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叩かれたドア
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その夜、私達は久し振りの入浴を堪能できた!
「生き返るわぁ!」
もちろん今まで死んでた訳じゃないけど心の底から自然に出てしまったの。お湯に浸るってこんなに気持ちいいのね。
「村から離れてはいるけど、いいお湯ね」
「お嬢様、この宿は温泉です。女将さんに聞いたのですけれども、源泉がここに在るから村から外れているそうですよ」
ナンシーも同じお風呂に入っている。今日の女性客は私達だけらしいから大浴場では多少は大胆になってしまう。
「お肌がスベスベになるわね」
「いやですね。どんな名湯でもお嬢様には敵いませんよ」
せっかくリラックスしているんだから、ここは素直に温泉を褒めて欲しかったわ。
それにしてもナンシーがさっきから私をチラチラと見てくるわね。
「どうしたのよ?」
「申し訳ありません。お嬢様が余りにも美しいので、つい」
「なっ、何を言っているのよ。私の裸なんて見慣れているでしょ!」
侯爵令嬢になってからずっと世話してもらっているから、私自身よりも私の身体に詳しい筈よね?
「そっ、そろそろ出ましょ。ゆっくりと温かい食事をするのも久し振りよね?」
意識したら急に恥ずかしくなってきたわ。だから話題を変えてみたの。
「半月振りです。楽しみですね」
充分に身体を温めてリラックスした私達は同時に上がった。
◯▲△
「乾杯!」
リラックスした私達はお酒も注文してグラスを傾けたわ。
「食事は食堂で他のお客さんと一緒なのね」
とは言えお客さんの総数が少ない。私達を含めても5人しかいない。
他のお客さんは冒険者ばかりみたい。
「お湯は良いし食事も美味しいのにお客さん少ないわね」
「辺境で村からも外れていますからね」
「お陰でゆっくり出来るけど」
この客の入りではあの女将さんの引退と共に宿屋を畳むかも知れないわね。
「お嬢様、明日はもう少し栄えた町まで行きましょう」
「そうね。今後の生活の事とか考えなくちゃね」
いつまでも冒険者は続けてられない。何処か一つ所に落ち着かないとね。
◯▲△
「もう食堂を閉める時間だよ!」
気が付けば他にお客さんが居ない。
久し振りにお酒を飲んだ私達はその気になってお酒を何杯も注文して上機嫌だったわ。
ヒュンダルン王国では16歳から飲酒は許されている。それはこの国でも同じな筈だから堂々と管を巻いていたけど、もう終わりなのね。
楽しい時間って過ぎるのが早いわ。
「はいはい、退散しますよ」
せっかくだからもう一度温泉に入ろうかと思っていたその時だったわ。
ドンドンドン!
「開けてくれ!」
一気に酔が覚める様なけたたましいドアを叩く音がしたかと思ったら、男性の鬼気迫る叫び声が聞こえた。
「頼む、早く開けてくれ! お願いだ!」
酔っ払っていても只事じゃない事は直ぐに判る。
「女将さん、早くドアを開けて!」
「えっ? あっ、あぁ」
戸惑いながら女将さんがドアの鍵を開けようとするけど、何かに気が付いたかの様に私達に向き直ったわ。
「でもこれがもし魔物に追われている冒険者で、魔物がすぐ側に居たらどうするんだい?」
確かに魔の大樹海はすぐ側だけど過去にそんな事が有ったのかしら?
「心配御無用! 私達は魔の大樹海を横断した冒険者よ。ねぇ?」
「……はい、お嬢様…」
よく見るとナンシーの目が座っているわ。ずっと右手にナイフ、左手にフォークを握って放さないから怖いわね。魔物以上に。
「生き返るわぁ!」
もちろん今まで死んでた訳じゃないけど心の底から自然に出てしまったの。お湯に浸るってこんなに気持ちいいのね。
「村から離れてはいるけど、いいお湯ね」
「お嬢様、この宿は温泉です。女将さんに聞いたのですけれども、源泉がここに在るから村から外れているそうですよ」
ナンシーも同じお風呂に入っている。今日の女性客は私達だけらしいから大浴場では多少は大胆になってしまう。
「お肌がスベスベになるわね」
「いやですね。どんな名湯でもお嬢様には敵いませんよ」
せっかくリラックスしているんだから、ここは素直に温泉を褒めて欲しかったわ。
それにしてもナンシーがさっきから私をチラチラと見てくるわね。
「どうしたのよ?」
「申し訳ありません。お嬢様が余りにも美しいので、つい」
「なっ、何を言っているのよ。私の裸なんて見慣れているでしょ!」
侯爵令嬢になってからずっと世話してもらっているから、私自身よりも私の身体に詳しい筈よね?
「そっ、そろそろ出ましょ。ゆっくりと温かい食事をするのも久し振りよね?」
意識したら急に恥ずかしくなってきたわ。だから話題を変えてみたの。
「半月振りです。楽しみですね」
充分に身体を温めてリラックスした私達は同時に上がった。
◯▲△
「乾杯!」
リラックスした私達はお酒も注文してグラスを傾けたわ。
「食事は食堂で他のお客さんと一緒なのね」
とは言えお客さんの総数が少ない。私達を含めても5人しかいない。
他のお客さんは冒険者ばかりみたい。
「お湯は良いし食事も美味しいのにお客さん少ないわね」
「辺境で村からも外れていますからね」
「お陰でゆっくり出来るけど」
この客の入りではあの女将さんの引退と共に宿屋を畳むかも知れないわね。
「お嬢様、明日はもう少し栄えた町まで行きましょう」
「そうね。今後の生活の事とか考えなくちゃね」
いつまでも冒険者は続けてられない。何処か一つ所に落ち着かないとね。
◯▲△
「もう食堂を閉める時間だよ!」
気が付けば他にお客さんが居ない。
久し振りにお酒を飲んだ私達はその気になってお酒を何杯も注文して上機嫌だったわ。
ヒュンダルン王国では16歳から飲酒は許されている。それはこの国でも同じな筈だから堂々と管を巻いていたけど、もう終わりなのね。
楽しい時間って過ぎるのが早いわ。
「はいはい、退散しますよ」
せっかくだからもう一度温泉に入ろうかと思っていたその時だったわ。
ドンドンドン!
「開けてくれ!」
一気に酔が覚める様なけたたましいドアを叩く音がしたかと思ったら、男性の鬼気迫る叫び声が聞こえた。
「頼む、早く開けてくれ! お願いだ!」
酔っ払っていても只事じゃない事は直ぐに判る。
「女将さん、早くドアを開けて!」
「えっ? あっ、あぁ」
戸惑いながら女将さんがドアの鍵を開けようとするけど、何かに気が付いたかの様に私達に向き直ったわ。
「でもこれがもし魔物に追われている冒険者で、魔物がすぐ側に居たらどうするんだい?」
確かに魔の大樹海はすぐ側だけど過去にそんな事が有ったのかしら?
「心配御無用! 私達は魔の大樹海を横断した冒険者よ。ねぇ?」
「……はい、お嬢様…」
よく見るとナンシーの目が座っているわ。ずっと右手にナイフ、左手にフォークを握って放さないから怖いわね。魔物以上に。
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