もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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神様からもらった家とお金、マジックボックス+ドラゴン?

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「これが……ドラゴンさんですか……」

 がおー!

という怖いものかと思っていたら、なんか拍子抜けするようなカワウソっぽい顔をした黒い生き物。
 大きさは小型犬のようで、カワウソやダックスフンドのように胴体は長めで、手足は短いし、背中の翼も小さい。
 ピスピス鼻を鳴らしながら寝ている様は赤ん坊だ。

 【うわぁ~! 可愛いわね! 素敵よ! まぁ! このガマ口バッグ可愛いじゃない!】

 カパカパ開け閉めしながら、マジックボックスさんがはしゃいでいる。
 マジックボックスさんに入れてもらった作品を、一つ一つチェックしているらしい。
 器用な方だ。

 【いいなぁ……こんなに器用なら、ハンドメイド作家としてもやっていけそうね】

「いえ……作っても売れないのです。ネットフリマでは買い叩かれるし……」

 【そうなの? うーん、そういうのより、地域のハンドメイドフリーマーケットとかで、一回3000円前後くらい払って販売するのに参加すれば良いんじゃないの?】

「そういうのあるのですか?」

 【あるわよ。こっちの世界なら10日に一回、街の市があって、場所を借りて販売とかね。あらぁ、レジン素材の小物も素敵ね。あ、このガマ口ポーチなら、化粧品を入れることもできるわね】

 ポーチって可愛いと思うわ!

 テンションの高いお姉さん風のマジックボックスさん。
 真っ黒なカワウソみたいなドラゴンを部屋の奥のベッドに寝かせた私は、マジックボックスさんの側に戻る。

 【ハンドメイドフリマなら、ネットフリマのように送料や梱包を考えなくて済むから、安価に設定したり、複数購入してもらって割引とかおすすめできるのよ! 損して得取れっていうでしょ?】

 言いながら自分の中に収めた段ボールから一つ一つガマ口やパッチワークのクッションカバー、コースターなどを確認してキャッキャしている。
 うーん……。

「あのぉ……マジックボックスさん……」

 【マジックボックスさんってアタシのこと? やだぁ~、アタシは桜智サチっていう名前があるのよ。あ、本名よ。桜に知識の智。あ、知るに日ね。苗字は山本】

「山本桜智さんですか……あ、そうでした! 桜智さん! お伺いしたいのですが、いいですか?」

 【あら何を?】

「あの……私には桜智さんが、空間をバックリ口を開いたものに見えていたのですが、ドラゴンさんを抱っこして見たら、ボロボロの擦り切れて色褪せた革製の袋に見えます。これって……桜智さんの現在の体でしょうか?」

 うわぁと引いちゃうのも無理はない……バッグを見て可愛いとキャッキャしてる声とは違い、ボロボロの袋がパカパカと口を開けて、私の作ったポーチやコースターを出したり入れたりしている。
 自分でも自信作だけど、外側がボロいバッグだと、かなり価値が下がるんじゃないだろうか……。
 それに、桜智という綺麗な名前とは全く違う、どう見てもボロい革バッグ……それを持ち歩けというのは私にも苦行。
 だから……。

「あの、もしよければ、桜智さん、こちらの大型のガマ口バッグに移動してくれないかな~なんて! これは大正時代の赤紫のちりめん生地に、下側が桜模様で、中央の内側は麻の葉柄なのですよ! その横にはいくつかポケットがついてますが、一つは紫の矢羽柄で、もう一つは無地ですが淡いピンク。中途半端な布を集めたものになるのですが、私のお気に入りなのです!」

 その前に桜智さんがチェックしていたバッグを手にして、ずいっと差し出す。

 前に、ネットフリマをしていた時に、古い生地を集めてハンドメイド作品を作る方とお友達になったのだが、同じ地域に住んでいることが分かって、いろいろとSNSを使って交流していた。
 その方がおばあさまの着物を解いて冬用のコートの裏地にしたり、ワンピースやシャツにしたり、スカートに仕立てていたのだ。
 そうすると余った端切れをパッチワークにしていたけれど、途中からワンピースなどの注文が優先されて使いきれなくなったと送料代金だけで譲ってくれた。
 ちなみに、60サイズの段ボール一つがそれだ。
 まだまだあまりは多い。
 そして、その端切れのお気に入りを選んで作ったばかりだった。

「あ、命令ではないのですよ! 私の作品を褒めてくれた桜智さんなら、きっとこんなバッグの方がお似合いではないかと! それに、これだったら口も大きく開くし! 私も自分がマジックボックスになるなら、こんなバッグより、可愛いバッグがいいなぁと……」

 【えっ! えぇぇ! これを私にくれるの?】

「はい! 私が作ったのですが、こういうタイプは形が大きいし、ガマ口の口金が高いので、送料もかかるからと思って、その分料金が高く設定していたら、売れないんですよね……あ、これは最新作で、その前のは段ボールの中です! もしこれが気に入らないなら別のバッグでも……小さいサイズもありますよ」

 1番に渡したのは、形はリクルートバッグ風のかっちりしたバッグ。
 でも手さげだけでなく、肩掛けにもなるように2wayバッグになっている。
 その布の一部で作ったのは、ガマ口の肩掛けポーチ。
 折りたたみの財布とスマホが入るサイズである。
 こちらは、外は桜柄で、中は淡い紫の矢羽模様で、下側は丸くなっていてコロコロとした可愛い形だ。

 ちなみに、琴葉は少しこだわりが強く、バッグは大きさによって内布を変えておくようにしている。
 そうしないと、出し入れの時に探し物が見つからないことがあるのだ。
 小銭入れはコインの汚れが内側につくので、なるべく汚れが目立たない色がいいのかもしれない。
 けれど、急いで清算をしなければならないことが多いのと、開きやすく出しやすい形がいいと思う。
 なので、大きいサイズのバッグは内の麻の葉は白地に紺のライン、小さいポーチは薄い紫の矢羽柄というふうにしているのだった。

 【えぇぇ! ありがとう! まぁ結構大きいバッグなのね。A4サイズが余裕で入りそう。でも、この中に移れるかしら! あら? 簡単じゃない!】

 ぼろバッグから何かが抜けると、スポンッと開いたバッグのガマ口に何かが入り込む。
 そしてパクパクと自由に開閉し、

 【わぁ! 綺麗だわ! さいっこう! ちなみにさっき受け取った荷物も一緒なんだけど、綺麗に整理されてるわよ! あ、段ボール、後で返すわね! この中に透明の引き出し付きクリアボックスができてる感じなの。その中にアタシが綺麗に入れておくわね! ついでに欲しいものがあったら、それが欲しいって思いながらガマ口に手を入れると、渡してあげるわ】

と言ってくれる。
 うーん、優しい人だなぁ……。

「ありがとうございます。桜智さん。あ、この家の中とか空間、世界について覚えたいと思うので、また相談させてください」

 【OK! いいわよ。でもわかる範囲でね。よろしく、えっと琴葉ちゃんでいいかしら?】

「はい! よろしくお願いします!」

 こうして、私、琴葉とアイテムボックスの桜智さんとの異世界生活が始まったのだった。
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