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第三章 魔法少女絶対無敵(ジ・インヴィンジブル)
星屑の二重奏
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圓道博士、キルカ、スピカ、イクローは別室へと案内されて、どうやら親子による面談の場を持たれたようである。
ライアットは憂鬱そうな顔でキルカたちの出て行ったロビーで椅子に座ってふんぞり返っていた。
「……そういや、ルカのヤツはどうした? 基地の跡からまだ戻ってねぇのか?」
彼女はふと、思い出して周りにいる部下たちに尋ねた。
「いえ……まだお戻りには……」
「チッ。 勝手な事ばっかりしやがって……あの腹黒女! まったくアイツだきゃあ何考えてんのかさっぱりわかんねェぜ……」
ライアットは舌打ちをして、部下にお茶を持ってこさせるとそれを啜った。
そして直後に一瞬目を見開くと、そのまま固まってその手からカップを落とした。
カップは床に落ちて砕け散った。
「お、おい……ウソだろ?」
彼女は茫然とした顔でそう呟いた。
「……この魔力の拡散って……?」
ルーも部屋の隅で呟く。
「ルカ様が……?」
バレッタも胸に手を当てた。
「ルカ……?」
別室にいたキルカも一瞬眉を顰めた。
スピカも茫然とした顔をしている。
「どうかしたのか?」
イクローがわけがわからず尋ねると、キルカは顔を上げた。
その目には信じられないという色がにじんでいる。
「ルカが……死んだの」
スピカも眉をしかめた。
「……あの方ほどの人が倒されるとはにわかには信じがたいのですけど。 でもこの魔力の拡散は間違いないですわ」
「マジかよ……」
イクローも目を丸くした。
キルカはそのまま、圓道博士を見た。
「そんなことより……あなたがお父さんというのは本当なの?」
圓道博士は手を膝の上で組んだまま、頷いた。
「……エメランディアに何も聞いていないのか?」
エメランディア・ティアマト、キルカとスピカの母親、ティアマトの現女王である。
キルカとスピカは顔を見合わせてから、ふるふる、と首を振った。
「そうか。 まぁ私もほとんどの記憶は消されてしまっているからな……詳しい事は覚えていないんだ」
圓道博士はため息をついた。
「だが、時間が経つごとにだんだん魔法界に居た時の記憶が甦ってきて……それで気づいたらこうして魔法少女の研究者になっていたというわけさ」
イクローは博士を睨み付けた。
「なぁ、オヤジ。 ……黙ってたのはまぁ、許してやる。 俺も何も知らないうちにお前に魔法少女の兄弟がいるなんて言われても信じないだろうからな」
「ああ、それはすまん……」
博士はイクローに頭を下げた。
「だが……オヤジ。 これはとても困った事態なんだぞ!!」
イクローは立ち上がって怒鳴った。
博士はイクローの剣幕にきょとんとした顔になった。
「なんか……他に問題があるのか?」
博士の言葉にイクローは真っ赤な顔になった。
「き、キルカと兄弟って事は……!! キルカと……け、結婚できないじゃねえかよ!!」
イクローが叫ぶと博士はぽかんと口を開けた。
キルカは横で顔を真っ赤にして頬を押さえている。
そして彼女は首を傾げた。
「けっこん、できないの?」
「あ、当たり前だろ! 兄弟なんだぞ!!」
イクローが言うと、キルカは目を丸くした。
「きょうだいは、けっこんできないものなの?」
そう言われるとイクローは難しい顔になった。
当たり前にそう返されると、わけがわからなくなってしまうのである。
「……できないよな? オヤジ……」
いきなり話を振られて博士は呆気にとられた顔のまま、頷いた。
「まぁ……法的には、そうだな。 魔法少女に日本の法律もクソも関係ないとは思うが」
「い、いやでも血縁関係がどうとかなんとか、そういうのもあるんじゃねえのかよ!」
イクローはプリプリと怒りながらそう言って腹立たし気に足を組んだ。
彼もかなり混乱しているのだろう。
とりあえず感情の持って行き方がわからなくて、それが怒りという方向に向いていた。
「そうなの?」
「さぁ? わたくしにはよくわかりませんわ?」
キルカがスピカに囁くとスピカは手を広げて見せた。
そして博士が、ああ、と声を出した。
「お前とキルカたちには血のつながりはないぞ?」
「えええええええええええええ!!!」
イクローとキルカ、スピカは驚いて声を出した。
「お前には言ってなかったか……。 イクロー、お前は母さんの連れ子だ」
「な、なんだってぇ? は、初耳だぞ! そんなの。 ……いや、待て……おかしいじゃねえか。 俺は、オヤジの血を引いてるから、魔力があるとかそういう話じゃねえのか?」
イクローが狼狽しながら言うと、博士は首を振った。
「いいや。 私も魔法界から戻された以降は魔力が消えてなくなってしまっていたからな。 そのあとお前の母さんと知り合って、それで結婚したんだ」
「い、意外な事実が次から次へと出てくるじゃねえか……。 俺はもう頭がどうにかなりそうだぞ、オヤジ……」
イクローは座ったまま頭を抱えた。
圓道博士は、ぽん、と手を叩いた。
「意外ついでに言っておくが、お前に魔力があるのは私には心当たりがあるぞ」
「……なんだよ。 心当たりってのは」
イクローは頭を抱えたまま尋ねた。
「お前の母さんな、あれは……元魔法少女だ」
「えええええええええええええ!!!」
またイクローと、キルカ、スピカは驚いて声を上げた。
イクローはあの呑気な母親を思い浮かべて、ため息をついた。
「……それはおかしいの」
キルカが首を傾げて顎のあたりに人差し指をあてた。
「なにがだ?」
イクローが聞くとキルカは僅かに眉を寄せた。
「おかあさまにわたしは魔法で記憶操作をしたの。 元魔法少女ならそれに気づいていてもおかしくないの」
キルカのその問いには博士が少し笑って答えた。
「ああ、気づいてるだろうな。 でも事情を察してすっとぼけてるんだろう。 あれはそういう女だ」
「えええええええええええええ!!!」
またもやイクローたちは声を上げた。
「……なんてこった。 母さん……肝の座った人だったんだな……。 今日の今日まで全然知らなかったぜ」
イクローは愕然としすぎてすでに憔悴した顔になってがっくりと肩を落とした。
キルカはそんな彼の袖を掴んで、ふんわりと笑顔を浮かべた。
「でも、よかったの」
「なにが?」
イクローが彼女の顔を見て言うと彼女はにっこりと可憐な花のような笑顔になった。
「イキロとけっこんできるの」
「あ、ああ……」
イクローも少し顔を赤らめながら笑顔になって彼女をじっと見つめた。
「わたしとも、スピカとも、ルーやバレッタともけっこんできるの!」
キルカが嬉しそうに言うのを聞いて、イクローは今度は独りで声を上げた。
「えええええええええええええ!!!」
キルカは少し恥ずかしそうにぽつり、と言った。
「でも……うれしかったの。 イキロが……わたしとけっこんしたいって……そう思っててくれたの。 うれしかったの」
イクローも照れ臭そうに頭を掻いた。
「そりゃ……ここまで来たら……もう、そうなるもんだって思ってたからな……」
「それでも……うれしかったの」
彼女はそう言って、また花のような笑顔を浮かべる。
そこに突然、ライアットから全チャンネルの魔法通信が入った。
「すまねェ……全員ロビーに集合してくれ」
イクローとキルカ、スピカはお互いに顔を見合わせて立ち上がると博士のいる部屋を出ていこうとした。
「おとうさん……話はまた後でなの」
キルカは博士にそう言うと、彼の手をぎゅっと一瞬握った。
「あ、ああ……」
博士は心配そうな顔で頷いた。
イクローたちがロビーに戻ると、恐らく魔法で作られたのであろう簡易ベッドが置かれていて、そこにメタルカが気を失ったまま横たえられていた。
「ライア? これはルカ?」
キルカが尋ねるとライアットは険しい顔で頷いた。
「ああ……。 だが、たぶんこいつはフラスコのルカだ」
そしてライアットは彼女をじっと見つめると言葉を続けた。
「ルカが死んだと思われる辺りに、こいつが倒れてたそうだ。 ……あたいが思うに、やっぱりこちらの誰かを斃すと向こうのヤツもこっちと同じように、こうして意識をなくすんじゃねえかと思う」
「厄介ですわね……」
スピカが爪を噛んで唸るように言った。
「それで、だ。 なるべく一人で動くのはやめようと思うのサ。 勝ったにしろ負けたにしろ、どっちもこうして倒れっちまうんじゃどうにもならねぇ。 だから全員外へ出る時は必ず誰かと一緒に行動してくれや」
ライアットはそう言って、部下に言うとフラスコのメタルカを運ばせた。
「そいつは結界を張った部屋に監禁しておく。 まぁ、目を覚ますのか覚まさねェのかもわかんねぇが……用心のためだ」
彼女の言葉にみんな頷いた。
どこかにしつらえられた大きな部屋。
地下のようでもあり、そうでもないようでもある不思議な空間である。
それは魔法で作られた疑似空間のような場所で、入り口を知らない者は立ち入る事すらできない、そんな場所である。
薄暗いようで中は割と明るく、小分けされた小部屋にマントを着た魔法少女たちが身を寄せるようにしてそこにいた。
「イクローさん」
イクローは名を呼ばれて顔を上げた。
「ああ……。 アオイか」
彼の目の前には猫のような顔をした少女が立って、にっこりと笑顔を浮かべた。
「……こうしてサン・ジェルマンの知識や記憶を得た今でも、君の事だけは不思議だよ。 まったく君という存在について想像もつかない。 ……君は一体何者なんだ?」
イクローは少し面白そうに傍らにある仮面を触りながら言った。
「説明はちょっと難しいですね……」
アオイは照れ臭そうに笑って言った。
「君もどうやらオリジナルのいない存在のようだが。 それでもこうして実験世界から普通に抜け出て、我々と行動を共にしている。 ……まったく不思議な子だよ」
イクローはそう言って、くっく、と喉で笑った。
「それでも私は、あなたのやる事を助けたい、そう思ってここにいます。 それだけは信じてください」
彼女が少し真面目な顔で言うと、イクローは薄く目を閉じた。
「もちろん信用してるさ。 君が何者でも関係ない。 ……恐らく君が我々がどうなるのか、最後に見てその記憶を残してくれるのだろう」
そして彼はひとつ溜息をついた。
「……ルカは勝ったのか。 まぁ、どちらにしろ一つに統合されるんだ。 彼女が目を覚ました時、我々の所へ戻るのか、あちらに付くのか……どちらを選ぶのかは彼女の自由だ」
「イクローさん、なんかものすごくサン・ジェルマンっぽいですよ」
アオイが少し口を尖らせて言うと、イクローは楽し気に笑った。
「そうか。 意識してるわけじゃないんだけどな。 何せ彼の生きた時間は長い……大きく影響を受けているのかも知れない。 まぁ基本は圓道イクローだよ、いずれ落ち着いていくさ」
そこへコバルトブルーの戦乙女のような魔導鎧に身を包んだ魔法少女が現れた。
「失礼いたしますわ、イクロー」
彼は彼女を一瞥すると、少し不思議そうな表情になった。
「スピカか、どうかしたか?」
スピカはフン、と鼻を鳴らして顔を僅かに逸らすようにすると、右手を手の甲を下にして指先を胸の辺りに当てるようなポーズを取った。
「イクロー。 わたくしもそろそろ戦の場に赴こうと思いますの。 それでご挨拶に来たのですわ」
「そうか。 君たちの戦いは君たちが自由にやっていい。 君が戦うというのならば、俺は送り出すだけだよ。 ……キルカには?」
「お姉さまには黙って行きますわ。 わたくしごときの為にお姉さまのお心を煩わせたくはありませんもの」
イクローはそっと彼女に右手を差し出した。
「スピカ。 武運を祈ってるよ。 ……魔法少女によき死を」
スピカは彼の手を握り返すと、にっこりと笑った。
その笑顔はとても華やかで、これから死地に赴く者の顔ではなかった。
「ええ……。 我々によき死を、ですわ」
彼女は笑顔のまま、アオイを見て、彼女にも手を差し出した。
「副会長……いいえ、スピカ様。 わたしもあなたのご武運を祈っています」
「アオイさん。 今まで生徒会メンバーとしてよく尽くしてくれましたわ。 感謝しています。 今までありがとう」
スピカの言葉にアオイはぽろぽろと涙を零して言葉を詰まらせた。
「そんな……スピカ……副会長……」
そのまま顔をぐしゃぐしゃにして泣きべそをかく彼女をスピカは抱きしめた。
「……行ってまいります」
スピカはそのまま背を向けると出口に向かって歩いて、すっと姿を魔法で消した。
イクローはその姿を見送った後で手を上げて、魔法通信の画面を開いた。
「ルー。 いるかい?」
小さな画面にルーの顔が映った。
「なにかしら? イクロー」
「ルー、スピカについて行ってやってはくれないか?」
彼が言うと、彼女はにっこりと笑った。
「……私は勝手についていくつもりだったわ」
「だろうとは思ったんだけど……一応ね」
ルーは呆れたような顔になって不満げに答えた。
「なんか、そういう所……トリガーみたいよ」
彼女の言葉にイクローは笑う。
「そりゃ……今の俺は彼でもあるからね」
「わかっているわ。 それじゃ、行くわね」
ルーが素っ気ない返事をして茶目っ気たっぷりにウインクすると通信の画面が消えた。
富士の裾野のAMSTF基地跡のほど近く。
樹海の上空で戦乙女のようないで立ちをした魔法少女が腰に手を当てて浮かんでいた。
その側では彼女に控えるかのように、彼女と同じコバルトブルーの魔導鎧と瞳をした魔法少女もいる。
言わずと知れたフラスコのスピカ・ブラウコメテイティス・ティアマトと、ルイズ・ブルースティール・レミントンである。
スピカは全チャンネルの魔法放送でオリジナルの魔法少女たちに呼びかけた。
「魔法少女の皆様聞いていらして? わたくしはフラスコのスピカ・ブラウコメテイティス・ティアマトですわ!」
オリジナルの魔法少女たちは浮足立って、現状リーダー役であるライアットの顔を窺った。
「チッ! 今度はスピカかよ!」
彼女は苛立たしそうに椅子を蹴飛ばした。
オリジナルのスピカは不機嫌そうに通信画面を睨み付けた。
「とても妙な気分ですけれど……本当にわたくしそのものですのね……」
そう呟いてギリ、と歯ぎしりをした。
画面の中のスピカは指をピッとまっすぐ伸ばすと魔法通信画面にカメラ目線で叫んだ。
「スピカ・ティアマト! 我、『星を喚ぶ者』のスピカ・ブラウコメテイティス・ティアマト!! ……我が誇りたる称号とその名にかけて! ここに貴女に一騎打ちを申し込みますわ!!」
フラスコのスピカのその宣言を聞いて、オリジナルのスピカは唇が白くなるほどその口元をギリギリと噛みしめた。
そして画面に向かって指を突き付けると、魔法通信を返した。
「よろしくてよ! このスピカ・ティアマト、逃げも隠れもしませんわ! ティアマト王家の名と誇りにかけて、謹んでその一騎打ちの決闘、お受けいたしますわ!!」
そう高らかに宣言すると、彼女は腰に手を当てて、フン、と鼻を持ち上げた。
「お、おい……キルカ! スピカのヤツ、大丈夫なのか?」
イクローは心配そうにキルカに声をかけた。
「だいじょうぶなの。 スピカは強いの。 それに……あの子じゃなくても名指しで一騎打ちを申し込まれたら、魔法少女だったら誰も断らないの」
キルカはそう言って、スピカを見つめた。
そして彼女はルーを手招きして呼んだ。
「ルー。 スピカについていってあげてなの」
ルーは笑って頷いた。
「わかったわ。 ……どうやら向こうの私も一緒にいるしね」
「なのなの」
キルカはこくこく、と頷いた。
そしてスピカは彼女の元へとやってきて、跪くと彼女の手をまるで騎士のように取った。
「お姉さま。 わたくし行ってまいります。 ティアマト家の名誉のため、いいえ……お姉さまに恥をかかせない戦いをしてみせますわ」
キルカはそっとスピカの自分よりも黄色っぽい金髪を撫でた。
「スピカ。 絶対に帰ってくるのよ。 ……待ってるの」
キルカはそう言ってスピカを抱きしめて、その身に祝福の 呪いの魔法をかけてふっと、息を吹きかけた。
「はい! お姉さま。 わたくしはお姉さまの元に必ず無事戻ってまいりますわ!」
スピカは凛々しい笑顔を浮かべて、立ち上がってキルカを抱きしめ返した。
そしてイクローを見て行った。
「イクロー。 お姉さまたちをよろしくお願いしますわ。 ……いえ、あなたに戦力として期待しているのではなく……」
「わかってるよ、スピカ」
彼は言って、彼女の手を取ると頷いた。
キルカやバレッタの心を支えて欲しいのだろう、その気持ちは伝わった。
スピカは安心したようにふっ、と口元に笑みを浮かべると彼らに背を向けた。
「行ってまいりますわ!」
「スピカ。 武運をなの」
キルカは彼女の背に声をかけた。
スピカは後ろ向きのまま頷いて、ルーとともに姿を消した。
「お待たせいたしましたわ」
スピカはフラスコのスピカの前に姿を現すと、腰に手を当てて、フン、と鼻を上に向けた。
その隣ではルーが付き従って、フラスコのルーを睨み付けた。
「……よく、この一騎打ちに応じていただきましたわ。 感謝いたします」
フラスコのスピカはそう言って、腰に巻いた布を掴んで優雅にお辞儀をした。
「こちらこそですわ。 正々堂々と一騎打ちを申し込むその姿勢……感服いたしましたわ」
スピカも言って同じように腰布を掴んで優雅に礼をした。
「それは……ティアマトの王女として当然の事ですわ」
「その言葉そっくりお返しいたしますわ」
二人のスピカはそう言い合って、口元に右手を当てて、高笑いをした。
オリジナルのスピカはフン、と言って鼻を持ち上げながら見下すような目でフラスコのスピカを見た。
「……ほんとに妙な気分なのですわ。 あなたはほんとにわたくしそのものでいらっしゃるのね。 自分を褒めるようで恥ずかしいのですけれど……その気高さ、勇敢さ……敬服いたしましたわ」
「ふふ……その言葉、そっくりお返しいたしますわ」
二人はまた、おほほほ、と高笑いをした。
スピカは隣のルーを見て命じた。
「ルー。 この戦いには一切手出し無用ですわよ?」
フラスコのスピカも隣のルーに言う。
「あなたも、ですわよ?」
「はい……ご存分に」
二人のルーは同じ返事を返して、顔を見合わせて苦々しそうに笑った。
「ほんとに……気持ち悪いわね」
オリジナルのルーが言うと、フラスコのスピカも汚い物を見るような目で彼女を見た。
「それはそのままこっちのセリフだわ……」
そして二人のルーは同時に魔導杖を発現させて構えた。
「あらあら。 貴女たちも始めるのでしたら……離れてやってくださいまし。 わたくしたちの戦いに巻き込まれて死にたくないのでしたらね」
スピカが凛とした声で言うと、ルーは、くす、と笑った。
「ええ! 心得ております、スピカ様」
彼女の返答にスピカは満足そうに微笑んで、こちらも右手の中に自らの弓型のロッドを出現させた。
「『隕石落とし』! 貴方も存分にその真価を発揮して差し上げなさい!」
その金色の独特な三日月のような形の弓の魔導杖は持ち主の声に応えるかのように輝きを放った。
フラスコのスピカも魔導杖を発現させるとそれをくるくると回して構えた。
「いざ……!」
「参りますわ!」
二人は言うと、同時に後方へ飛んだ。
それを見て二人のルーも姿を消すと二人から距離を取った所で対峙した。
「はぁぁぁ!! まずは小手調べですわ!」
スピカは同時に矢をニ十本ほど番えると四方へと放った。
それは天空へと飛んで 、数メートルほどの大きさの隕石へと変わってフラスコのスピカへと降り注いだ。
「あら、あなたの隕石は赤くていらっしゃいますのね!」
フラスコのスピカは冷静にそう言うと、彼女もまた矢を番えて隕石を撃ち落としていった。
そして時間をおいて一本を天空へ放った。
すぐに青く輝く巨大な隕石が空に現れて彼女たちの元へ向かって飛んできた。
「……なるほど。 あなたの隕石は青いのですわね。 興味深いですわ」
「ふふ……それは当然ですわ。 わたくしは蒼き流星なのですから!」
フラスコのスピカはそう言うと、スピカを見下すような目で見た。
スピカはフン、と鼻で笑うと矢を放ってその隕石を撃ち、それを打ち消した。
蒼い隕石は一瞬激しく光を発して、嘘のように消え去った。
「わかってはおりましたけれど……当然、同じ魔法は無効化されてしまいますのね」
そう言って、スピカは弓をくるくる、と回すとそれを背後に構えた。
「それでは……肉弾戦と参りますわ。 恐らくそれでしか勝負は付かないのではないかしら?」
「そうですわね……」
フラスコのスピカも弓を胸の前に構えた。
二人の弓の弦が、プツン、と微かな音を立てて切れた。
美しい弧を描いて光の粒子となって弦は消えていく。
涼やかなキン、という音を立てて彼女たちの弓は上下に分かれると、それぞれ二組のダガーとなって彼女たちはそれを逆手に構えた。
二人は目にも止まらぬ速さでお互いの剣を繰り出しては避け、あるいは受け止めた。
非常に硬い金属同士がぶつかり合う独特の涼やかな音が何度も何度も、鳴り響いた。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
その暴力的な行為とは裏腹な美しい鈴の音にも似た音が鳴り響く。
二人は刃を交えたまま、動きを止めると、一度離れた。
そしてオリジナルのスピカが呆れたようにため息をつく。
「困りましたわね。 これでは勝負がつきませんわ」
フラスコのスピカは嘲るような声で笑った。
「ではどういたしますの? じゃんけんでも致しますの?」
「では……奥の手を出して……時間短縮と致しましょうかしら?」
スピカはそう言うと、高速詠唱を始めた。
身体の周囲に赤い魔法円を浮き上がって行き、それはいくつもいくつも増えて行って彼女の周囲をぐるぐると回りだした。
沢山の魔法円が彼女の体を取り囲み、そのうち円筒形になり彼女の身体をすっぽりと覆っていく。
数えきれないほどの数の魔法円たちは、それぞれがバラバラに高速回転を始めた。
そして目も眩むような光を発して、それは消えていった。
中から出てきたのは、真っ白な魔導鎧に身を包んだスピカだった。
アーマーが大きくなり、腕には手甲が付き、そして頭の羽飾りが大きくなって、その真っ白な翼が、ばさ、と羽ばたいた。
そして背中にもまるで天使のような翼が生えて、同時に羽ばたく。
腰回りにも白いアーマーが付き、アーマーブーツは太ももまでの長いものへと変わっていた。
そして、その直後、べちゃり、と音を立ててその右半身に真っ赤な血飛沫の柄が張り付いた。
「さぁ、あなたも完全形態におなりなさい! ……その間くらいは待って差し上げますわ!」
彼女は瞳を閉じながら胸の辺りに手をあてて言うと、魔法でティーポットとカップを出現させ、カップに紅茶を注ぎ入れて左手にソーサーを、右手にカップを持って澄ました顔で対峙する相手を眺めた。
フラスコのスピカは彼女のその姿を見てたじろいで、小さな声で呟いた。
「そ、そんなもの……わたくしは……存じてはいませんわ……」
するとスピカは不機嫌そうな顔になって彼女をジト目で見つめた。
「なんとおっしゃいましたの? ……それではお話になりませんわね。 あなたはわたくしでありながら、自らを鍛えるのを怠りましたのですわね? ……その程度ではわたくしと同じ存在とは認めてあげるわけには参りませんわ」
スピカはそう一気に言うと紅茶を一口啜って、カップを消滅させた。
「この色の魔導鎧はお姉さまと被ってしまうので普段はお見せ致しませんのに……わざわざ披露した甲斐がありませんわね。 ……ただ残念ですわ」
スピカはそこで言葉を切ると、腕を組んで見下すような顔になった。
「……わたくしは例え完全に格下相手だとしても……手加減はして差し上げませんわよ?」
フラスコのスピカは額に汗を浮かばせながらも、不敵に笑った。
「かまいませんわ。 そして……わたくしの覚悟はもう決まっておりますわ」
それを聞いてスピカは満足げに笑った。
「その覚悟、潔さ、気高さ……前言撤回致しますわ。 貴女はわたくしであると認めて差し上げますわ」
そして改めて魔導杖を現出させて構えた。
「では、お別れですわ! ……もう一人のわたくしよ!」
スピカは全身を光り輝やかせ、頭と背中の翼を開くと瞬時に超航空へ飛び上がった。
そしてさらに激しく赤い光を発しながら一瞬のうちにまた地上へと降りてきた。
「……『華麗なる彗星の迫撃』!」
そのあまりの速さにフラスコのスピカは身動きすら取れずにただただ不敵な笑みを浮かべたまま、甘んじてスピカの攻撃をその身に受けた。
そして最後に彼女は満足げな笑みを浮かべた。
「……先に参りますわ、お姉さま」
フラスコのスピカは小さな声でそう呟いた。
直後、まるでミサイルの攻撃があったかのような大爆発が起こり、フラスコのスピカは木っ端微塵に吹き飛び、わずかな肉片すら残らなかった。
スピカは身体を白熱化させたままその熱がなかなか収まらず、あちこちから白煙を噴き上げながら、フン、と鼻を上に向けて得意げな顔のまま、がくりと首から力が抜けたかと思うと気を失って地上へと堕ちていった。
彼女が地面に落ちるとそのあまりの高熱で地面が赤熱化して熱圧縮されて大爆発を起こした。
だがこれは間違いなくオリジナルのスピカの完全勝利であった。
ライアットは憂鬱そうな顔でキルカたちの出て行ったロビーで椅子に座ってふんぞり返っていた。
「……そういや、ルカのヤツはどうした? 基地の跡からまだ戻ってねぇのか?」
彼女はふと、思い出して周りにいる部下たちに尋ねた。
「いえ……まだお戻りには……」
「チッ。 勝手な事ばっかりしやがって……あの腹黒女! まったくアイツだきゃあ何考えてんのかさっぱりわかんねェぜ……」
ライアットは舌打ちをして、部下にお茶を持ってこさせるとそれを啜った。
そして直後に一瞬目を見開くと、そのまま固まってその手からカップを落とした。
カップは床に落ちて砕け散った。
「お、おい……ウソだろ?」
彼女は茫然とした顔でそう呟いた。
「……この魔力の拡散って……?」
ルーも部屋の隅で呟く。
「ルカ様が……?」
バレッタも胸に手を当てた。
「ルカ……?」
別室にいたキルカも一瞬眉を顰めた。
スピカも茫然とした顔をしている。
「どうかしたのか?」
イクローがわけがわからず尋ねると、キルカは顔を上げた。
その目には信じられないという色がにじんでいる。
「ルカが……死んだの」
スピカも眉をしかめた。
「……あの方ほどの人が倒されるとはにわかには信じがたいのですけど。 でもこの魔力の拡散は間違いないですわ」
「マジかよ……」
イクローも目を丸くした。
キルカはそのまま、圓道博士を見た。
「そんなことより……あなたがお父さんというのは本当なの?」
圓道博士は手を膝の上で組んだまま、頷いた。
「……エメランディアに何も聞いていないのか?」
エメランディア・ティアマト、キルカとスピカの母親、ティアマトの現女王である。
キルカとスピカは顔を見合わせてから、ふるふる、と首を振った。
「そうか。 まぁ私もほとんどの記憶は消されてしまっているからな……詳しい事は覚えていないんだ」
圓道博士はため息をついた。
「だが、時間が経つごとにだんだん魔法界に居た時の記憶が甦ってきて……それで気づいたらこうして魔法少女の研究者になっていたというわけさ」
イクローは博士を睨み付けた。
「なぁ、オヤジ。 ……黙ってたのはまぁ、許してやる。 俺も何も知らないうちにお前に魔法少女の兄弟がいるなんて言われても信じないだろうからな」
「ああ、それはすまん……」
博士はイクローに頭を下げた。
「だが……オヤジ。 これはとても困った事態なんだぞ!!」
イクローは立ち上がって怒鳴った。
博士はイクローの剣幕にきょとんとした顔になった。
「なんか……他に問題があるのか?」
博士の言葉にイクローは真っ赤な顔になった。
「き、キルカと兄弟って事は……!! キルカと……け、結婚できないじゃねえかよ!!」
イクローが叫ぶと博士はぽかんと口を開けた。
キルカは横で顔を真っ赤にして頬を押さえている。
そして彼女は首を傾げた。
「けっこん、できないの?」
「あ、当たり前だろ! 兄弟なんだぞ!!」
イクローが言うと、キルカは目を丸くした。
「きょうだいは、けっこんできないものなの?」
そう言われるとイクローは難しい顔になった。
当たり前にそう返されると、わけがわからなくなってしまうのである。
「……できないよな? オヤジ……」
いきなり話を振られて博士は呆気にとられた顔のまま、頷いた。
「まぁ……法的には、そうだな。 魔法少女に日本の法律もクソも関係ないとは思うが」
「い、いやでも血縁関係がどうとかなんとか、そういうのもあるんじゃねえのかよ!」
イクローはプリプリと怒りながらそう言って腹立たし気に足を組んだ。
彼もかなり混乱しているのだろう。
とりあえず感情の持って行き方がわからなくて、それが怒りという方向に向いていた。
「そうなの?」
「さぁ? わたくしにはよくわかりませんわ?」
キルカがスピカに囁くとスピカは手を広げて見せた。
そして博士が、ああ、と声を出した。
「お前とキルカたちには血のつながりはないぞ?」
「えええええええええええええ!!!」
イクローとキルカ、スピカは驚いて声を出した。
「お前には言ってなかったか……。 イクロー、お前は母さんの連れ子だ」
「な、なんだってぇ? は、初耳だぞ! そんなの。 ……いや、待て……おかしいじゃねえか。 俺は、オヤジの血を引いてるから、魔力があるとかそういう話じゃねえのか?」
イクローが狼狽しながら言うと、博士は首を振った。
「いいや。 私も魔法界から戻された以降は魔力が消えてなくなってしまっていたからな。 そのあとお前の母さんと知り合って、それで結婚したんだ」
「い、意外な事実が次から次へと出てくるじゃねえか……。 俺はもう頭がどうにかなりそうだぞ、オヤジ……」
イクローは座ったまま頭を抱えた。
圓道博士は、ぽん、と手を叩いた。
「意外ついでに言っておくが、お前に魔力があるのは私には心当たりがあるぞ」
「……なんだよ。 心当たりってのは」
イクローは頭を抱えたまま尋ねた。
「お前の母さんな、あれは……元魔法少女だ」
「えええええええええええええ!!!」
またイクローと、キルカ、スピカは驚いて声を上げた。
イクローはあの呑気な母親を思い浮かべて、ため息をついた。
「……それはおかしいの」
キルカが首を傾げて顎のあたりに人差し指をあてた。
「なにがだ?」
イクローが聞くとキルカは僅かに眉を寄せた。
「おかあさまにわたしは魔法で記憶操作をしたの。 元魔法少女ならそれに気づいていてもおかしくないの」
キルカのその問いには博士が少し笑って答えた。
「ああ、気づいてるだろうな。 でも事情を察してすっとぼけてるんだろう。 あれはそういう女だ」
「えええええええええええええ!!!」
またもやイクローたちは声を上げた。
「……なんてこった。 母さん……肝の座った人だったんだな……。 今日の今日まで全然知らなかったぜ」
イクローは愕然としすぎてすでに憔悴した顔になってがっくりと肩を落とした。
キルカはそんな彼の袖を掴んで、ふんわりと笑顔を浮かべた。
「でも、よかったの」
「なにが?」
イクローが彼女の顔を見て言うと彼女はにっこりと可憐な花のような笑顔になった。
「イキロとけっこんできるの」
「あ、ああ……」
イクローも少し顔を赤らめながら笑顔になって彼女をじっと見つめた。
「わたしとも、スピカとも、ルーやバレッタともけっこんできるの!」
キルカが嬉しそうに言うのを聞いて、イクローは今度は独りで声を上げた。
「えええええええええええええ!!!」
キルカは少し恥ずかしそうにぽつり、と言った。
「でも……うれしかったの。 イキロが……わたしとけっこんしたいって……そう思っててくれたの。 うれしかったの」
イクローも照れ臭そうに頭を掻いた。
「そりゃ……ここまで来たら……もう、そうなるもんだって思ってたからな……」
「それでも……うれしかったの」
彼女はそう言って、また花のような笑顔を浮かべる。
そこに突然、ライアットから全チャンネルの魔法通信が入った。
「すまねェ……全員ロビーに集合してくれ」
イクローとキルカ、スピカはお互いに顔を見合わせて立ち上がると博士のいる部屋を出ていこうとした。
「おとうさん……話はまた後でなの」
キルカは博士にそう言うと、彼の手をぎゅっと一瞬握った。
「あ、ああ……」
博士は心配そうな顔で頷いた。
イクローたちがロビーに戻ると、恐らく魔法で作られたのであろう簡易ベッドが置かれていて、そこにメタルカが気を失ったまま横たえられていた。
「ライア? これはルカ?」
キルカが尋ねるとライアットは険しい顔で頷いた。
「ああ……。 だが、たぶんこいつはフラスコのルカだ」
そしてライアットは彼女をじっと見つめると言葉を続けた。
「ルカが死んだと思われる辺りに、こいつが倒れてたそうだ。 ……あたいが思うに、やっぱりこちらの誰かを斃すと向こうのヤツもこっちと同じように、こうして意識をなくすんじゃねえかと思う」
「厄介ですわね……」
スピカが爪を噛んで唸るように言った。
「それで、だ。 なるべく一人で動くのはやめようと思うのサ。 勝ったにしろ負けたにしろ、どっちもこうして倒れっちまうんじゃどうにもならねぇ。 だから全員外へ出る時は必ず誰かと一緒に行動してくれや」
ライアットはそう言って、部下に言うとフラスコのメタルカを運ばせた。
「そいつは結界を張った部屋に監禁しておく。 まぁ、目を覚ますのか覚まさねェのかもわかんねぇが……用心のためだ」
彼女の言葉にみんな頷いた。
どこかにしつらえられた大きな部屋。
地下のようでもあり、そうでもないようでもある不思議な空間である。
それは魔法で作られた疑似空間のような場所で、入り口を知らない者は立ち入る事すらできない、そんな場所である。
薄暗いようで中は割と明るく、小分けされた小部屋にマントを着た魔法少女たちが身を寄せるようにしてそこにいた。
「イクローさん」
イクローは名を呼ばれて顔を上げた。
「ああ……。 アオイか」
彼の目の前には猫のような顔をした少女が立って、にっこりと笑顔を浮かべた。
「……こうしてサン・ジェルマンの知識や記憶を得た今でも、君の事だけは不思議だよ。 まったく君という存在について想像もつかない。 ……君は一体何者なんだ?」
イクローは少し面白そうに傍らにある仮面を触りながら言った。
「説明はちょっと難しいですね……」
アオイは照れ臭そうに笑って言った。
「君もどうやらオリジナルのいない存在のようだが。 それでもこうして実験世界から普通に抜け出て、我々と行動を共にしている。 ……まったく不思議な子だよ」
イクローはそう言って、くっく、と喉で笑った。
「それでも私は、あなたのやる事を助けたい、そう思ってここにいます。 それだけは信じてください」
彼女が少し真面目な顔で言うと、イクローは薄く目を閉じた。
「もちろん信用してるさ。 君が何者でも関係ない。 ……恐らく君が我々がどうなるのか、最後に見てその記憶を残してくれるのだろう」
そして彼はひとつ溜息をついた。
「……ルカは勝ったのか。 まぁ、どちらにしろ一つに統合されるんだ。 彼女が目を覚ました時、我々の所へ戻るのか、あちらに付くのか……どちらを選ぶのかは彼女の自由だ」
「イクローさん、なんかものすごくサン・ジェルマンっぽいですよ」
アオイが少し口を尖らせて言うと、イクローは楽し気に笑った。
「そうか。 意識してるわけじゃないんだけどな。 何せ彼の生きた時間は長い……大きく影響を受けているのかも知れない。 まぁ基本は圓道イクローだよ、いずれ落ち着いていくさ」
そこへコバルトブルーの戦乙女のような魔導鎧に身を包んだ魔法少女が現れた。
「失礼いたしますわ、イクロー」
彼は彼女を一瞥すると、少し不思議そうな表情になった。
「スピカか、どうかしたか?」
スピカはフン、と鼻を鳴らして顔を僅かに逸らすようにすると、右手を手の甲を下にして指先を胸の辺りに当てるようなポーズを取った。
「イクロー。 わたくしもそろそろ戦の場に赴こうと思いますの。 それでご挨拶に来たのですわ」
「そうか。 君たちの戦いは君たちが自由にやっていい。 君が戦うというのならば、俺は送り出すだけだよ。 ……キルカには?」
「お姉さまには黙って行きますわ。 わたくしごときの為にお姉さまのお心を煩わせたくはありませんもの」
イクローはそっと彼女に右手を差し出した。
「スピカ。 武運を祈ってるよ。 ……魔法少女によき死を」
スピカは彼の手を握り返すと、にっこりと笑った。
その笑顔はとても華やかで、これから死地に赴く者の顔ではなかった。
「ええ……。 我々によき死を、ですわ」
彼女は笑顔のまま、アオイを見て、彼女にも手を差し出した。
「副会長……いいえ、スピカ様。 わたしもあなたのご武運を祈っています」
「アオイさん。 今まで生徒会メンバーとしてよく尽くしてくれましたわ。 感謝しています。 今までありがとう」
スピカの言葉にアオイはぽろぽろと涙を零して言葉を詰まらせた。
「そんな……スピカ……副会長……」
そのまま顔をぐしゃぐしゃにして泣きべそをかく彼女をスピカは抱きしめた。
「……行ってまいります」
スピカはそのまま背を向けると出口に向かって歩いて、すっと姿を魔法で消した。
イクローはその姿を見送った後で手を上げて、魔法通信の画面を開いた。
「ルー。 いるかい?」
小さな画面にルーの顔が映った。
「なにかしら? イクロー」
「ルー、スピカについて行ってやってはくれないか?」
彼が言うと、彼女はにっこりと笑った。
「……私は勝手についていくつもりだったわ」
「だろうとは思ったんだけど……一応ね」
ルーは呆れたような顔になって不満げに答えた。
「なんか、そういう所……トリガーみたいよ」
彼女の言葉にイクローは笑う。
「そりゃ……今の俺は彼でもあるからね」
「わかっているわ。 それじゃ、行くわね」
ルーが素っ気ない返事をして茶目っ気たっぷりにウインクすると通信の画面が消えた。
富士の裾野のAMSTF基地跡のほど近く。
樹海の上空で戦乙女のようないで立ちをした魔法少女が腰に手を当てて浮かんでいた。
その側では彼女に控えるかのように、彼女と同じコバルトブルーの魔導鎧と瞳をした魔法少女もいる。
言わずと知れたフラスコのスピカ・ブラウコメテイティス・ティアマトと、ルイズ・ブルースティール・レミントンである。
スピカは全チャンネルの魔法放送でオリジナルの魔法少女たちに呼びかけた。
「魔法少女の皆様聞いていらして? わたくしはフラスコのスピカ・ブラウコメテイティス・ティアマトですわ!」
オリジナルの魔法少女たちは浮足立って、現状リーダー役であるライアットの顔を窺った。
「チッ! 今度はスピカかよ!」
彼女は苛立たしそうに椅子を蹴飛ばした。
オリジナルのスピカは不機嫌そうに通信画面を睨み付けた。
「とても妙な気分ですけれど……本当にわたくしそのものですのね……」
そう呟いてギリ、と歯ぎしりをした。
画面の中のスピカは指をピッとまっすぐ伸ばすと魔法通信画面にカメラ目線で叫んだ。
「スピカ・ティアマト! 我、『星を喚ぶ者』のスピカ・ブラウコメテイティス・ティアマト!! ……我が誇りたる称号とその名にかけて! ここに貴女に一騎打ちを申し込みますわ!!」
フラスコのスピカのその宣言を聞いて、オリジナルのスピカは唇が白くなるほどその口元をギリギリと噛みしめた。
そして画面に向かって指を突き付けると、魔法通信を返した。
「よろしくてよ! このスピカ・ティアマト、逃げも隠れもしませんわ! ティアマト王家の名と誇りにかけて、謹んでその一騎打ちの決闘、お受けいたしますわ!!」
そう高らかに宣言すると、彼女は腰に手を当てて、フン、と鼻を持ち上げた。
「お、おい……キルカ! スピカのヤツ、大丈夫なのか?」
イクローは心配そうにキルカに声をかけた。
「だいじょうぶなの。 スピカは強いの。 それに……あの子じゃなくても名指しで一騎打ちを申し込まれたら、魔法少女だったら誰も断らないの」
キルカはそう言って、スピカを見つめた。
そして彼女はルーを手招きして呼んだ。
「ルー。 スピカについていってあげてなの」
ルーは笑って頷いた。
「わかったわ。 ……どうやら向こうの私も一緒にいるしね」
「なのなの」
キルカはこくこく、と頷いた。
そしてスピカは彼女の元へとやってきて、跪くと彼女の手をまるで騎士のように取った。
「お姉さま。 わたくし行ってまいります。 ティアマト家の名誉のため、いいえ……お姉さまに恥をかかせない戦いをしてみせますわ」
キルカはそっとスピカの自分よりも黄色っぽい金髪を撫でた。
「スピカ。 絶対に帰ってくるのよ。 ……待ってるの」
キルカはそう言ってスピカを抱きしめて、その身に祝福の 呪いの魔法をかけてふっと、息を吹きかけた。
「はい! お姉さま。 わたくしはお姉さまの元に必ず無事戻ってまいりますわ!」
スピカは凛々しい笑顔を浮かべて、立ち上がってキルカを抱きしめ返した。
そしてイクローを見て行った。
「イクロー。 お姉さまたちをよろしくお願いしますわ。 ……いえ、あなたに戦力として期待しているのではなく……」
「わかってるよ、スピカ」
彼は言って、彼女の手を取ると頷いた。
キルカやバレッタの心を支えて欲しいのだろう、その気持ちは伝わった。
スピカは安心したようにふっ、と口元に笑みを浮かべると彼らに背を向けた。
「行ってまいりますわ!」
「スピカ。 武運をなの」
キルカは彼女の背に声をかけた。
スピカは後ろ向きのまま頷いて、ルーとともに姿を消した。
「お待たせいたしましたわ」
スピカはフラスコのスピカの前に姿を現すと、腰に手を当てて、フン、と鼻を上に向けた。
その隣ではルーが付き従って、フラスコのルーを睨み付けた。
「……よく、この一騎打ちに応じていただきましたわ。 感謝いたします」
フラスコのスピカはそう言って、腰に巻いた布を掴んで優雅にお辞儀をした。
「こちらこそですわ。 正々堂々と一騎打ちを申し込むその姿勢……感服いたしましたわ」
スピカも言って同じように腰布を掴んで優雅に礼をした。
「それは……ティアマトの王女として当然の事ですわ」
「その言葉そっくりお返しいたしますわ」
二人のスピカはそう言い合って、口元に右手を当てて、高笑いをした。
オリジナルのスピカはフン、と言って鼻を持ち上げながら見下すような目でフラスコのスピカを見た。
「……ほんとに妙な気分なのですわ。 あなたはほんとにわたくしそのものでいらっしゃるのね。 自分を褒めるようで恥ずかしいのですけれど……その気高さ、勇敢さ……敬服いたしましたわ」
「ふふ……その言葉、そっくりお返しいたしますわ」
二人はまた、おほほほ、と高笑いをした。
スピカは隣のルーを見て命じた。
「ルー。 この戦いには一切手出し無用ですわよ?」
フラスコのスピカも隣のルーに言う。
「あなたも、ですわよ?」
「はい……ご存分に」
二人のルーは同じ返事を返して、顔を見合わせて苦々しそうに笑った。
「ほんとに……気持ち悪いわね」
オリジナルのルーが言うと、フラスコのスピカも汚い物を見るような目で彼女を見た。
「それはそのままこっちのセリフだわ……」
そして二人のルーは同時に魔導杖を発現させて構えた。
「あらあら。 貴女たちも始めるのでしたら……離れてやってくださいまし。 わたくしたちの戦いに巻き込まれて死にたくないのでしたらね」
スピカが凛とした声で言うと、ルーは、くす、と笑った。
「ええ! 心得ております、スピカ様」
彼女の返答にスピカは満足そうに微笑んで、こちらも右手の中に自らの弓型のロッドを出現させた。
「『隕石落とし』! 貴方も存分にその真価を発揮して差し上げなさい!」
その金色の独特な三日月のような形の弓の魔導杖は持ち主の声に応えるかのように輝きを放った。
フラスコのスピカも魔導杖を発現させるとそれをくるくると回して構えた。
「いざ……!」
「参りますわ!」
二人は言うと、同時に後方へ飛んだ。
それを見て二人のルーも姿を消すと二人から距離を取った所で対峙した。
「はぁぁぁ!! まずは小手調べですわ!」
スピカは同時に矢をニ十本ほど番えると四方へと放った。
それは天空へと飛んで 、数メートルほどの大きさの隕石へと変わってフラスコのスピカへと降り注いだ。
「あら、あなたの隕石は赤くていらっしゃいますのね!」
フラスコのスピカは冷静にそう言うと、彼女もまた矢を番えて隕石を撃ち落としていった。
そして時間をおいて一本を天空へ放った。
すぐに青く輝く巨大な隕石が空に現れて彼女たちの元へ向かって飛んできた。
「……なるほど。 あなたの隕石は青いのですわね。 興味深いですわ」
「ふふ……それは当然ですわ。 わたくしは蒼き流星なのですから!」
フラスコのスピカはそう言うと、スピカを見下すような目で見た。
スピカはフン、と鼻で笑うと矢を放ってその隕石を撃ち、それを打ち消した。
蒼い隕石は一瞬激しく光を発して、嘘のように消え去った。
「わかってはおりましたけれど……当然、同じ魔法は無効化されてしまいますのね」
そう言って、スピカは弓をくるくる、と回すとそれを背後に構えた。
「それでは……肉弾戦と参りますわ。 恐らくそれでしか勝負は付かないのではないかしら?」
「そうですわね……」
フラスコのスピカも弓を胸の前に構えた。
二人の弓の弦が、プツン、と微かな音を立てて切れた。
美しい弧を描いて光の粒子となって弦は消えていく。
涼やかなキン、という音を立てて彼女たちの弓は上下に分かれると、それぞれ二組のダガーとなって彼女たちはそれを逆手に構えた。
二人は目にも止まらぬ速さでお互いの剣を繰り出しては避け、あるいは受け止めた。
非常に硬い金属同士がぶつかり合う独特の涼やかな音が何度も何度も、鳴り響いた。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
その暴力的な行為とは裏腹な美しい鈴の音にも似た音が鳴り響く。
二人は刃を交えたまま、動きを止めると、一度離れた。
そしてオリジナルのスピカが呆れたようにため息をつく。
「困りましたわね。 これでは勝負がつきませんわ」
フラスコのスピカは嘲るような声で笑った。
「ではどういたしますの? じゃんけんでも致しますの?」
「では……奥の手を出して……時間短縮と致しましょうかしら?」
スピカはそう言うと、高速詠唱を始めた。
身体の周囲に赤い魔法円を浮き上がって行き、それはいくつもいくつも増えて行って彼女の周囲をぐるぐると回りだした。
沢山の魔法円が彼女の体を取り囲み、そのうち円筒形になり彼女の身体をすっぽりと覆っていく。
数えきれないほどの数の魔法円たちは、それぞれがバラバラに高速回転を始めた。
そして目も眩むような光を発して、それは消えていった。
中から出てきたのは、真っ白な魔導鎧に身を包んだスピカだった。
アーマーが大きくなり、腕には手甲が付き、そして頭の羽飾りが大きくなって、その真っ白な翼が、ばさ、と羽ばたいた。
そして背中にもまるで天使のような翼が生えて、同時に羽ばたく。
腰回りにも白いアーマーが付き、アーマーブーツは太ももまでの長いものへと変わっていた。
そして、その直後、べちゃり、と音を立ててその右半身に真っ赤な血飛沫の柄が張り付いた。
「さぁ、あなたも完全形態におなりなさい! ……その間くらいは待って差し上げますわ!」
彼女は瞳を閉じながら胸の辺りに手をあてて言うと、魔法でティーポットとカップを出現させ、カップに紅茶を注ぎ入れて左手にソーサーを、右手にカップを持って澄ました顔で対峙する相手を眺めた。
フラスコのスピカは彼女のその姿を見てたじろいで、小さな声で呟いた。
「そ、そんなもの……わたくしは……存じてはいませんわ……」
するとスピカは不機嫌そうな顔になって彼女をジト目で見つめた。
「なんとおっしゃいましたの? ……それではお話になりませんわね。 あなたはわたくしでありながら、自らを鍛えるのを怠りましたのですわね? ……その程度ではわたくしと同じ存在とは認めてあげるわけには参りませんわ」
スピカはそう一気に言うと紅茶を一口啜って、カップを消滅させた。
「この色の魔導鎧はお姉さまと被ってしまうので普段はお見せ致しませんのに……わざわざ披露した甲斐がありませんわね。 ……ただ残念ですわ」
スピカはそこで言葉を切ると、腕を組んで見下すような顔になった。
「……わたくしは例え完全に格下相手だとしても……手加減はして差し上げませんわよ?」
フラスコのスピカは額に汗を浮かばせながらも、不敵に笑った。
「かまいませんわ。 そして……わたくしの覚悟はもう決まっておりますわ」
それを聞いてスピカは満足げに笑った。
「その覚悟、潔さ、気高さ……前言撤回致しますわ。 貴女はわたくしであると認めて差し上げますわ」
そして改めて魔導杖を現出させて構えた。
「では、お別れですわ! ……もう一人のわたくしよ!」
スピカは全身を光り輝やかせ、頭と背中の翼を開くと瞬時に超航空へ飛び上がった。
そしてさらに激しく赤い光を発しながら一瞬のうちにまた地上へと降りてきた。
「……『華麗なる彗星の迫撃』!」
そのあまりの速さにフラスコのスピカは身動きすら取れずにただただ不敵な笑みを浮かべたまま、甘んじてスピカの攻撃をその身に受けた。
そして最後に彼女は満足げな笑みを浮かべた。
「……先に参りますわ、お姉さま」
フラスコのスピカは小さな声でそう呟いた。
直後、まるでミサイルの攻撃があったかのような大爆発が起こり、フラスコのスピカは木っ端微塵に吹き飛び、わずかな肉片すら残らなかった。
スピカは身体を白熱化させたままその熱がなかなか収まらず、あちこちから白煙を噴き上げながら、フン、と鼻を上に向けて得意げな顔のまま、がくりと首から力が抜けたかと思うと気を失って地上へと堕ちていった。
彼女が地面に落ちるとそのあまりの高熱で地面が赤熱化して熱圧縮されて大爆発を起こした。
だがこれは間違いなくオリジナルのスピカの完全勝利であった。
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