27 / 28
27
しおりを挟む
「……ああ、この景色ですわ。これこそが、私が夢にまで見た『美の終着駅』……いいえ、新たなる楽園の入り口ですわ!」
南の海を一望できる、白亜の別荘のバルコニー。
私は、エメラルドグリーンに輝く海と、そこに降り注ぐ太陽の光を浴びながら、深呼吸をしました。
潮風が運んでくるのは、塩の香りだけではありません。
私の背後に集まった、至高の美女たちが放つ「芳醇な美」のオーラです。
「お嬢様。……もう、私のトランクには一ミリの隙間もありませんよ。中身はすべて、南国の花で作った新作の化粧水と、皆様の寝顔を隠し撮り……いえ、記録したスケッチブックで埋まっています」
アンが呆れた様子で、冷たいフルーツ水を差し出してくれました。
「いいのよアン。これこそが私の資産、私の命。……さあ、始めましょう! 今夜は、私たちがこの過酷な(?)旅を乗り越え、辿り着いたことを祝う、最高に美しい晩餐会ですわ!」
広間に入ると、そこにはすでに「主役」たちが勢揃いしていました。
純白の薄いドレスを纏い、まるで波間から現れた女神のようなリリアン様。
情熱的な真紅の水着……の上に、透けるようなシルクの羽織を重ねたエレオノーラ様。
そして、軍服を脱ぎ捨て、動きやすいけれど気品に溢れたサマードレス姿のカトリーヌ様。
視界の密度が、高すぎます。
「ローズマリー様。見てください、このドレス。貴女が選んでくださったこの色が、今の私の心の色にぴったりですわ」
リリアン様が、恥ずかしそうにスカートの裾を揺らしました。
「……っ! あ、ああああ……! なんて、なんて瑞々しい! リリアン様、貴女はもう、守られるだけの蕾ではありません。今この瞬間、南国の光を吸い込んで、世界で最も気高い大輪の花へと進化を遂げたのですわ!」
「大げさですわ、ローズマリー様。……でも、嬉しいです。貴女にそう言っていただけると、自分が本当に特別な存在になった気がしますの」
リリアン様の隣で、エレオノーラ様が不敵な笑みを浮かべてグラスを掲げました。
「ちょっと、リリアンばかり褒めないで。私のこの、南国の太陽にも負けない肌の輝きはどうかしら? 貴女に教わったマッサージのおかげで、デコルテのラインがさらに完璧になったわ」
「エレオノーラ様! 貴女のその自信に満ちた立ち姿! まさに、この島を統べる若き女王ですわ! その赤髪と海の青のコントラスト……色彩学の教科書に載せるべき奇跡の一枚ですわよ!」
「ふふ、合格ね。……さあ、カトリーヌ。貴女もいつまでも柱の陰にいないで、こちらへいらっしゃいな。そのドレス、ローズマリーが鼻血を出しながら選んだ逸品でしょう?」
促されて、カトリーヌ様がぎこちない足取りで光の下へと現れました。
普段の厳しい表情が少しだけ緩み、潮風に吹かれた銀髪が柔らかく揺れています。
「……。私は、やはりこのような格好は落ち着かん。剣がないと、どうにも手持ち無沙汰でな。……ローズマリー、あまりじろじろ見るな。穴が開くぞ」
「穴が開いても、その奥に潜む貴女の騎士道精神を観賞し続けますわ! カトリーヌ様、貴女のその『慣れない格好への戸惑い』が生み出す微かな表情の揺らぎ……! これぞ、静寂の中の情熱(サイレント・パッション)! 抱いて! 今すぐそのドレス姿で私を!」
「……。よし、アン。やはりこの変態令嬢を一度、冷たい海に放り込んで頭を冷やしてこよう」
カトリーヌ様が本気で私を担ぎ上げようとしましたが、リリアン様とエレオノーラ様が笑ってそれを止めました。
「いいではありませんか。これが、私たちのローズマリー様なのですから」
テーブルに並べられたのは、地元の新鮮な果物と、見た目にも鮮やかな料理の数々。
しかし、私にとっての御馳走は、それらを優雅に口に運ぶ美女たちの所作そのものでした。
「……ふふ。婚約破棄をされた時は、どうなることかと思いましたけれど」
私はグラスを掲げ、月明かりに透かしました。
「あの時、セドリック殿下に縋り付いて泣いていたら、私は今頃、王宮の片隅でカビの生えたような毎日を過ごしていたでしょう。……ですが、見て。私の周りには、今、こんなにも素晴らしい光が溢れているわ」
リリアン様が、そっと私の手に自分の手を重ねました。
「ローズマリー様が、私たちを見つけ出してくださったのです。……貴女のその、少し変わった……いえ、とても真っ直ぐな愛が、私たちの本当の美しさを引き出してくれたのですよ」
「そうね。……私も、貴女に出会わなければ、ただの『怖い姫君』で終わっていたかもしれないわ。感謝しているわよ、ローズマリー」
エレオノーラ様が優しく微笑み、カトリーヌ様も短く頷きました。
「……私もだ。貴様のせいで、私の美意識は完全に壊されたが……。まあ、悪くない景色だ」
「皆様……。ああ、もう、幸せすぎて……! これ以上の眼福はありません! 私、もう、今この瞬間に石化して、この別荘の守り神になりたいですわ!」
「「「それは困ります」」」
三人の声が、完璧なハーモニーで重なりました。
賑やかな笑い声が、南の夜の静寂に溶けていきます。
悪役令嬢、国外追放、そして美の探求者。
私の肩書きが何であれ、今ここに、私が心から愛でる「美しき絆」がある。
それだけで、私の人生は完膚なきまでのハッピーエンドなのだと、確信したのでした。
「……さあ! 夜はまだ始まったばかりですわ! 次は皆様で、月明かりの下での『美しき影の投影会』を楽しみましょう!」
「……。アン、やっぱり海に投げ込もう。今のうちに」
「賛成ですわ」
私は愛する彼女たちに追いかけられながら、白い砂浜へと駆け出しました。
波音と共に響く、乙女たちの笑い声。
それは、どんな宝石よりも輝かしく、私の心を彩り続けるのでした。
南の海を一望できる、白亜の別荘のバルコニー。
私は、エメラルドグリーンに輝く海と、そこに降り注ぐ太陽の光を浴びながら、深呼吸をしました。
潮風が運んでくるのは、塩の香りだけではありません。
私の背後に集まった、至高の美女たちが放つ「芳醇な美」のオーラです。
「お嬢様。……もう、私のトランクには一ミリの隙間もありませんよ。中身はすべて、南国の花で作った新作の化粧水と、皆様の寝顔を隠し撮り……いえ、記録したスケッチブックで埋まっています」
アンが呆れた様子で、冷たいフルーツ水を差し出してくれました。
「いいのよアン。これこそが私の資産、私の命。……さあ、始めましょう! 今夜は、私たちがこの過酷な(?)旅を乗り越え、辿り着いたことを祝う、最高に美しい晩餐会ですわ!」
広間に入ると、そこにはすでに「主役」たちが勢揃いしていました。
純白の薄いドレスを纏い、まるで波間から現れた女神のようなリリアン様。
情熱的な真紅の水着……の上に、透けるようなシルクの羽織を重ねたエレオノーラ様。
そして、軍服を脱ぎ捨て、動きやすいけれど気品に溢れたサマードレス姿のカトリーヌ様。
視界の密度が、高すぎます。
「ローズマリー様。見てください、このドレス。貴女が選んでくださったこの色が、今の私の心の色にぴったりですわ」
リリアン様が、恥ずかしそうにスカートの裾を揺らしました。
「……っ! あ、ああああ……! なんて、なんて瑞々しい! リリアン様、貴女はもう、守られるだけの蕾ではありません。今この瞬間、南国の光を吸い込んで、世界で最も気高い大輪の花へと進化を遂げたのですわ!」
「大げさですわ、ローズマリー様。……でも、嬉しいです。貴女にそう言っていただけると、自分が本当に特別な存在になった気がしますの」
リリアン様の隣で、エレオノーラ様が不敵な笑みを浮かべてグラスを掲げました。
「ちょっと、リリアンばかり褒めないで。私のこの、南国の太陽にも負けない肌の輝きはどうかしら? 貴女に教わったマッサージのおかげで、デコルテのラインがさらに完璧になったわ」
「エレオノーラ様! 貴女のその自信に満ちた立ち姿! まさに、この島を統べる若き女王ですわ! その赤髪と海の青のコントラスト……色彩学の教科書に載せるべき奇跡の一枚ですわよ!」
「ふふ、合格ね。……さあ、カトリーヌ。貴女もいつまでも柱の陰にいないで、こちらへいらっしゃいな。そのドレス、ローズマリーが鼻血を出しながら選んだ逸品でしょう?」
促されて、カトリーヌ様がぎこちない足取りで光の下へと現れました。
普段の厳しい表情が少しだけ緩み、潮風に吹かれた銀髪が柔らかく揺れています。
「……。私は、やはりこのような格好は落ち着かん。剣がないと、どうにも手持ち無沙汰でな。……ローズマリー、あまりじろじろ見るな。穴が開くぞ」
「穴が開いても、その奥に潜む貴女の騎士道精神を観賞し続けますわ! カトリーヌ様、貴女のその『慣れない格好への戸惑い』が生み出す微かな表情の揺らぎ……! これぞ、静寂の中の情熱(サイレント・パッション)! 抱いて! 今すぐそのドレス姿で私を!」
「……。よし、アン。やはりこの変態令嬢を一度、冷たい海に放り込んで頭を冷やしてこよう」
カトリーヌ様が本気で私を担ぎ上げようとしましたが、リリアン様とエレオノーラ様が笑ってそれを止めました。
「いいではありませんか。これが、私たちのローズマリー様なのですから」
テーブルに並べられたのは、地元の新鮮な果物と、見た目にも鮮やかな料理の数々。
しかし、私にとっての御馳走は、それらを優雅に口に運ぶ美女たちの所作そのものでした。
「……ふふ。婚約破棄をされた時は、どうなることかと思いましたけれど」
私はグラスを掲げ、月明かりに透かしました。
「あの時、セドリック殿下に縋り付いて泣いていたら、私は今頃、王宮の片隅でカビの生えたような毎日を過ごしていたでしょう。……ですが、見て。私の周りには、今、こんなにも素晴らしい光が溢れているわ」
リリアン様が、そっと私の手に自分の手を重ねました。
「ローズマリー様が、私たちを見つけ出してくださったのです。……貴女のその、少し変わった……いえ、とても真っ直ぐな愛が、私たちの本当の美しさを引き出してくれたのですよ」
「そうね。……私も、貴女に出会わなければ、ただの『怖い姫君』で終わっていたかもしれないわ。感謝しているわよ、ローズマリー」
エレオノーラ様が優しく微笑み、カトリーヌ様も短く頷きました。
「……私もだ。貴様のせいで、私の美意識は完全に壊されたが……。まあ、悪くない景色だ」
「皆様……。ああ、もう、幸せすぎて……! これ以上の眼福はありません! 私、もう、今この瞬間に石化して、この別荘の守り神になりたいですわ!」
「「「それは困ります」」」
三人の声が、完璧なハーモニーで重なりました。
賑やかな笑い声が、南の夜の静寂に溶けていきます。
悪役令嬢、国外追放、そして美の探求者。
私の肩書きが何であれ、今ここに、私が心から愛でる「美しき絆」がある。
それだけで、私の人生は完膚なきまでのハッピーエンドなのだと、確信したのでした。
「……さあ! 夜はまだ始まったばかりですわ! 次は皆様で、月明かりの下での『美しき影の投影会』を楽しみましょう!」
「……。アン、やっぱり海に投げ込もう。今のうちに」
「賛成ですわ」
私は愛する彼女たちに追いかけられながら、白い砂浜へと駆け出しました。
波音と共に響く、乙女たちの笑い声。
それは、どんな宝石よりも輝かしく、私の心を彩り続けるのでした。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜
月
恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。
婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。
そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。
不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。
お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!?
死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。
しかもわざわざ声に出して。
恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。
けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……?
※この小説は他サイトでも公開しております。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
婚約破棄されたのに、王太子殿下がバルコニーの下にいます
ちよこ
恋愛
「リリス・フォン・アイゼンシュタイン。君との婚約を破棄する」
王子による公開断罪。
悪役令嬢として破滅ルートを迎えたリリスは、ようやく自由を手に入れた……はずだった。
だが翌朝、屋敷のバルコニーの下に立っていたのは、断罪したはずの王太子。
花束を抱え、「おはよう」と微笑む彼は、毎朝訪れるようになり——
「リリス、僕は君の全てが好きなんだ。」
そう語る彼は、狂愛をリリスに注ぎはじめる。
婚約破棄×悪役令嬢×ヤンデレ王子による、
テンプレから逸脱しまくるダークサイド・ラブコメディ!
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる