上 下
17 / 51

テロ偽装

しおりを挟む
ボールド国アレッサンドロ五世の皇太子アンドレアが私の名前だ。ビイットリア二世を母に持つボールドの四代目を継ぐ予定だ。本当の名はアンドレア・ピリ二・ヴェネチアだ。まだ十七回目の誕生日を迎えたばかり。まだ何ができるのか、どこまでしかできないのか自分でも分からないし誰かに聞く話でもない。こんな皇太子でもなにか考えて悩んでいるのだと理解は不要だがいつもの軽い感じとは別で自分の公務をこれからの責任を考えているのだな、あれでもと感じてもらえれば嬉しい(本当はハートマークを入れたいけど無理)。


こころのうちはさておき、ルカにはさんざん言われている内容を多少の部分で抜粋した。盛り上がっているグッドインの町だが不穏に思われる輩もボールドに入ってきている。怪しくとも商売人や僧侶などに扮しているなら国境で完全に見抜くことは不可能だ。あらかじめ百から二百は入ってくると踏んでいるので心配はしていない。



だからこそ会議の当日に偽装のテロをボールドの国王にもフルナールの外交団への根回しを済ませた上で決行した!決行時間当日の六時三十三分。単純に誰もが寝ぼけているころに大きな爆発音が出るようにして工作員にはフルナールの国境の町へ逃げるように頼んである。ボールドとフルナールの外交が上手くいかないように望む連中は多くいるのだ。残念ながら。



ドーン!!!
近くの建物は多少グラグラと揺れ窓ガラスはビリビリと振動した。町の人は一斉に建物から飛び出して何がおきたと騒ぎになった。しかしわかっている我々は冷静だ。さあ仕事だ。


爆発物のあとは一ブロック閉鎖し王宮軍とグットインの駐屯の兵は民衆への交通整理と爆発物の説明にまわる。ルカと私は市長との打ち合わせに向かう。



「ルカ、あちこちにいるな」
「やっぱり入り込んでいるのだね」
「父上のアドバイスはびっくりしたけどやってよかったと思う」




市長との打ち合わせを終え改めてグットインの町を会議の場所にしてよかった。市長も視野が広い人物でボールドの未来を一緒に考えてもらえる方だった。会議に使うサヴィーノの館に戻ると何人も捕えられていて宰相が兵に指示を出していた。早速か。


「宰相殿、この者たちは?」
「今日の会議に反対する者たちだ。口々に自分たちの要求を叫びながら入り込んできた」
「なるほど。いろんな言い分はあるでしょうけど」
「ホーシーズの宿でも数人捕えたそうだ。こちらに護送されてくる」
「あちらもですか」
反対派がいるとは聞いていたが、この人数にはあきれた。私も取り調べに入りたい気分だ。




ホーシーズの宿で捕えた反対派を加え、他にも兵士に絡んできた者や市の庁舎に乗り込んで行った者も集まってきた。合計十五名。
サヴィーノの館の前に十五名が並べられた。
「この者たちは今日の会議に反対する意見を持っている。ただ一方的に意見を押しつけ今日の会議を中止させる行動は法律に背くために捕えた。今回の会議の日程が終わるまで監禁する」
宰相から民衆に説明し拍手を受けた。


会議開始まであと一時間。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

隻腕令嬢の初恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,313pt お気に入り:101

貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:4,805

婚約者は私を溺愛してくれていたのに、妹に奪われた。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,489pt お気に入り:17

あなたの愛なんて信じない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:118,826pt お気に入り:4,063

異世界にきたら天才魔法使いに溺愛されています!?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:25,930pt お気に入り:918

『そうぞうしてごらん』っていうけどさ。どうしろっていうのさ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:461pt お気に入り:94

処理中です...