、待て。連絡先を交換しないか?」

 またなにかやらかしそうだしな、と付け加えられる。

「良いですよ、これ僕のIDです」

 風紀委員長さんにIDを書いて渡す。

「では、また会いましょう」

 風紀委員長さんにニコリと笑顔を向けて、ドアを閉める。





「これから仕事が増えそうだな。また風紀として会うことが無ければ良いのだが······」
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