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13話:知能戦

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 欅の奪い合いが始まろうとした。
元素分析と化学部は有利なもので戦おうとしたが冨樫から抗議が入った。

「それは化学部有利になるからおかしいじゃないですか?それをするのなら科目ではなく、欅君に決めてもらうのはどうでしょうか?」

 名案だと下原たちは頷いた。しかし堀田は納得せず、そのまま元素分析に持ち込もうとした。それを許さなかったのが梓馬だ。

「そんな事して良いのですか?プライド無いのですね!流石化学部。だから弱いのですよ」

 化学部の弱い点は頭良い割に本番は弱く、ケアレスミスで負けるという大会がほとんどだからだ。堀田はその挑発に乗って違う戦い方を要求した。
 そして梓馬は、とてもシンプルな勝負を提案した。

「それじゃ、大食いで決めましょう。ちょうどお昼の時間なので部活対抗リレーならぬ部活対抗大食い対決高校総体バージョンってことにしましょうよ!顧問も食べるルールで」

 堀田はそれに乗った。早速、会場にしようと家庭科室を舞台に大食い対決の準備をした。梓馬はその時点で謀っていた。それを下原だけに教えた。考えを聞いて、

「それは流石すぎる!よく見てますね」
「ささ、下原と他の物理部員はお昼まだだろ?俺が奢るから食え食え」

 物理部員と化学部員全員が家庭科室に集合した。そのルールが公開された。

「ルールは簡単。全員参加で皿の枚数が多い部活を勝利とする!お題はこの箱から両部活の部長がジャンケンで決めてください」

 部長の石角が立ち上がった。ジャンケンの相手として化学部からはスタイル抜群のモデル体型な女の子がきた。

「じゃんけん…ポンっ!」

 勝ったのは石角だった。そして梓馬手作りの箱に手を突っ込んだ。
 箱の中にある1枚の紙を取るとそこには"寿司"の2文字が書いてあった。下原たちは喜んだ。そして相手の化学部も喜んでいた。梓馬は早速頼んで寿司が来るのを待った。その総額、20万円分で百円寿司のお店にて購入したので合わせて2,000貫分の巻物や握り寿司と頼みすぎだろと突っ込まれる量だった。
 梓馬は続けた。

「じゃあ、第1回お寿司大食い対決と行きましょう!制限時間は2時間。カウントダウン開始3.2.1.スタートっ!」

 スタートの合図と同時に下原と寺野は高校総体参加できなかった分を晴らすべく、2貫食いを行った。開始僅か30分で、その2人だけの計算では400皿に上った。そんな2人を応援していたのが鶴居と加賀木だった。
 梓馬に電話で呼ばれたということで半ば強引ながらも参加してくれた。化学部の方は元大食いでもあった堀田の活躍により、500皿を超えた。

「あの顧問早すぎだろ!てか、顧問も参加するなんてありかよ」「じゃ、僕も食べるよ。冨樫先生と東国先生は様子見ながら追加注文を。僕の名前でお願いします。」

 物理部は左右田と前桜と湯田、富林を除くメンバーで応援してた鶴居と加賀木も参加し、顧問の梓馬も食べて化学部はほぼ顧問が食べるという泥試合な戦況となった。大食い開始から45分、最初の20万円分はあっという間に食べ終わった。差は480皿と520皿で化学部がリードした。追加でまた20万円分の寿司が届き、また食べ進めた。

「梓馬先生が奢るんだよね…。もう、40万いってるよ…?」
「社長は違うな」

 加賀木と鶴居が話をしてると、梓馬はギアチェンジして1皿20秒でのペースで食べた。負けずと堀田も頑張ったが喉が詰まり、吐き出した。戦況が物理部へと傾き、2時間後計測すると物理部は748皿、化学部は744皿の僅差で幕を閉じた。欅は物理部での大会出場が決まった。

「美味しく勝ったー!と言いたいけどお腹痛いな…。下原お前食いすぎだろ!お前1人で200皿食ってるぞ(笑)まぁ、俺の奢りだからいいか…」

 天井へと積み上げた皿に一同は拍手した。堀田は用事を思い出したかのようにそのまま帰った。欅は何故か寂しそうだった。

「あれれ?欅君寂しそうだね!ハーレムにまだなりたかったのかなー。顔にやけてるよ」

 欅はうわぁと叫んで物理室へ戻った。
 大会へのピースは揃った。水素自動車を得るべく、最後の確認を行おうと石角は準備した。多くの実験書類の中、欅はちょっと待ってと言ってパソコンをプロジェクターに接続して1つの動画を流した。そこに映し出されてるのは、留学中の前桜だった。

「みんな!もうすぐ大会だけど準備できた?私もあと数週間したら帰国するから待っててね!また行かないといけなくなるけどその時に色々話そうね。下原!その日までに用意しててよね。それじゃみんな、元気出して頑張ってね」

 下原に対しての当たりは相変わらずだが、恒例となった下原借金弄りは爆散しないかと心配されるほどだった。その動画が終わったあと、欅は説明した。

「前桜が言うには夏に帰ってくるそうだ。だから打ち上げは夏にして、みんなで楽しもうということだ。石角や俺、鶴居、喬林、ここにはいないけど湯田、左右田、富林にとっては最後の爪楊枝大会だから水素自動車持ち帰って改めて気を引き締めて取り組むぞ!」

 欅の一言で活気が溢れた。その振動でボツになった爪楊枝がぽきりと折れるほどだった。
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