国王様、ここは異世界ではありません!

Tsumitake

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覚醒は突然に

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私はクラスで目立った方ではなくて、成績も運動も平凡そのもの。
見た目も悪いとは言わないまでも平均ライン。
友達も中学からの子が1人と、高校入ってから2人、の3人だけ。
趣味は小説を書くこと。
典型的な陰キャ女子高生。
別にそれらが悪いとは思ってない。
友達0じゃないし、非行に走ってるわけでもないし…ただ、

気になる人とは生きてる世界が違うってだけ。

彼は教室に入ってきた瞬間に空気が変わる。
前列の子も本から顔を上げて、最後尾陣取ってるギャル系女子は朝の挨拶を叫ぶ。
ちょっとしたファンファーレみたい。

ああ、そうだ。
彼を小説の王子様にしよう。

そう思ったどこかには、毎日彼と話せて楽しそうなギャル系女子への嫉妬もあったのかもしれない。
小説は好きだ。小説の中でなら強い自分になれる。
思っていることをズバズバ言えて、大胆に行動に移せる。
現実では恥ずかしくて自分の意見なんて絶対言えないけど、異世界なら出来る気がする。

「林さん」
「ひぇっ!?」

クラスの人気者のイケメンに突然話しかけられた驚きで間抜けな声を上げてしまった。
普段仲間内の誰かのミスだとよく笑う彼、白峰 隼人しらみね はやとだが、この時は笑わず、私のオーバーリアクションに驚いたような表情で固まっていた。

「こないだ、理科室にノート忘れてたから。」

手渡された薄水色のそっけないキャンパスノートには「林 里紗はやし りさ」と自分の平凡な名前だけが書かれている。
そう、名前だけ。
理科のノートであれば理科と上部に書かれているはずなのに…ッ!?
つまりはそう、さっき言った小説を書いているノートだという事だ。

「はぇ…――ッ!?」

声にならない叫びをあげながらノートを手に取る。

「あの、こ、これ…中は…。」

恥ずかし過ぎて声が出にくいし、相手を見れない。
だから彼がどんな顔しているのかはわからない。

「…ごめん、ちらっとは見た。」

ギャー!と叫びたいけど、大暴れしているのは頭の中だけで、外側の本体は完全に硬直している。

「林さんって凄く字が綺麗だよね。」
「え。」

内容への感想とかじゃなかったことに反射的に声が出てしまった。

「俺、字下手だからすげーなって!」

いつの間にか彼の方へ顔を向けてしまっていたから、いつもの人懐っこい笑顔を自分に向けられていることに気付けてしまった。
心臓に違う負担がかかる。

「あの、…届けてくれてありがとう。」

さもなくば他の人達に回覧されていたかもしれない。

「うん。大丈夫、他の人には見せてないから。」

この時の私は初めて彼と喋った事で完全に脳がフリーズしていて、
それって中見たってこと!?どうなの!?と悩むのはチャイムが鳴って数学の授業が半ばまで進んだ頃だった。

けど、そこからはまたギャル系女子が周りを囲んでいて近付けないし、
訊いて読んだとなればまたダメージがデカいし…。
内容に触れてこなかったんだから読まれていない体で済ますのが得策と思えた。

けど、もしこれが面白い小説だ!って思ってもらえていたなら…
話は広がっていたんだろうか。
もっと彼と仲良くなれていた?
なんて考えも過ぎったりして、帰り道はちょっとぼーっとしていた。
自転車を駐輪所から出す時に、ブレーキの握り具合がスカスカになっていることに全く気付かない程度には。
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