もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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ただ何かが欲しいんだ

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 ボクはヴァーロ。
 ヴァーソロミューと言う。

 一応、実の親は死んでいるらしい……というか、母は知らないが父は寒々しいオーラを撒き散らし、ついでに大地を枯らしたり、腐らせたりするので、育ての父母がその怨念を抑え込んで封じ込めたらしい。
 父さん母さん……こう呼ぶときは育てた両親……は、まぁ、凄い人だったとだけ言おう。

 父さん母さんには息子がいる。
 アーサー・ラディーン……戸籍上のボクの弟だ。

 ボクは1000年経っても幼児のままだけど、アーサーは結婚して生まれたのが王女だった。
 病弱な姪が心配で、ボクは意味も知らないまま加護を与えた。
 無意識の契約に縛られ苦しんだのは姪、身体は弱いのに、その体に見合わぬ強い加護を受けて、そのバランスを崩した。
 本当ならもっと元気に走り回ったり、遊んだりできただろうに、ちょっと歩いただけで熱を出した。
 自分の力を理解していなかった……。

 でもアーサーも姪も許してくれた……けれどその後、姪は天命を終え、契約も終えたと思っていたのに、ごく稀にその契約が顔を出し、ボクの影響を受けた子供が生まれる。

 最近だと、バーバラだ。
 バーバラはアーサーの末裔の第三王女だった。
 兄姉がおり、そして弟妹もいた。
 でも、5歳くらいで成長が止まり、その後40歳ごろまで離宮と呼ぶには狭い小さな屋敷に押し込められた。
 申し訳なくて、定期的に会いに行ったが、負けん気が強くそして幼い容姿の割に元気なバーバラは、ハーブや薬草を独学で勉強し、そして薬師として身を立てた。
 本当にタフな子だった。
 ボクとほぼ同じくらいバーバラに会いに行ったのは、ボクの影響はほぼなかったはずだけれど、元々精霊の末裔で長命の一族のジョシュ。

 飄々としつつ、少しヘタレなジョシュは、バーバラに構い倒し、ちょっと揶揄いつつ距離を縮めた。
 そして、幼児の見た目だがしっかり大人なバーバラと結婚した。
 ちょうど、ジョシュの実家の後継者がいなくなったので、実家に戻ることになったのもあって、そのまま連れて帰ったのだ。
 現在二児の父と母。
 バーバラは領地で末っ子の子育てをしているので、今度会いに行きたいのだが、ジョシュは許してくれない。

「ムカつくよね……ボクの愛し子なのに!」

ということで、現在現状子供の姿では王宮内を歩くだけで物珍しそうに見られるし、王宮にはアルファードとかいるけど、居心地悪いから何処か行こうかなと思っていた。
 そうすると、珍しい黒髪で黒い瞳のコトハに出会った。



 黒は忌避される色ではない。
 けれど、この世界ではほぼ生まれない。
 何故なら全能の神が禁じた色だからだ。
 全能の神が愛した創造の女神が身に纏った色が全ての色を混ぜた黒。
 髪も瞳も黒。
 その愛おしい存在と同じ色を持つ人間は居てはならないと世界から追放したのだ。
 ごく稀に迷い込むことはあるが、その存在は迷いの原に住むホワイトドラゴンが即座に送り返すらしい。
 でなければそのものが苦しい思いをする……それをこの大地の神は望まないからだ……。

 ちなみに大地の神は創造の女神と全能の神との間の子供だが、全能の神は創造の女神が自分の傍を去る原因になる息子を憎んでいるらしい。
 まぁ、ちょっとイってる神の戯言を全て聞いてられないよなぁ……と、神を怒らせたら自分自身が死んでしまうだろうことを理解しているものの、八つ当たりで故郷を追われる羽目になった黒い髪の一族の伝説を教わったボクはうんざりとしつつ思った。
 だって……理不尽な仕打ちを幾度も受け続けて、命を削り、子孫を減らしていく一族。
 その一族を最後に嘲笑うかのように異空間に打ち捨てるなど、気まぐれな神のゲームというのはいかに残酷か……。

「……コトハも、もしかしたらその一族の人間かもしれないから……ホワイトドラゴンが迎えに来るまで、守らなきゃ……」

 でも、コトハはニコニコ楽しそうだったけど、不思議な人形は不満タラタラだった……。

「まぁ、楽しければいいな……」

 言いながらボクは、自分用の荷物をマジックバッグに入れて、待ち合わせの場所に向かうのだった。
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