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鮮血の剣聖─キル・レイブリック─
3.ミデア・フォン・──
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汽笛を鳴らし続ける汽車から降りたあと、都の中心を目指し王都の街並みを進んでいった。
人々の喧騒の中を歩み続けるその頃、日は徐々に傾いて西の空は赤く染まりつつあった。
──流石はストライト国の中心、人の密度が第六区とは違うな。
ストライト王国。
建国三七一年。有り余る国土と膨大な人口で世界有数の超大国にまで上り詰めた、歴史ある立憲君主制国家。
そして、その繁栄を象徴するかのように、豪勢に建てられた──
「相変わらずの、でかい王城だな」
見上げてやっと頂点が見えるほどの高さ。それも霞がかかっておぼろげなものだ。広さも相当なもので、政治や軍事の中枢拠点が詰め込まれている。ここに住む重鎮も多数いるため、誇張無しにこの城が国家の重要拠点である。
「つまり私も重役になれば、この城に住めるというわけだ」
本気で住みたいというわけではないが、少し興味は惹かれる。やはり洋風の城に住むというのは女子の憧れなのだろうか。
諸々の手続きを終わらして、城の内部を進み続ける。
向かうは城の中心部、王のいる玉座……ではない。むしろのその逆と言っていい。
しばらく歩いて辿り着いたのは城の最奥。先程まで華美だった装飾も、ここでは淡白なものとなっていた。窓の少なさからか明かりも乏しく、少しほこりっぽい。
静寂の廊下のなか、立ち止まったのは質素な扉の前。黒樫でできたそれは簡素な造りながら、重厚な雰囲気を醸し出している。おそらくあの仕掛けのせいなのだが、それ以外の──例えば部屋にいる人物の覇気なのではないかと勘繰ってしまう。
ここに来るのは数度目だが、いまだこの雰囲気に気圧されている。そんな震えを振りほどくように勢い良く中に入る。
「しかし狭い部屋だね。城の中なのに寂しいもんだ」
こんな辺境に来させた張本人に向かって、間髪入れずに嫌味を並べる。気の狂いそうな四畳半で私を待ち構えていた人物は、私の声を聞くと読んでいた本を置いて、私の方へ向き直す。
「やぁ、久しぶりだね。直接会うのは何ヶ月ぶりかな。それにしても、こちらから出向けなくて済まないね。わざ わざ来てもらうのも心苦しいんだよ?」
開口一番、そう畳み掛けてくるのはストライト王国実質的統治者、ミデア・フォン・ストライト。
水色の髪に炎の瞳を持った──八歳児である。
人々の喧騒の中を歩み続けるその頃、日は徐々に傾いて西の空は赤く染まりつつあった。
──流石はストライト国の中心、人の密度が第六区とは違うな。
ストライト王国。
建国三七一年。有り余る国土と膨大な人口で世界有数の超大国にまで上り詰めた、歴史ある立憲君主制国家。
そして、その繁栄を象徴するかのように、豪勢に建てられた──
「相変わらずの、でかい王城だな」
見上げてやっと頂点が見えるほどの高さ。それも霞がかかっておぼろげなものだ。広さも相当なもので、政治や軍事の中枢拠点が詰め込まれている。ここに住む重鎮も多数いるため、誇張無しにこの城が国家の重要拠点である。
「つまり私も重役になれば、この城に住めるというわけだ」
本気で住みたいというわけではないが、少し興味は惹かれる。やはり洋風の城に住むというのは女子の憧れなのだろうか。
諸々の手続きを終わらして、城の内部を進み続ける。
向かうは城の中心部、王のいる玉座……ではない。むしろのその逆と言っていい。
しばらく歩いて辿り着いたのは城の最奥。先程まで華美だった装飾も、ここでは淡白なものとなっていた。窓の少なさからか明かりも乏しく、少しほこりっぽい。
静寂の廊下のなか、立ち止まったのは質素な扉の前。黒樫でできたそれは簡素な造りながら、重厚な雰囲気を醸し出している。おそらくあの仕掛けのせいなのだが、それ以外の──例えば部屋にいる人物の覇気なのではないかと勘繰ってしまう。
ここに来るのは数度目だが、いまだこの雰囲気に気圧されている。そんな震えを振りほどくように勢い良く中に入る。
「しかし狭い部屋だね。城の中なのに寂しいもんだ」
こんな辺境に来させた張本人に向かって、間髪入れずに嫌味を並べる。気の狂いそうな四畳半で私を待ち構えていた人物は、私の声を聞くと読んでいた本を置いて、私の方へ向き直す。
「やぁ、久しぶりだね。直接会うのは何ヶ月ぶりかな。それにしても、こちらから出向けなくて済まないね。わざ わざ来てもらうのも心苦しいんだよ?」
開口一番、そう畳み掛けてくるのはストライト王国実質的統治者、ミデア・フォン・ストライト。
水色の髪に炎の瞳を持った──八歳児である。
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