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【22話】勉強会
しおりを挟む次の休日。
期末試験に向けた勉強会が、シードラン子爵邸のゲストルームにて開催された。
参加者はリヒト、ステラ。そしてリリーナと、クロードだ。
横長のソファーには、リヒトとステラが隣り合って座っている。
「まさかリヒトさんが、あのリリーナ様とクロード様とお友達だったとは。びっくりしちゃいました」
間に机を挟んで対面のソファーに座っている二人に、ステラは驚きを隠せていない。
学園きっての有名人である二人と、パッとしない地味な男子生徒が友達だったのだ。
そりゃ驚きもするだろう。
「こいつらとは色々とあってな」
「私の方は、あんたと友達になった覚えはないけどね」
リリーナが、ふふん、と楽し気に鼻を鳴らした。
(本当に可愛げがない女だ)
ケッ、とリヒトは口を尖らせる。
「それから、略称はいらないわよ。同い年なんだし」
「俺にも敬称はつけなくていいぞ」
「分かりました。えっと、ステラさん、クロードさん。改めてよろしくお願いしますね!」
礼儀正しい挨拶を受けた二人は、口元に微笑みを浮かべて頷く。
その直後。
レリエルがゲストルームに入ってきた。
顔見知りの二人には「お久しぶりです」、初対面のステラには「初めまして」と挨拶したレリエル。
それが終わると、リヒトを部屋の外に連れ出した。
「まったく、お兄様も隅に置けませんね」
「なんのことだよ?」
「とぼけちゃってえ」
このこの、とリヒトの脇腹を肘でちょんちょん。
含みを持った、悪い笑いを浮かべる。
「二股のことですよ! しかも二人とも、ものすごーくお可愛いときた! いったいどんな手を使って誑かしたのですか!」
「……レリエル。お前は盛大に勘違いしているぞ」
「隠さない隠さない!」
真実を告げたのだが、レリエルはまったく信じていなかった。
こういう、思い込みが激しいところも、彼女のマイナスポイントだ。
「それで私は、どちらをお兄様とくっつければいいのでしょう? リリーナ様ですか、それともステラ様ですか?」
「俺たちは今から試験勉強をするんだよ。お前がいても邪魔なだけだから、自分の部屋に戻ってろ」
「つまんないです!」
だだをこねるレリエルに、リヒトは首を横に振った。
今日は期末試験の勉強をしに集まったのだ。
レリエルのサポートはいらない。
「お兄様の人でなし!」
捨て台詞を吐いたレリエルは、不機嫌そうにムスっとしてから私室へと戻っていった。
「ったく、なんだったんだよ……」
勝手に勘違いして勝手に不機嫌になられたリヒトは、踏んだり蹴ったりだ。
深くため息を吐いてから、ゲストルームへと戻った。
そこではリリーナが、対面に座るステラに勉強を教えていた。
「この問題には、さっき教えた公式を当てはめてみなさい」
「えっと…………こうでしょうか」
「うん、正解よ!」
「すごいです! リリーナさん、とっても分かりやすい!」
リリーナ先生の教え方は好評なようだ。
(この様子じゃ俺の出番はなさそうだな)
好評なようだし、ステラの先生役はリリーナに任せた方が良いだろう。
小さく笑ったリヒトはステラの隣に腰を下ろし、自身も試験勉強を始めた。
じーっ……。
穴が空くような視線を感じる。
出どころは真正面。
背筋をピンと伸ばし、腕を組んでいるクロードからだった。
視線が気になって仕方ないリヒトは、ペンを動かしていた手を止め、代わりに口を動かす。
「お前は勉強しないのか?」
「必要ない。学園で習う勉学の範囲は、十年前にマスターしている」
そんな人間離れしたことを冗談でなく淡々と言ってくるあたり、流石は超天才のクロードだ。
凡人とは出来が違うと、改めて実感する。
「リヒトは、どこか分からない部分はあるか? 何でも聞いてくれ」
「いや、大丈夫だ。気持ちだけありがたくもらっとく」
「そうか。……それなら、少し外を歩かないか? お前に話がある」
「おう。いいぜ」
立ち上がった男子二人。
女子二人を残したまま、部屋の外へ連れ立って歩いていった。
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