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頑張らせていただきます

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「あぁぁ……ミニチュアテディベアかぁ……5センチ前後とか、10cm以下って桜智さん、鬼だ~」

 と頭を抱える私の横で、ケラケラ笑う桜智。

【あら。アタシはこの大きさなのよ。大きいベアなんてだっこできないじゃない。それとも巨大なテディに抱っこされてもいいわよ】

「それも素敵です! うぅっ……頑張ってテディを作らなきゃ……」

 サイズは10cm以下、20cm前後、そして大きめ……。
 まずは練習がわりに巨大なテディを作ります。

「綿あるかなぁ……あぁ! なかった!」

【えっ? 何が?】

 ゴソゴソとクローゼットで何かを探していた琴葉ががっかりする。

「……手芸店で注文しなきゃ、綿」

【綿? そこにあるんじゃないの?】

 クローゼットの奥の段ボール……今度ホームセンターを登録したらシンプルなボックスを購入予定である……の中にある綿を示す。

「いえ、コレは普通の手芸用綿ですが、テディベアやぬいぐるみ用の綿があるのです」

【えっ? どう違うの?】

「えっと……シンプルにいえば、詰めれば綺麗に詰められます。それに持論ですが、戻りが少ないのと、詰めても泳ぎません」

 首を傾げる桜智に、説明する。

「えっと、テディベアはしっかり綿を詰めていないと首を傾げたり、すぐくたびれてへたっちゃうので、本当にたくさん詰めるのですが、安い綿だと、詰める部分にしっかり入る前に、逃げちゃうんです。例えば……」

 桜智の前に出したのはちょっと古いテディベア2体。
 一体は首がくたんとし、背中やお腹にシワができてくたびれ果てている。
 もう一体は、毛は少しほこっている感じだが、姿が綺麗である。

「この2体は同時期に誕生した子なのです。綿が違うのです。このがっしりした子は、もう思いっきりバランスよく詰めました。背中のコブもしっかりあって凛々しいです。でもこっちはほぼ同じ量の綿で仕上げたのですが、バランスよく詰めたのにすぐにへたって、こんな感じなのです。今ある綿は、私が自分用のベッドカバーを作ろうと思って買っておいた安い綿なので……こんなになるのを見るのは忍びないんです……」

 今度、このベアも綿を詰め直すつもりだが、やっぱりコレはないと思う。

【……こだわりって必要よね。買いなさい。許すわ!】

「やったぁ! このベアのも買います。お金あるといいなぁ……売り切れてないといいなぁ……」

 金庫ATM &通販? に近づいた私は、荷物を片付けた際に発見した通帳を預け、財布のお金を全額入れた上で、欲しかった綿に高級なモヘア布とブーツボタン、グラスアイなどをまとめ買いした。
 うん……ブーツボタンなどはワンセットで千円するし、グラスアイもほぼ同じ値段、綿も300gで千円オーバーだけどいいんだ……と割り切る。
 モヘア布が数万だけどいいのだ……。
 こんな時に使ってこそ、送料無料なのだ……。
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