ボールド国年代記 史上初3D作戦誕生で世界は平和になる?

虎徹周磨

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毒見役の生い立ち

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私とルカがぐっすり寝ている間の夜明けの頃に宰相からの早馬は到着していた。宿の朝番の使用人が預かっていて起きたタイミングで持ってきた。


「ルカ、会議の細かな支持と毒見の件について記してある。会議の件は指示通りすれば問題ないように思われる。毒見の人の名前はダニオ。王宮の記録によるとダニオの父親がイートス歴四百七十一年のフルナールでの裏切り監禁事件のときに大怪我を負っている。狩猟の隙を狙った国王襲撃時に国王をお守りして矢を受けたそうだ」
「ダニオの父親はフルナール人?どうしてボールドに?」
「続きを読むと、ダニオの父親は新婚で息子が一人生まれたばかりの頃でダニオの父親の両親はすでに他界していて大怪我をしたダニオ一家が頼る先はフルナールになかった。妻の実家がボールドなので実家を頼って移動した。その後の怪我の経過は良くなく簡単な仕事をするまで回復したが弱っていたのだろう。流行り病でダニオが三歳のときに亡くなっている」
「ダニオがフルナールに悪い印象しかないのは確かだな」
「宰相からも毒見はダニオを推薦している。薬と毒の知識が国内トップクラスで協力してもらうように書かれている」
「朝食を食べながら考えるか」



宿の朝食を食べながら考える。フルナール国を恨みに思っているのかもしれない。大怪我をしたところで治療はしてくれるがその後の生活の保障などあるわけないからな。生まれたすぐの赤ん坊を抱えてのボールドへの移動は簡単なものではない。母親からも母親の両親からもフルナールのことを悪く聞いているに違いないだろう。



「どうしたものか」
「アンドレア、ため息が深いぞ」
「こんな疑問は遅いと思うが、薬と毒は表裏一体だ。しかしそんなに難しいのか?薬草と毒キノコくらいはだれでも分かるはずだが?」
「そこはリベリオに聞いてみた。単体での毒は誰でもわかるよな。毒キノコなんて見た目も香りも独特だから。しかし調理されると話は別だ。形を変え味を変えれば見た目では分からなくなる。もっと複雑なのは組み合わせだ。料理の酢となにかの食材が合わさることで発生する有毒成分なんてアンドレアわかるか?」
「自信を持って言えるな。わからん!」
「そうだろう。薬と毒と料理を把握できることが条件で料理は宮廷料理だ。ダニオがどれほど貴重な存在か」
「なぜ毒に詳しくなっているのかはダニオに聞いてみたいがそれはまた別の機会にしておいて、今日どうやって承諾をもらうかは・・・」
食べ終わったので部屋に戻って考える。すぐに向かわなければいけないのに何も浮かばない。



ダニオの家についてしまった。ダニオと話しながら作戦を考える。
「ダニオ、私たちに協力するのが嫌なのか?それともボールドの国に協力したくないのか?今回の会議では毒見役をダニオに要請してほしいと王宮からも頼まれている」
「なぜ王宮に俺のことが知られている?」
「そこまでは手紙には書いてないが、手紙見てもらえるか?一部だけだが」
「ああわかった」



「宰相様にお会いしたことはないが俺のことを書いていらっしゃるのは間違いない。協力はしたいが、少し話聞いてくれ」
「わかった。座って話せるお店は近くにあるか?」
「馴染みの店がある。そこに行こう」



ダニオがよく料理の腕を振るっているお店で昼食前なのでテーブルを借り紅茶を頼んだ。
「正直言ってフルナール国のことには関わりたくない。理由は親父がフルナール国で兵士をしていたのだが職務中に大怪我してそれが理由でボールドに移動してきたのだ。フルナールは大怪我した親父を治療はしたが、復帰できない親父には僅かなお金を払って放り出したのだ」
「それはお気の毒に。ボールドには実家か親戚がいたのか?」
「グッドインの町の端に母親の実家がありそこを頼ってきたのだ。父親の両親はすでに病気でいなかったそうだ。そのときの俺はまだ生まれて三か月だった」
「父親は怪我がもとで亡くなったのか?」
「父親は簡単な仕事ができるまではなったのだ。しかし俺が三歳のときに流行り病で死んだそうだ」
「そうか。それではフルナールに協力したくない気持ちはよくわかる」
「殿下、そうおっしゃってくださってありがとうございます。協力したいけどしたくない気持ちも本音です。ボールドで生きていくと思っているから殿下と宰相様からの要請には答えたいし、子供の頃から勝手に薬と毒を調べてきた知識も生かしたいし、、、」



「なあダニオ、アンドレアは今度フルナールの第一王女と結婚するのだ。アンドレアとフルナールは縁続きになるしダニオの父親のことも王家に伝えることができると思うけど、どうだろう!」
「ルカ、まだ会議前だぞ!」
「心配するな。宰相様には事前に許可はとってある」
「いつのまに」
「昨日のお前の早馬に俺の手紙も乗せたのだ。今朝返事あったよ」
「殿下、フルナールとの政略結婚をなさるのですか?」
「ああ、会議までは内緒で頼む。ダニオ一家のことは私に預けてくれないか?必ずフルナールに伝えて今後に活かす様にする。約束する」
「本当でございますか殿下。こんな俺みたいな気持ちをもつ人が現れないようにお願い申し上げます」
「わかった。では毒見役を頼むぞ」
「承知いたしました。殿下」




ボールド国とフルナール国の将来を決める会議の準備は整った。ボールドの王宮から宰相一行が到着した。フルナールからも外交団が到着しグッドインの町は前夜祭で盛り上がっている。明日を待つばかりだ。
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