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チャチャ
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チャチャは賢いのか、すぐにアタシと琴葉に懐いた。
アタシは、二つのドールを使い分けるものの、それにもすぐに慣れたみたい。
ヨチヨチというより、まだベッドの上をずりずり這い回るチャチャに、琴葉はニコニコ嬉しそう。
家の中を片付けながら、しょっちゅう自分のベッドの上を占領するチャチャをみにくる。
「そういえば、桜智さん。チャチャなのですが、頭が大きくて体が長い子ってどこの子ですか?」
数日過ごす間に、二人で決めたのは、
⚫︎敬語はなるべく話さない。
⚫︎気になることは必ず尋ねる。
⚫︎感情的にならない。
ということ。
アタシは元々こんな感じだけど、琴葉はちょっと難しかったみたい。
何とか語尾の敬語が取れてきた。
でも、アタシのことはさん付けだ。
【ドラゴンの図鑑にいない?】
「えっと、小さい幼体の絵が基本ないんですよね……」
図鑑を手にしてベッドに座った琴葉は、困ったようにページをめくりながら話す。
「あ、一応、見たのはこの辺りだけど……」
【……ヘルトドラゴン? 一応この地域のドラゴンの分布地図ってここにあるでしょ? アタシが確かいたのが、この辺りなのよ】
桜智の指が示す辺りに首を傾げる。
「えっと……この地図はどこなのかな?」
【アシエルって言う世界のアシール大陸よ。一番大きな大陸で、ドラゴン種が集まってるのよ。で、ヘルトドラゴン系とかは鱗のある……えっとトカゲというか、前世で言う一種の翼竜とか恐竜みたいな感じね。ほら、前世のヨーロッパのドラゴンよ。翼あるヤツ。でも、チャチャはモフモフでしょ? カラードラゴン種か、他にいる子守竜関係でしょ。手っ取り早く、肉球を見たらいいんじゃないの?】
「肉球?」
【あら? 知らないの? 猫なんかは、肉球の模様や形が微妙に違うらしいわよ? 血液型のように肉球の模様と形で性格判断できるって言うわ。ドラゴンにも肉球の違いで、種族が大体わかるそうよ?】
「えっ? 種族鑑定? チャチャ。ちょっと足の裏見せてくれる?」
図鑑を置き、琴葉はチャチャを呼び寄せる。
チャチャにしてみると、アタシはお姉さん、琴葉はママらしい。
ママに呼ばれ、嬉しそうに這ってくる。
まぁ、アタシは大体わかってるけどね。
バカがどこで何してたか知ってたからね。
「……えっ……えぇぇ? わからないよ? ピンクの肉球?」
小さな前足をちょっと手にした琴葉が、珍しい特徴を探そうとして首を傾げる。
うん、猫なら一匹一匹、斑模様とかの位置が違うのだ。
でも、チャチャのぷりぷりの足裏は、全く特徴なしのピンクちゃんだ。
【ピンクはホワイトドラゴンの子供よ。カラードラゴン種のホワイトドラゴンやレッドドラゴンは、地図の中央から北方の金の森に主に住む子育て上手なドラゴンに卵を預けるの。で生まれた子供はある程度大きくなったら、迎えに来た親と共にそれぞれのナワバリに戻るのね。でも、この子は森で見つけたんじゃなく、オークションに乗り込んだバカが取り戻した子だから、親とか乳母になる子守ドラゴンのどちらかが傷ついてる可能性があるわね】
「……酷い……」
チャチャをそっと抱き締める。
【ある一定の年になったら、親や親族が迎えに来るかも】
「そうなんだ……いつ頃?」
【それはわかんないわ。だって、全く事情がわからないもの】
首をすくめる。
【それにアタシだってほとんどマジックボックスの中にいて、まぁ、バカが情報通だったからある程度の情報を自分なりに理解してただけよ。文字の読み書きも何とか覚えたけど、面倒だったわ……】
「そ、そっか……桜智さんは、複雑な事情があったんだよね……えっと、じゃぁ、ここから出て行って情報収集? 私一人で?」
【それは難しいでしょ。一人なんて出せないわよ。アタシもついてくわよ。それに、チャチャもここに置いていけないでしょ。アタシの分身バッグにチャチャ入れて、持ち歩きなさい。アタシも外の様子確認したいから、連れて行ってね】
こっちの。亜麻色の髪のアタシを異空間から取り出す。
琴葉は自分作製のバッグを開けないとモノが出せないけれど、アタシは数日過ごす間に異空間から取り出せるようになった。
まぁ、アタシが移れるドールだけだけど。
ちなみに、時間があったらしい琴葉が何故か作ってみたかったと言って、現在の小さいアタシは浴衣姿だ。
着物や袴になると色々追加したいと言っていたが、琴葉がさっと作ったのは、現代風のキャラ物の布で作ったお子様が好きそうな浴衣。
帯もラメ入りのレース布を後ろで蝶々結びにしただけ。
「この布なら甚平でもいいんですよね。最近流行ってます。下のパンツも少し形を変えてダボっとしたロングパンツにして……」
【甚平は部屋着がいいわ~】
「はいはい。あ、チャチャも桜智さんとお揃いのにしようね。チャチャは甚平の上の形に近いシャツ着ようね」
チャチャは長い尻尾を振る。
あ、この子カワウソそっくりなんだけど、一つだけ違うのは、尻尾だけが異様に長いの。
成長したら、空を飛ぶ子だからなんだろうけど、それをあまりよく理解していない琴葉はそこだけ不思議みたい。
明日以降にお出かけを決めたアタシたちは、ここがどこか確認することや、見る場所や買いたい物、そしてどこかで琴葉のお店を開けるか確認することにしたのだった。
アタシは、二つのドールを使い分けるものの、それにもすぐに慣れたみたい。
ヨチヨチというより、まだベッドの上をずりずり這い回るチャチャに、琴葉はニコニコ嬉しそう。
家の中を片付けながら、しょっちゅう自分のベッドの上を占領するチャチャをみにくる。
「そういえば、桜智さん。チャチャなのですが、頭が大きくて体が長い子ってどこの子ですか?」
数日過ごす間に、二人で決めたのは、
⚫︎敬語はなるべく話さない。
⚫︎気になることは必ず尋ねる。
⚫︎感情的にならない。
ということ。
アタシは元々こんな感じだけど、琴葉はちょっと難しかったみたい。
何とか語尾の敬語が取れてきた。
でも、アタシのことはさん付けだ。
【ドラゴンの図鑑にいない?】
「えっと、小さい幼体の絵が基本ないんですよね……」
図鑑を手にしてベッドに座った琴葉は、困ったようにページをめくりながら話す。
「あ、一応、見たのはこの辺りだけど……」
【……ヘルトドラゴン? 一応この地域のドラゴンの分布地図ってここにあるでしょ? アタシが確かいたのが、この辺りなのよ】
桜智の指が示す辺りに首を傾げる。
「えっと……この地図はどこなのかな?」
【アシエルって言う世界のアシール大陸よ。一番大きな大陸で、ドラゴン種が集まってるのよ。で、ヘルトドラゴン系とかは鱗のある……えっとトカゲというか、前世で言う一種の翼竜とか恐竜みたいな感じね。ほら、前世のヨーロッパのドラゴンよ。翼あるヤツ。でも、チャチャはモフモフでしょ? カラードラゴン種か、他にいる子守竜関係でしょ。手っ取り早く、肉球を見たらいいんじゃないの?】
「肉球?」
【あら? 知らないの? 猫なんかは、肉球の模様や形が微妙に違うらしいわよ? 血液型のように肉球の模様と形で性格判断できるって言うわ。ドラゴンにも肉球の違いで、種族が大体わかるそうよ?】
「えっ? 種族鑑定? チャチャ。ちょっと足の裏見せてくれる?」
図鑑を置き、琴葉はチャチャを呼び寄せる。
チャチャにしてみると、アタシはお姉さん、琴葉はママらしい。
ママに呼ばれ、嬉しそうに這ってくる。
まぁ、アタシは大体わかってるけどね。
バカがどこで何してたか知ってたからね。
「……えっ……えぇぇ? わからないよ? ピンクの肉球?」
小さな前足をちょっと手にした琴葉が、珍しい特徴を探そうとして首を傾げる。
うん、猫なら一匹一匹、斑模様とかの位置が違うのだ。
でも、チャチャのぷりぷりの足裏は、全く特徴なしのピンクちゃんだ。
【ピンクはホワイトドラゴンの子供よ。カラードラゴン種のホワイトドラゴンやレッドドラゴンは、地図の中央から北方の金の森に主に住む子育て上手なドラゴンに卵を預けるの。で生まれた子供はある程度大きくなったら、迎えに来た親と共にそれぞれのナワバリに戻るのね。でも、この子は森で見つけたんじゃなく、オークションに乗り込んだバカが取り戻した子だから、親とか乳母になる子守ドラゴンのどちらかが傷ついてる可能性があるわね】
「……酷い……」
チャチャをそっと抱き締める。
【ある一定の年になったら、親や親族が迎えに来るかも】
「そうなんだ……いつ頃?」
【それはわかんないわ。だって、全く事情がわからないもの】
首をすくめる。
【それにアタシだってほとんどマジックボックスの中にいて、まぁ、バカが情報通だったからある程度の情報を自分なりに理解してただけよ。文字の読み書きも何とか覚えたけど、面倒だったわ……】
「そ、そっか……桜智さんは、複雑な事情があったんだよね……えっと、じゃぁ、ここから出て行って情報収集? 私一人で?」
【それは難しいでしょ。一人なんて出せないわよ。アタシもついてくわよ。それに、チャチャもここに置いていけないでしょ。アタシの分身バッグにチャチャ入れて、持ち歩きなさい。アタシも外の様子確認したいから、連れて行ってね】
こっちの。亜麻色の髪のアタシを異空間から取り出す。
琴葉は自分作製のバッグを開けないとモノが出せないけれど、アタシは数日過ごす間に異空間から取り出せるようになった。
まぁ、アタシが移れるドールだけだけど。
ちなみに、時間があったらしい琴葉が何故か作ってみたかったと言って、現在の小さいアタシは浴衣姿だ。
着物や袴になると色々追加したいと言っていたが、琴葉がさっと作ったのは、現代風のキャラ物の布で作ったお子様が好きそうな浴衣。
帯もラメ入りのレース布を後ろで蝶々結びにしただけ。
「この布なら甚平でもいいんですよね。最近流行ってます。下のパンツも少し形を変えてダボっとしたロングパンツにして……」
【甚平は部屋着がいいわ~】
「はいはい。あ、チャチャも桜智さんとお揃いのにしようね。チャチャは甚平の上の形に近いシャツ着ようね」
チャチャは長い尻尾を振る。
あ、この子カワウソそっくりなんだけど、一つだけ違うのは、尻尾だけが異様に長いの。
成長したら、空を飛ぶ子だからなんだろうけど、それをあまりよく理解していない琴葉はそこだけ不思議みたい。
明日以降にお出かけを決めたアタシたちは、ここがどこか確認することや、見る場所や買いたい物、そしてどこかで琴葉のお店を開けるか確認することにしたのだった。
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