もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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カワウソもどきのミニドラゴン

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「あの……」

 気分が上がったのか、模様替えを手伝ってくれると言う桜智に声をかける。

 今は寝室ルームのベッドの周りに文机がわりの小さなテーブルに椅子、その横に文机、本棚、ミシンを使うときのミシン台、その下には糸や布を入れる引き出しがキャスター付きで収められている。
 しかも、それを出して設置してくれるのはドール姿の桜智。
 最初はぎこちなく歩いたりしていたのに、動きを会得してからはバッグに戻ってドンドン出し入れを開始。
 バッグを琴葉に移動させ、ポンポンと出していく。

 一応窓の前ではなく、ドアと窓を避けた壁の角を荷物置き場として、移動できるように板にキャスターを取り付けたテレビ台のようなものを設置。
 こちらは高さを少しずつ変え、五つ用意。
 届いたらすぐ、台所やこの部屋のあちこちに移動させ荷物を仕分けすることにした。
 あれこれものを出している間に、テレビ台……桜智と琴葉は宅配ボックスと呼ぶようにした……に段ボールが届く。
 まずは保存食料。
 お米やペットボトルの入った段ボール。
 お餅、インスタントカレー、インスタントラーメン、どんぶりもの、スープ、味噌汁……。

「えっ? これは私購入してない……」

【あ、アタシだわ~。お餅とか好きだったのよ。乾燥ワカメとか、昆布とかついつい買っちゃう……のに料理できなかったのよね】

 桜智の前世の情報は本人のお喋りによって知っていたものの、ドンドン届く荷物に汗をかく。
 多分時間停止されているとは言え、どれだけ買い込んだのか……いや、多分心配性なのだろう。
 水のペットボトルなんて、二リットル6本入った段ボールが4ケースもある。

【あはは……アタシのバッグに入れておくわ。インスタントラーメンを食べるためにタイマーとやかんいるわね】

「あ、私の荷物にそれは多分全部あります。私は食料品より何故か電池とか小物大量購入しちゃってて……」

 その言葉通り、桜智の金品や時計などの貴重品の後、琴葉の荷物が届く。
 最近友人の結婚式に行ったり、遠い遠い親戚のお祝いのお返しが届いていたのだが、食器とか鍋、包丁が多かった。
 あ、たった一人、お返しに消火器をくれたなぁ……何を消せというのか……燃え上がっているのは二人の愛の炎(笑)だろうと突っ込まれていたっけ……。
 県外から帰るのに、飛行機に乗るの大変だった……と思いながら、中にちゃっかり入っていたのに驚く。
 続いて、パンやチーズ、ハムなどや、基本の調味料が保冷剤と共に届いたのにホッとする。

 その後、手早く作ったサンドイッチとペットボトルのお茶を部屋に持ち込み、小さいテーブルと椅子で食べ始めるのだが……。

「そういえば、桜智さん。あのドラゴンちゃんは、まだ目が覚めないのでしょうか?」

 起きるまでベッドはシーツも変えず、毛布を置いただけだったのだが、丸くなったまま眠るドラゴンを見る。

【あぁ……どうなのかしら? 死んではないのよ?】

「お腹すいちゃったのでしょうか? 何食べるのかなぁ? このチャチャちゃんは」

【チャチャ?】

「あ、えっと、この子は黒ちゃんなのですが、前にペットを飼うならチャチャってつけたいなぁって思ってて……あ、モモとかキキとか連続するのかわいいなぁって」

【あぁ、可愛いわよね。アタシもキキとかノノ、ムムってつけてみたかったわ。チャチャ、いいんじゃない?】

 食べられるかどうかわからないけれどと、琴葉が作って一口サイズに切ってもらったサンドイッチを手にしながら桜智は首を傾げる。
 お茶は陶器製のミニチュア食器に注いでもらっている。

 キュアー

 聞きなれない鳴き声に首を傾げる。

【あら? ドラゴン……チャチャの鳴き声みたいね】

「えっ? ドラゴンって猛獣じゃないんですか?」

【違うわよ。この世界のドラゴンは、基本討伐対象の敵じゃないのよ。アタシの前の持ち主だったバカは、ドラゴンや貴重な生物植物の密猟者や犯罪者を見つけてぶん殴って、騎士団とかその地域の領主に突き出す……一種の冒険者というか、金稼ぎみたいなもんだったのね。で、このチャチャも親はどこの地域のドラゴンかわかんないけど、ドラゴンの卵を売買しようとしてた悪徳商人のオークションに潜入したらしいわね。で、バッグに突っ込んで忘れてバッグの中は廃棄物まみれになっていたと……】

 キュアァァ~

ゴソゴソ動くのに驚き、椅子から立ち上がり近づいていくと、小さい丸い真紅の目がキラキラした生き物がキョトンっとしていた。

「か、可愛い!」

【あら、ほんと】

 小さい手足を動かして、何か訴えようとしているらしい。

「えーと……チャチャ?」

 キュア!

【チャチャが名前だとわかってるみたいね?】

 ベッドの上をよたよたと歩き、こちらを必死に見上げるチャチャに私たちはメロメロになる。

【可愛い! うちの子ってことで、アタシたちとお揃いのリボンとかいいわよね!】

「いいですね! 黒い毛ですがまんまるの紅の目なので、パステル色のリボンはどうでしょうか?」

【あ、まだ赤ちゃんだし、Tシャツっぽい服を着せてもいいかも!】

「外の散歩はリードとハーネスもいいですよね?」

【可愛いのにするのよ!】

 食事を終えた後、琴葉はチャチャのための空間を作り、置かれていた本からドラゴンのこと全般について調べることにし、その横で桜智はチャチャの首に結ぶリボンを、琴葉のハンドメイド用雑貨から探していたのだった。
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