化学ファンタジア

saiha

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恋愛編

22話:時戻しの化学式

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 夏の暑い日の中、2人はバスターミナルに集合していた。コバルトもフラーレンも大荷物だったが楽しみが大きかったので2人きりの時間を存分に楽しく過ごす事にした。バスに乗り込んで2人はずっと話をした。興奮してるのだろうと周りから見られていた。
「ずっとあの世界で2人きりになってたからなぜか違和感ないな…」
「あの世界ってよりも幼馴染だからそんなこと言わないの!ていうか、ネックレス付けてる時点で夫婦みたいなものだよ」
 フラーレンとコバルトの胸元には、光り輝くコバルト石とダイヤモンドが下げられていた。海岸線がずっと続き、2人が寝ている間にバスは目的地へと到着した。水着に着替えるべく、2人はそれぞれの更衣室へ向かった。コバルトの水着はよくある青い半ズボンのようなものに上から羽織る白のカーディガンみたいなものを着ていた。フラーレンは、白いビキニとパンツには金具のついた金色の輪っかが飾られていた。肌の白い2人だったので日焼けを楽しみにしていた。しかし、こんがりと焼きたいからかお互いの体に日焼け止めを塗り合った。
「お互いで塗り合うのってくすぐったいね。あまり触られたくないところとかは、コバルト以外は許さないけどコバルトだから信用できるもん」
 2人のいちゃつきに来ていた人たちは羨ましそうに見ていた。なぜなら、2人の容姿はとてもお似合いなカップルでもあるからだ。そして、2人の肌は白く輝きを増していた。
「なんか、懐かしいね。こうやって異世界に数週間前はいたのにそれがなぜか2年も3年も前にいたような懐かしさを感じる!」
「それは結構分かる!でもさ、仮にあの世界にずっといたらこうやって海水浴楽しめてなかったかもしれないな…。僕はフラーレンとこうやって幸せに楽しめるのは本当に楽しいし、良い時間戻しになったようなそんな気がする」
 海で泳ぎながらそんな話をした。日差しもマックスになり、肌をこんがり焼くのにちょうど良い感じになった。フラーレンは初めての日焼けにサングラスをかけて日傘の下でお昼寝していた。日焼け痕にネックレスがやられないように自身の手に持ってそのまま疲れたのか眠った。コバルトは、2人で楽しめるものをフラーレンが寝ている間に用意した。1時間後目を覚ましたフラーレンはこんがり小麦色に焼けた肌を見て満足していた。
「すごいや、こんなに綺麗な小麦色初めてだ…。ビキニ着ちゃってるから日焼けしたと分かっちゃうけど、コバルトがかわいいって言ってくれると思って着たからそんなコバルトも綺麗に割れた腹筋で顔も美男子。本当にそんな人と巡り会えてよかった!」
 ネックレスを付け直してサングラスを外した。そして、コバルトは喉が渇いただろうと思ってココナッツを割った容器にトロピカルジュースの入ったビーチスペシャルジュースを持ってきてくれた。
「これ、良かったらどうかな?流石に長時間この日差しを受けて喉も乾くだろうからと思って…てか、小麦色のフラーレン可愛い!それに、言うべきか否か思ってしまったけどフラーレンの来てるビキニも可愛いね。幼い時より成長して見ると本当に可愛いって思うよ」
 コバルトの感想に可愛いと思ったフラーレンだった。2人はコバルトが買ってきたジュースを飲みながらネックレスをかざしてくっつけた。あの時の化学式は残ってるのかを2人は興味本意で確認した。しかし、あの時の化学式は刻まれていなかった。
「それにしても、本当にボイルさんからこんなのもらったって本当なのかなって思うよね。コバルトからだったら私は心から喜んでるかなぁ」
 ジュースを飲んでる最中だったコバルトは少し動揺して、ジュースを吹き出してしまった。そして中身のジュースも無くなってフラーレンのビキニに付いてしまった。
「すまない…。ボイルさんの事をずっと考えていたら君の一言でちょっと喉引っかかっただけだから…フラーレンの大切で綺麗な水着を台無しにして申し訳ない」
 フラーレンは何故かコバルトが拭こうとタオルを用意してた時、フラーレンはコバルトの顔を近づけてそのまま2人はキスした。
「君の失敗なんか大丈夫だよ。だって、あの世界にいた時も私のために頑張ってた姿見てたからさ。この汚れなんかもコバルトとの思い出だと思うし、洗えば消えてしまう。だから今は洗わないでそのままにさせて。でもその代わり、コバルト…今日だけは私の行動許して」
 コバルトは紅潮した。幼馴染からしかも水着でこんな形になるだなんて想像していなかったからだ。コバルトもそれに応えるように、フラーレンを抱きしめた。フラーレンは笑顔だった。コバルトもささやくように話した。
「今日だけはフラーレンのことゆっくり知りたいから君がしたいようにしてみて…君が伝えたいって思う事を僕にぶつけてほしい。それに、僕も同じ気持ちであの世界にいた時は僕がおかしくなった時にフラーレンのおかげで正気に戻ることができた…でも流石に暑くなってきたね。かき氷買ってくるよ。フルーツが食べたいだろうからフルーツ主体のかき氷食べよう」
 フラーレンが飲んでいたジュースの氷は2人の熱でカランっと音を立てた。そして、フラーレンにかかったジュースの付いた水着は胸元についてしまったものも何故かベタつく事もなく、フラーレンは幸せな気分になった。写真を撮ったり、海の家で休んだりアクティビティを楽しんで気づいたら夕方になっていた。綺麗な夕焼けに2人は見惚れていた。目の前にいたカップルがそのまま通り過ぎていったが、その姿はあの世界にいたプロパノールとアクリロニトリルにも似ていた。
「さて、服に着替えて帰ろうか!もうそろそろ帰らないと心配してしまうからさ」
 コバルトが言った途端フラーレンはその反射でコバルトの胸に飛びついてハグした。
「今日は私のために本当にありがとう!コバルトの水着姿本当にかっこよかったし、いつもよりイケメンだった。私の事守ってくれて本当にありがとう。大好きだよ…コバルトっ」
 フラーレンは笑顔で泣きながらコバルトにお礼を言った。フラーレンの涙は彼女のビキニをグッショリと濡れてしまったが、あの世界でカリウムに人質となった時のつらい涙ではなかった。コバルトもフラーレンの成長に嬉し涙を流した。
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