もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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ボクは満たされないから……

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「あ、ヴァーロさま」

 トコトコ姿を見せたヴァーロさまは、7歳くらいの少年の姿。
 ひらひらと手を振る少年騎士の姿に、ちょっとがっかりする。

「コトハ~酷くない? ボク、一応これでも有名人なんだよ? この姿の方がいいんだって」
「えぇぇ~あの格好かと思ってワクワクしてたんですよ~」

 モフモフ好きだとバレているため、本性丸出しでガッカリする姿を見せる。

「あはは! 本当にモフモフ好きなんだね~……って、そのバッグ、マジックバッグ?」

 肩にかけていたバッグから、大きめの何かを出したのを見て、ギョッとする。

「はい。アルファードさんにもお伝えしたのですが、私、家族を亡くして、親族を頼ってこちらに来たんです。その親族が送ってきたんですよね」
「持ち主固定してる? 大丈夫? マジックバッグって滅多に手に入れられないものなんだよ? それに、普通、こんな感じなんだけど……」

 腰のベルトに挟んでいる、ちょっと古びた皮袋のようなものを示す。
 前の桜智のバッグを少し綺麗にした感じである。

「えっ? あぁ、実は届いたときは、そんな感じでした。でも、あまり可愛くないなぁと……私が作ったバッグに移って欲しいなぁって思ったら、そうなりましたよ?」
「えぇぇ! そんなことできるの? ぼ、ボクのバッグも変更できる?」
「えっと……どうでしょう? やってみましょうか?」

 自分のバッグの中を探り、取り出した腰に巻いたり、背中に回すこともできる濃いベージュ系の色のショルダーバッグを出す。
 こちらもがまぐちバッグである。

「ヴァーロさま、バッグお借りします」

 バッグの口を開き、中を覗き込むと、無造作に手を突っ込んだ。

「うえぇぇぇ~! い、い、異空間だよ~! ボク専用に固定されてるのに、突っ込むの?」
「えっ? 異空間? えっと、中にこの子がいて……この子がバッグを出してって言ってたので……」

 取り出したのは、手のひらサイズのぬいぐるみ……。
 そしてそれを、ショルダーバッグの中に入れて、何度か開け閉めすると、

「はい、ヴァーロさま。どうぞ、確認してくださいね」
「……え、えぇぇ……」

少々引きつつ、受け取ったバッグを確認すると……

「うえぇぇ! ボク専用固定バッグになってる! そ、それに何? 内部サイズが一気にレベルアップしてる? 時間停止機能がある?」

【……うわぁ……何してんのよ。琴葉】

 突然聞こえてきた声にヴァーロはピョンっと飛び上がった。

「な、なになに?」

【……はぁい。よろしく。琴葉のバッグの一部とアンタのバッグが繋がりました~、おめでとう~】

 ひょっこり顔を出したのは亜麻色の髪のブライスドール。

「あ、こないだの人形!」

【アタシには一応桜智っていう名前があるの。琴葉のバッグの中にいる精霊と思えばいいわ】

「精霊……?」

【えーと、琴葉のすんで居た地域には生きている全て……例えば動物、魚や木々、草、食べ物だけでなく人間の作ったスプーンやナイフ、鏡、櫛全てに精霊が宿るのよ。そういう信仰があるの。人形やバッグもね】

 めんどくさそうに言う桜智と、ニコニコ見守る琴葉を交互に見る。

「本当? 騙してない? 煙に巻こうとしてない?」
「大まかに言えば正しいです。嘘じゃないですよ」
「でも中身が……あぁぁ! 服とか毛布がない!」

【あんなボロいの処分に決まってるじゃない! 琴葉がアンタに部屋とか家具用意してないはずがないわよ! ほらいくわよ! チャチャも待ってるんだから!】

「服~! あ、お金は?」

【あぁ、あれは貰った……りしないわよ。アンタねぇ……両替しときなさいよね! 預かってるけど、高額コインって使いにくいのよ!】

 桜智はバッグの中からコインを出し入れする。

「仕方ないじゃん! ボクのお小遣いだもん! そんなに使わなかったから貯まってたんだよ。それに、琴葉の家に押しかけるにしても、ちゃんと家賃とか出さなきゃと思って……いくらかわかんなかったし」

【……アタシが知ってるのは、四人家族が1ヶ月余裕持って生活できるのが3ルード。アンタが持ってきてんのは、その300倍以上だよ! お馬鹿~! 1000枚も持ってくんな! 一月3枚請求してやるつもりだったのに!】

 コインを投げつけようとしたのを、琴葉は慌てて止める。

「桜智さん~! コイン投げちゃダメ!」

【ちょっと多めに請求してやるって思ってたけど、なんなの、この額! 異常なのよ! このお坊ちゃんめ!】

「だって~、ボク偏食気味だし、迷惑かけちゃいけないからって、家族に相談したら、出してくれたんだもん」
「偏食?」
「ボク、甘党だから、花の蜜とか砂糖漬けのベリーとか、お菓子が好きなんだよね。でも高いでしょ?」
「いえ、ジャムとか好きですか?」

 この間届いた荷物に大量に保存用の羊羹や柔らかいチョコパン……いや、あれはマフィンだったと思う……にチョコやクッキーもあった。
 それにパンケーキミックスがあったので、シロップつきでチャチャにも朝作ったばかりである。
 その後、チャチャは歯みがきする時期のために、口の中に手を入れる練習もしておいた。
 ……チャチャが欲しがるからパンケーキも与えたのだが、ドラゴンって超甘党なのか……。

「一応、一番好きなのは、ここから西にある草原に咲く、ルエンディードっていう花の蜜と花びらが好きだよ。あとは、北のエリオニーレ。一番好きなのは、ヴィルナ・チェニアっていう幻の花の蜜。それは数十年に一回だよ。満腹っていうのはわかんない……食べてもなんとなく満たされないから」

 最後の一言に、毒舌の桜智も言葉を失う。

「どれだけ食べるか分からないから、多めにねってこと」
「じゃぁ、引っ越す前に溜まっていたお菓子ある程度出しますので食べます? お口に合うといいのですが……あ、ドーナツもありますよ」

 さりげなく琴葉は言い、ヴァーロの手を取り歩き出したのだった。
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