もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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ATM機能付き金庫ってありですか?

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 ピスピス……

 鼻をピクピク動かしながら寝入るチビドラちゃん。
 可愛いんだけど……ぬいぐるみみたいなんだけど……。
 いつまで寝てるの?
 ご飯何食べるんだろう……。

【ごっめーん。琴葉ちゃん。ちょっといい?】

 バッグから出てきたのは、ビスクドール。
 漆黒の艶やかな髪に、瞳は濃いめのブルーアイ。
 まつ毛は長く本当に美しい。

【はぁい! 琴葉ちゃん。このドールをもらっちゃった。このお家の中ではこのドールだったら過ごせるみたい。よろしくね!】

 ヒョイッと右の腕が持ち上がる。
 ウインクするのもオプションだろうか?

【それでね? このバッグの中に、あなたの基本の持ち物になる家具とか入ってるのよ。確か……あ、ベッドはあるのね? 中にはなかったわ】

 キョロキョロ首を動かしているのを見ると、ビスクドールの目を通じて家の中が見えているらしい。

 この家は多分だけど一戸建て。
 部屋は寝室の隣に、食卓を置けそうなもう一つの部屋、そして、水回りであるお風呂にキッチンがある。
 洗濯物を干せる空間もあるのだがその向こうにも扉があるようだ。
 淡いナチュラルな色と言えばいいのか、クリームに近い白の壁、ドアはアンティーク調のノブがついている。
 窓の向こうは草原と木々?
 少し遠くにイギリスの有名な時計台に似た石造りの塔がある。

 自分の体をチェックした桜智は長めのスカートの裾をちょっとつまみ、心持ちゆっくりと歩き出した。

 コツン、コツン……

ブーツの底を鳴らしながら歩くと、

【あらっ、結構歩きやすいのね。でもこの子って身長幾つくらいかしら?】

「大体70cmくらいだと思いますよ? ブーツサイズと髪の毛も含めてですが」

【へぇ……大きい方ね】

「えぇ、それに黒髪のドールって珍しいです」

【そうよね。私も見たことないわ。金髪でも良かったと思うのだけど、まぁ、美人でよかったわよね】

くるんっと回る姿もかわいい。

「素敵です! あぁ、もし出来たら、桜智さんの服を作らせてください! 漆黒の髪が美しいので、逆に白いふわふわもいいですね! それに、袴姿の女学生風もいいですよね!」

【あら! それも素敵! お願いしてもいい? 楽しみだわ】

 嬉しそうな桜智だが、すぐにバッグのところに戻り、

【あ、そうそう、部屋が殺風景でしょ? 模様替えしちゃわない? バッグの中にアンティーク調の家具が揃ってるの】

「えっ? 私はハンドメイド作品しか……」

【クローゼットとか本棚、作業机や色々あったわよ。あ、これが金庫ね。ふーん……あ、バッグの中にあったお金の半分を入れておくわね。一応、コインだけどね】

金庫の上部の投函口のような部分を開け、コインが入っているらしい皮袋をポイっと器用に投げ込んだ桜智。
 すると、しばらくして、

 [日本円に変更しています。日本円を使用する際は下の扉を開け、中の注文窓から購入ください。支払いは保管している金庫内の現金を払います。商品はその日午前中注文、翌日午前中にこの部屋に届きます。その場所は必ず決め、十分な空間を開けておくことをお勧めいたします]

と音声が響いた。

 [この金庫内で購入するお店は、加賀見琴葉殿のみ注文できます。注文したい店舗は、最初は二店舗、レベルアップごとに増やすことが可能です。金庫機能はこの地域のコインを預かる金庫機能、日本円に変更する機能、釣り銭交換機能があります]

【至れり尽くせりね……】

 呆れ返る桜智。

「でも、どんなお店があるのでしょうか?」

 恐る恐る扉を開けると、小さいATM機能のようなものが出てくる。
 画面には[預金][出金][日本円に両替][店舗で購入]となっている。
 恐る恐る、[店舗で購入]を押すと、[店舗追加][店舗削除]とあり、[追加]をクリック。
 すると、[ABCスーパー]と[コンビニアルト]、[手芸店ミルク]、[片蔵書店]などが並ぶ。

【ABCスーパーって大型店舗よね?】

「そうですね。100均とパン屋、衣料品もあったと思います」

【じゃぁ、スーパーと、あなた、ハンドメイド商品を売るんだから、手芸店入れるべきよね?】

「……売れなきゃどう生活すればいいのか……不安です。それにどれくらいの価格で売ればいいのかわかりません……」

 急に不安になり弱音を吐く。
 行き当たりばったりで大丈夫だろうか?

【あら、そんなに心配なら外に出たらいいじゃない。あ、まずは店を決めて、食料なんかを確保して、生活の基盤は必要よ。あ、こちらでの服とかは多分バッグの中のあなたのクローゼットの中に揃ってるはずよ】

「はい……そうします。あ、えっ? 今日のご飯とか、今注文したら食べられない? 食器とかフライパンとか……」

 がーん……ショックを受ける。
 すると、

 [初回特典として、3日分の食料品と加賀見琴葉、山本桜智の持っていた食器、台所用品、服などある程度の消耗品をこの後届ける]

と電子音が流れ、段ボール三つ分がドンドンと金庫の横に積み上げられたのだった。


 [第一回目。あと3回届く]

【ヤバイわ……至れり尽くせり、ここまでとはね】

 桜智は呟いたのだった。
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