ダブルヒーロー

異世界転生！？

適性の話

「今更やる気を出されてもね…。」

１人の男性がボヤいた言葉が、洗い終わったシーツを配っていたコレットの耳に入った。

「今回の主人公は、
　今迄やる気を出さずに逃げ出した勇者の分も
　頑張ろうとしてくれています。」
「アンタも、いつも見てるだけで
　何もしなかったじゃないか。」

コレットは頷く。
今まで、案内人という立場から深く干渉せず、アドバイスはしても自らが動く事は避けてきた。
それは、この世界の人間達を見捨ててきたのと同義だということは理解している。

「今回の主人公は違う。
　そんな気がするんです。」
「どっちが？２人居ただろう。」

言われて、コレットは少し悩む様子を見せた。

「赤い髪の主人公、
　雛乃は王道の主人公といえます。」
「赤い方か。」
「いえ…青い髪の主人公も、方法は違いますが、
　この世界を救える気がします。」

女神様も言っていた。
東条 譲は単体では勇者に不向きで主人公ヒーローにはなれない。
だが持っている才能は捨て難く、雛乃と２人でなら、世界を救う主人公ヒーローになれるだろう。と
そして実際に自分の目で見て、確かに今回は可能性がある、そんな気がしたのだった。

ガシャーーーン！

会話が終わるタイミングを見計らったかのように盛大に壊れた何かの音。
廊下から音の方向の様子を見れば、青い髪の青年が誰かを追い詰めていた。

「皆さん奥に引っ込んでいて下さい。」

嫌な予感しかしない。
やっと興味を持ち始めた住人に主人公の悪い印象を持たせるわけにはいかなかった。