5 / 7
5品目:英国騎士と女王が愛したもの
しおりを挟む
次の料理を考える星川だったが、何故か恋が芽生えることが多くなった。
「新作考えなきゃいけないのに、山崎君のことばかり考える。ちゃんとしなきゃな…」
独り言を話す中、勢いよくドアが開く。
「お疲れ様です。星川シェフ!」
「あ、あぁお疲れ様、山崎君。ちょうど良かった。次の新作料理を考えてたんだけど何かいい案ない?」
顔を赤らめる星川に、何がどう起きたのか状況把握ができない山崎。その手には歴史学の為に調べ物をしたと思われる国の数々が記載されていた。
一部の資料がバラバラに落ちると、とある1枚の国に星川は興味を持つ。
「イギリス女王の愛した食べ物と健康寿命の関係…これって何を調べようとしてるの?」
「今在位なさってるエリザベス女王様のことで、世界の王族や貴族でも稀に見るご長寿なので何故こんなに長生きで健康に過ごせるのだろうかと思って調べてたところです。ただ、イギリス料理はお世辞にも美味しいとは言い難いですが…」
言葉を濁す山崎だったが、星川はメニューを考えるテーマを決める。
「よし、イギリス料理を基礎としてやってみようか!」
「いや、話聞いてましたか?シェフ!」
利益にならない料理こそ意味がない飲食だが、やらないジャンルだからこそ価値がある。世界を股に掛ける女料理人の真髄が試される。
「このスコッチエッグって高級デパートでもよく売られてるわね。ちょっと作ってみようよ」
「スコッチエッグはイギリスの貴族がよく行っていた狩猟の際に食べられるもので、今の私たちがよくやってるピクニックの元祖みたいなものです。小腹が空いた時に食べる、いわばおやつ感覚だという文献も残っています。ゆで卵は、すぐに栄養補給ができますからね」
星川は同時並行で卵を茹でながら、挽肉に玉ねぎと塩胡椒、醤油にオイスターソースとナツメグを加える。茹で上がった卵に、肉の種を覆わせて小麦粉と卵、パン粉の海に潜らせて油の中へと入れた。
「シンプルにしたかったけど、日本人好みにしてみる。面白そうだ」
星川はそう言うと、まさかの食材に手を出した。それは日本人の大好きなものだ。
「星川シェフ…これってイタリア料理の…」
「よく知ってるね!原型はイタリア料理アランチーニ。ライスボールを揚げたものって言った方が早いかな」
星川の融合するものはイタリア料理のアランチーニに、日本人の好きな米、イギリス貴族が好むスコッチエッグで、例えるなら今ここに日伊英の首脳会談が行われるという感覚だ。
上からかけるソースは、トマトとバジルを混ぜたもので隠し味に粉チーズを少々加えている。揚げたての上にかけて2人は頬張る。
「熱々ですね!そして普通なら火を通す際に卵は固まりすぎるはずなのに、半熟の境目で火が通ってる…。一体何をしたのですか?」
「ゆで卵は温泉たまごよりもちょっと時間をかけて茹でてるよ。いい感じにとろとろと卵の歯ごたえがアクセントになってる理由は、このスコッチエッグはオーブンで焼いてるよ。これが、今回の種明かしかな」
納得の説明だ。この星川という女は、料理については本当にヤバい腕を持っている。しかし、それだけでは商売成り立つわけがないのでもう1品考えることにした。
「イギリスって料理美味しいかな…世界的に言われるのは不味い料理だってシェフ聞きません?」
「話は聞くけど、私は美味しいと思うよ?工夫次第だけどフィッシュ&チップスは良くできたものだと思う。油の使用量は異常だけど…」
イギリス料理の歴史を語る2人。そんな星川の脳内に雷の如きアイデアがほど走る!
「イギリス式ハンバーグ作ってあげる!」
「それは…何なんですか?」
山崎の質問に答える暇なく、残っていた挽肉を玉ねぎやつなぎを混ぜ込む。出来た種を型に移し込んでオーブンの中へとぶち込む。
「シェフ…これってミートローフですか?」
「その通り。だから言ったじゃん!イギリス式ハンバーグだって」
ミートローフは見た目で言えば大きなハンバーグ。しかし、味わってみると肉の旨味と玉ねぎの旨味が分かるので星川はイギリス式ハンバーグと称した。
「山崎君、ミートローフの歴史教えて!メニューの説明に書くから」
「え、あ、はい。分かりました。ミートローフはどうやら古代ローマ時代にて作られたものが先祖みたいです。この時代から豚肉を細かく刻んで調理されていたようで、その古代ローマ時代の料理本アピシウスというラテン語の本に記されています。それが今のミートローフという形になったのが、中世ヨーロッパ時代の話です」
全てを書き留める星川。メニュー表には既に週間限定料理を作り上げていた。
「よし!出来た。流石山崎君だよ。めんどくさいけど、私のために忠誠を尽くしてね。山崎閣下」
「か…閣下?完璧にイギリス王族の中へ溶け込んでる…。まぁいいや。了解致しました女王陛下」
ちょっとずつ距離が縮まる2人。しかし、SNSで評判になった明治料理以降それを妬む誹謗中傷者がいた。
「古賀を黙らせた料理人はこいつか。なるほど…うちの仲間をコケにしやがって」
先が暗い料理の道。週間限定イギリス料理の開店が刻々と迫る。
「新作考えなきゃいけないのに、山崎君のことばかり考える。ちゃんとしなきゃな…」
独り言を話す中、勢いよくドアが開く。
「お疲れ様です。星川シェフ!」
「あ、あぁお疲れ様、山崎君。ちょうど良かった。次の新作料理を考えてたんだけど何かいい案ない?」
顔を赤らめる星川に、何がどう起きたのか状況把握ができない山崎。その手には歴史学の為に調べ物をしたと思われる国の数々が記載されていた。
一部の資料がバラバラに落ちると、とある1枚の国に星川は興味を持つ。
「イギリス女王の愛した食べ物と健康寿命の関係…これって何を調べようとしてるの?」
「今在位なさってるエリザベス女王様のことで、世界の王族や貴族でも稀に見るご長寿なので何故こんなに長生きで健康に過ごせるのだろうかと思って調べてたところです。ただ、イギリス料理はお世辞にも美味しいとは言い難いですが…」
言葉を濁す山崎だったが、星川はメニューを考えるテーマを決める。
「よし、イギリス料理を基礎としてやってみようか!」
「いや、話聞いてましたか?シェフ!」
利益にならない料理こそ意味がない飲食だが、やらないジャンルだからこそ価値がある。世界を股に掛ける女料理人の真髄が試される。
「このスコッチエッグって高級デパートでもよく売られてるわね。ちょっと作ってみようよ」
「スコッチエッグはイギリスの貴族がよく行っていた狩猟の際に食べられるもので、今の私たちがよくやってるピクニックの元祖みたいなものです。小腹が空いた時に食べる、いわばおやつ感覚だという文献も残っています。ゆで卵は、すぐに栄養補給ができますからね」
星川は同時並行で卵を茹でながら、挽肉に玉ねぎと塩胡椒、醤油にオイスターソースとナツメグを加える。茹で上がった卵に、肉の種を覆わせて小麦粉と卵、パン粉の海に潜らせて油の中へと入れた。
「シンプルにしたかったけど、日本人好みにしてみる。面白そうだ」
星川はそう言うと、まさかの食材に手を出した。それは日本人の大好きなものだ。
「星川シェフ…これってイタリア料理の…」
「よく知ってるね!原型はイタリア料理アランチーニ。ライスボールを揚げたものって言った方が早いかな」
星川の融合するものはイタリア料理のアランチーニに、日本人の好きな米、イギリス貴族が好むスコッチエッグで、例えるなら今ここに日伊英の首脳会談が行われるという感覚だ。
上からかけるソースは、トマトとバジルを混ぜたもので隠し味に粉チーズを少々加えている。揚げたての上にかけて2人は頬張る。
「熱々ですね!そして普通なら火を通す際に卵は固まりすぎるはずなのに、半熟の境目で火が通ってる…。一体何をしたのですか?」
「ゆで卵は温泉たまごよりもちょっと時間をかけて茹でてるよ。いい感じにとろとろと卵の歯ごたえがアクセントになってる理由は、このスコッチエッグはオーブンで焼いてるよ。これが、今回の種明かしかな」
納得の説明だ。この星川という女は、料理については本当にヤバい腕を持っている。しかし、それだけでは商売成り立つわけがないのでもう1品考えることにした。
「イギリスって料理美味しいかな…世界的に言われるのは不味い料理だってシェフ聞きません?」
「話は聞くけど、私は美味しいと思うよ?工夫次第だけどフィッシュ&チップスは良くできたものだと思う。油の使用量は異常だけど…」
イギリス料理の歴史を語る2人。そんな星川の脳内に雷の如きアイデアがほど走る!
「イギリス式ハンバーグ作ってあげる!」
「それは…何なんですか?」
山崎の質問に答える暇なく、残っていた挽肉を玉ねぎやつなぎを混ぜ込む。出来た種を型に移し込んでオーブンの中へとぶち込む。
「シェフ…これってミートローフですか?」
「その通り。だから言ったじゃん!イギリス式ハンバーグだって」
ミートローフは見た目で言えば大きなハンバーグ。しかし、味わってみると肉の旨味と玉ねぎの旨味が分かるので星川はイギリス式ハンバーグと称した。
「山崎君、ミートローフの歴史教えて!メニューの説明に書くから」
「え、あ、はい。分かりました。ミートローフはどうやら古代ローマ時代にて作られたものが先祖みたいです。この時代から豚肉を細かく刻んで調理されていたようで、その古代ローマ時代の料理本アピシウスというラテン語の本に記されています。それが今のミートローフという形になったのが、中世ヨーロッパ時代の話です」
全てを書き留める星川。メニュー表には既に週間限定料理を作り上げていた。
「よし!出来た。流石山崎君だよ。めんどくさいけど、私のために忠誠を尽くしてね。山崎閣下」
「か…閣下?完璧にイギリス王族の中へ溶け込んでる…。まぁいいや。了解致しました女王陛下」
ちょっとずつ距離が縮まる2人。しかし、SNSで評判になった明治料理以降それを妬む誹謗中傷者がいた。
「古賀を黙らせた料理人はこいつか。なるほど…うちの仲間をコケにしやがって」
先が暗い料理の道。週間限定イギリス料理の開店が刻々と迫る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる