妹の尻ぬぐいのため、奴隷として公爵家に売り飛ばされた私~待っていたのは悲惨な運命……ではなく、公爵家当主とその愛娘と過ごす幸せな生活でした

夏芽空

文字の大きさ
22 / 27

【22話】不可解な訪問者


 午前八時。
 朝食を摂り終え私室に戻ってきたエレインは、令嬢教育の準備をしていた。

 今日は学園の週休日。
 講師であるエレイン、生徒であるフィオ。
 両名にとっての休日となっている。
 
 しかし、休日であっても休まず令嬢教育は行われる。
 学園が休みであろうとなかろうと、二人とっては関係ないのだ。
 
「さて、行きましょうか」
「エレイン。少しいいか?」

 フィオのところへ向かおうとしたタイミングで、リファルトが部屋にやって来た。
 眉間に皺をよせ、なにやら難しい顔をしている。
 
「……実は今、あの女――ノルン・レルフィールが訪ねてきている」
「ノルンが!?」

 視界がぐるぐると回り出し、動悸がし出す。
 ノルンの名を聞いたせいで、体の感覚がおかしくなってしまった。

「どうして……」
「フィオに手をあげたことの謝罪。それから、君と俺に話があるらしい。……何を企んでいるか知らんが、真正面から打ち砕いてやる。だから俺は話の席に着くつもりだ。しかし、君はどうする? 無理して出る必要はないぞ」
「…………いえ、私も出ます」

 あのノルンが、素直に謝罪をしに来たとは思えない。
 おそらくそれはフェイクだ。
 何か別の目的があるはず。
 
 それが何なのかは分からないが、エレインを目の敵にしている彼女のことだ。
 エレインが幸せな生活を送っているという噂をどこかで聞きつけ、それを壊しに来たのかもしれない。
 
(もしそうだとしたら、絶対に阻止しなくちゃ……!)
 
 これはエレインが蒔いてしまった種だ。
 リファルトだけに任せるという訳にはいかない。
 
 嫌で嫌でしょうがないが、これも今の幸せを守るため。
 エレインは腹をくくるのだった。
 
 
 リファルトと一緒に、ゲストルームのソファーに横並びで座って待つこと数分。
 
 ノルンが部屋に入ってきた。
 こちらへ向かってくる彼女は、いつもとは違う神妙な面持ちをしていた。
 
「リファルト様、そしてお姉様。お久しぶりです。……まずは、謝罪をさせてください」

 ノルンの顔がリファルトの方へと向いた。
 瞳にうっすらと涙をため、申し訳なさそうな顔をしている。
 
「大切なご息女に手をあげてしまい、本当に申し訳ございませんでした!」

 背筋をピンと立てたノルンは、深々と頭を下げた。
 綺麗な所作に、誠意を感じる――という人も、中にはいるかもしれない。
 
 しかし、ことエレインにおいては違った。
 
(……随分手の込んだ演技ね)
 
 頭を下げているノルンに対し、冷めきった視線を送る。
 ノルンがどういう人間が知り尽くしているので、演技をしているとすぐに分かった。
 
 そして、リファルトも騙されてはいなかった。

「謝罪はもういい。本題に入れ」

 呆れ顔で、冷たい声を放つ。
 
 短い間とはいえ、彼もノルンと暮らしていたのだ。
 謝罪をするような真っ当な人間ではないと、ちゃんと見抜いているのだろう。
 
「はい! ありがとうございます!」

 顔を上げたノルンの口元には、大きな笑みが浮かんでいた。
 
 自分に絶対的な自信を持っている彼女のことだ。
 リファルトが許してくれた、とでも思っているのだろう。
 
 演技を見破られているとは、まさか夢にも思っていないはずだ。
 
「失礼しますね」

 うやうやしい態度はどこへやら。
 座っていいなんて一言も言っていないのに、対面のソファーにノルンはボフンと腰をかけた。
 
「二人にお話があるんです」

(さて、ここからが本題ね……)

 緊張した面持ちになったエレインは、ゴクリと息を呑む。
 
「お姉様を返してくださいませんか?」

 放たれた言葉は、あまりにも予想外。
 衝撃的すぎて、エレインは何も言葉が出てこなかった。
感想 3

あなたにおすすめの小説

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ
恋愛
私、リサ・ミノワーズは小国ではありますが、ミドノワール国の第2王女です。 私の国では代々、王の子供であれば、性別や生まれの早い遅いは関係なく、成人近くになると王となるべき人の胸元に国花が浮き出ると言われていました。 国花は今まで、長男や長女にしか現れなかったそうですので、次女である私は、姉に比べて母からはとても冷遇されておりました。 それは私が17歳の誕生日を迎えた日の事、パーティー会場の外で姉の婚約者と私の婚約者が姉を取り合い、喧嘩をしていたのです。 婚約破棄を受け入れ、部屋に戻り1人で泣いていると、私の胸元に国花が浮き出てしまったじゃないですか! お父様にその事を知らせに行くと、そこには隣国の国王陛下もいらっしゃいました。 事情を知った陛下が息子である第2王子を婚約者兼協力者として私に紹介して下さる事に! 彼と一緒に元婚約者達を後悔させてやろうと思います! ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、話の中での色々な設定は話の都合、展開の為のご都合主義、ゆるい設定ですので、そんな世界なのだとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※話が合わない場合は閉じていただきますよう、お願い致します。

【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との
恋愛
離婚したいのですか?  喜んでお受けします。 でも、本当に大丈夫なんでしょうか? 伯爵様・・自滅の道を行ってません? まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。 収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。 (父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる) ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。