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18話:物理部の本気(中編)
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大会が間近になった物理部だったが、何者かによって本番用の加工した爪楊枝全てが壊されていた。不幸中の幸いなのは、データは全て共有していたことだ。全ての物理部員は総力を上げて爪楊枝の加工に取り組んだ。しかし、1人欠けていることに加賀木は気づいた。
「あれ、欅先輩がいないのはなぜ?というより、緊急会合からいないような…」
それを聞いた富林と鶴居は違和感に気づいた。爪楊枝の割れ方や壊された後の断面図を見たところ、1本1本同じ箇所のところで折られてることだった。大きな問題は文化部などの部活はまもなく大会が始まり、集結するはずなのに化学部だけ誰も来ていなかったという事だ。
「欅の奴、裏切ったんじゃね?女子の多い化学部へ加勢に行ったような気しかしない。裏切る時すぐ裏切るから」
「どうだろう…。でも、元々辞めたのって堀田が酷使してた事で嫌気がさして物理部来たらしいしまた戻るだなんて有り得ないよ」
富林の考察に鶴居は水を刺した。10分後、寺野が柿渋をもらって帰ってきたが何か様子が変だった。柿渋を入れてもらったバケツを置いた後、1枚の紙を広げた。
「これって…まさかだよな」
「そのまさかだ…」
石角と物理部員らが目にしたのは、化学部総員による欅奪還作戦及び物理部壊滅術と書かれた題名だった。
「やけに静かだったのはそういうことか。他の所で活動してるなこれ…」
下原が話すと、仲間思いの石角がとんでもない指示を出した。
「欅君については今は時間が足りない。爪楊枝に集中するんだ!データを作ってくれたのは欅君だ。関与してる時点で俺たちの仲間。優勝すれば一緒だからやるぞ」
一気に作業効率を上げた時、富林の携帯から通話音が流れた。相手は欅だった。
「石角…どうする?」
「スピーカーにして!もしかしたら違う人かもしれない」
富林は通話に出て聞こえるようにスピーカーモードに設定した。石角の予感は的中して相手は欅ではなく、化学部の人間だった。
「物理部の諸君。君たちの仲間である欅良人は部長である私、川原香奈美が奪った。恋を求めてる欅はすぐに引っ掛かってくれた。計算してもらった後は用済み!欅を取り戻したければ、暗号を解読しろ!」
送られた画像を見ると、そこには元素記号が無作為に記されていた。
欅はここに捕らえている。取り戻したければここへ来い!
"Ca,Li,Na,Ti,Ba,Au,Al,"
「そんな暇ない!めんどくさいから欅の事虐めるなよ」
空気の読めない下原はぶっち切った。欅の安否を確認出来ない中でもねちっこい姿と特定技術に定評があるので、それに賭けたのだろうと思われた。しかし、左右田はこの7つの元素を見て違和感を覚えた。
「こりゃバラバラだなぁ。普通どっちかに統一すりゃ良いのに金属元素と非金属元素をごちゃ混ぜにするなや…。でも、よく見れば今の俺たちにとって必要な元素だな」
左右田の見解によると、カルシウムは骨の成分、リチウムは蓄電池やスマートフォンなどの充電器、ナトリウムは電解質、チタンは合金、バリウムは健康診断、金はスマートフォンの中に組み込まれているもの、アルミニウムは唯一の空を飛べる金属というものだった。そんな見解を無視して下原は爪楊枝の加工に徹した。
「まだマシな方だ…。ここにある在庫の分は潰されてないからな。全部取り出して加工しよう!そして一気に柿渋を塗り込んで乾燥させよう。多分間に合うはず」
石角の号令に鶴居と左右田は息を合わせて加工の効率と爪楊枝の本数、質を高めた。富林はパソコンに残されたデータで検証と研鑽を重ねた爪楊枝の計算を分かりやすくして更に、印刷してプラモデルのような説明書へと変貌を遂げた。これには加工する左右田と鶴居、組み立て号令を行う石角にとっては願ってもないものだった。それをしてる中、とある場所ではまたも不穏な動きが起きようとしていた。
「君たち、僕をどうするつもりだ?いい加減この縄を解けよ!」
「そんなわけにもいかないんだよなぁ。君が化学部を辞めたことでどれだけの損失が出たことか…。君の知識と知恵、借りるからな」
「うう…流石に無理しすぎたからかフラフラする。でも部長である僕が頑張らないと誰がこの大会を優勝に導く?陸上の長距離よりも物理部の爪楊枝タワーの方が100倍楽しいぞ!」
石角部長による奮闘が伝わったのか、欅を除く全ての物理部員は最後の大仕事へと移った。それは、遠方にいる前桜の為でもあり節目の大会でもあるからだと1人1人肝に銘じていた。
欅の拉致された場所はどこに?そして、急がれる爪楊枝タワー大会。互いの運命は天に委ねられた。
「あれ、欅先輩がいないのはなぜ?というより、緊急会合からいないような…」
それを聞いた富林と鶴居は違和感に気づいた。爪楊枝の割れ方や壊された後の断面図を見たところ、1本1本同じ箇所のところで折られてることだった。大きな問題は文化部などの部活はまもなく大会が始まり、集結するはずなのに化学部だけ誰も来ていなかったという事だ。
「欅の奴、裏切ったんじゃね?女子の多い化学部へ加勢に行ったような気しかしない。裏切る時すぐ裏切るから」
「どうだろう…。でも、元々辞めたのって堀田が酷使してた事で嫌気がさして物理部来たらしいしまた戻るだなんて有り得ないよ」
富林の考察に鶴居は水を刺した。10分後、寺野が柿渋をもらって帰ってきたが何か様子が変だった。柿渋を入れてもらったバケツを置いた後、1枚の紙を広げた。
「これって…まさかだよな」
「そのまさかだ…」
石角と物理部員らが目にしたのは、化学部総員による欅奪還作戦及び物理部壊滅術と書かれた題名だった。
「やけに静かだったのはそういうことか。他の所で活動してるなこれ…」
下原が話すと、仲間思いの石角がとんでもない指示を出した。
「欅君については今は時間が足りない。爪楊枝に集中するんだ!データを作ってくれたのは欅君だ。関与してる時点で俺たちの仲間。優勝すれば一緒だからやるぞ」
一気に作業効率を上げた時、富林の携帯から通話音が流れた。相手は欅だった。
「石角…どうする?」
「スピーカーにして!もしかしたら違う人かもしれない」
富林は通話に出て聞こえるようにスピーカーモードに設定した。石角の予感は的中して相手は欅ではなく、化学部の人間だった。
「物理部の諸君。君たちの仲間である欅良人は部長である私、川原香奈美が奪った。恋を求めてる欅はすぐに引っ掛かってくれた。計算してもらった後は用済み!欅を取り戻したければ、暗号を解読しろ!」
送られた画像を見ると、そこには元素記号が無作為に記されていた。
欅はここに捕らえている。取り戻したければここへ来い!
"Ca,Li,Na,Ti,Ba,Au,Al,"
「そんな暇ない!めんどくさいから欅の事虐めるなよ」
空気の読めない下原はぶっち切った。欅の安否を確認出来ない中でもねちっこい姿と特定技術に定評があるので、それに賭けたのだろうと思われた。しかし、左右田はこの7つの元素を見て違和感を覚えた。
「こりゃバラバラだなぁ。普通どっちかに統一すりゃ良いのに金属元素と非金属元素をごちゃ混ぜにするなや…。でも、よく見れば今の俺たちにとって必要な元素だな」
左右田の見解によると、カルシウムは骨の成分、リチウムは蓄電池やスマートフォンなどの充電器、ナトリウムは電解質、チタンは合金、バリウムは健康診断、金はスマートフォンの中に組み込まれているもの、アルミニウムは唯一の空を飛べる金属というものだった。そんな見解を無視して下原は爪楊枝の加工に徹した。
「まだマシな方だ…。ここにある在庫の分は潰されてないからな。全部取り出して加工しよう!そして一気に柿渋を塗り込んで乾燥させよう。多分間に合うはず」
石角の号令に鶴居と左右田は息を合わせて加工の効率と爪楊枝の本数、質を高めた。富林はパソコンに残されたデータで検証と研鑽を重ねた爪楊枝の計算を分かりやすくして更に、印刷してプラモデルのような説明書へと変貌を遂げた。これには加工する左右田と鶴居、組み立て号令を行う石角にとっては願ってもないものだった。それをしてる中、とある場所ではまたも不穏な動きが起きようとしていた。
「君たち、僕をどうするつもりだ?いい加減この縄を解けよ!」
「そんなわけにもいかないんだよなぁ。君が化学部を辞めたことでどれだけの損失が出たことか…。君の知識と知恵、借りるからな」
「うう…流石に無理しすぎたからかフラフラする。でも部長である僕が頑張らないと誰がこの大会を優勝に導く?陸上の長距離よりも物理部の爪楊枝タワーの方が100倍楽しいぞ!」
石角部長による奮闘が伝わったのか、欅を除く全ての物理部員は最後の大仕事へと移った。それは、遠方にいる前桜の為でもあり節目の大会でもあるからだと1人1人肝に銘じていた。
欅の拉致された場所はどこに?そして、急がれる爪楊枝タワー大会。互いの運命は天に委ねられた。
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