妖狐の愛した花嫁

霞/不定期更新

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「…………」
「…………」

私は無言で絃の部屋まで腕を引かれ
前を向いて歩く絃の顔を何度か見ては目を逸らす
そして自室に着くとゆっくりと布団の上に下ろされる

「あの…」
「隣りに座ってもいい?」

そう言うと返事を聞くこと無く隣りに座り
私の頬を一撫でし目を伏せた

「ずっと…」
「え…?」
「ずっと苦しませてごめんね…
これからはちゃんと優しくするから
だから…今度こそ僕と一緒に居て!!」
「絃…?」

「お願い…陽葵…!」
「…少し考えさせて」
「分かった…」

悲しそうに微笑んだ絃の姿に私は顔を赤くして
思いっきり目を逸らしてしまった

「どうしたの?」
「な、何でもないです!」

慌てふためく私の姿を絃は首を傾げて見つめる

「(恥ずかしい…)」
「(顔が赤い…?一体どうしたんだろ…?まさか風邪!?)」

2人は正反対の考えをして
ものの見事にすれ違っていた

「まずはご飯だよ」

そう言い僕は宇月を呼んだ

「お呼でしょうか絃様」
「ご飯はある?」
「勿論でございます」
「悪いが此処に持ってきて欲しいんだ」
「かしこまりました」
「お願いね」

はいと宇月さんは返事を返し踵を返して厨房へと向かった

「私はいりません」

そう伝えると絃の強い眼差しで睨まれてしまい
私はその場で固まってしまいました

「ご飯はちゃんと食べてじゃないと倒れちゃう」
「私は大丈夫です」
「良いから」
「……………」

黙り込む私をバツの悪そうに顔を逸らすも絃の手は
私の手の甲をそっと撫でた

「…っ」
「嫌…?」
「嫌と言ったら離してくれるの?」
「…ううん離さない」

「昔は嫌な顔をされて私の手を振り払ったのに
随分と変わったね」
「そうだね、この性格のせいで大事な人を
失うくらいなら性格ぐらい変えるよ」
「え…?」

そう言い絃はそっと私の頬に手を添え
一撫でしてからゆっくりと離れ

「そろそろご飯が来るね」
「お食事をお持ち致しました」
「そこに置いておいてくれ」
「かしこまりましたでは失礼致します」
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