もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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クッキー! ラングドシャ! ゴーフル!

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「うわぁ! お菓子! これ何? こっちはぁぁ!」

 家に到着したヴァーロにリビングのソファに案内すると、テーブルに置いていたクッキーを出す。

「えっと、チョコチップとナッツ、ジャムの乗せられているのと、プレーンに他には抹茶、紅茶、コーヒーを混ぜたのでしょうか?」
「えぇぇ~すごい! 食べていいの? あ、一種類一個ずつでもいい……」
「構いませんよ~なんなら全部どうぞ。これ、実は大量まとめ買いしてて……あはは」

 何故こんなに溜め込んでいたんでしょう……桜智さん……。



 琴葉の荷物がひと段落ついたあと、なぜか段ボールがドーンと送られてきたのだ。
 しかも段ボール三つ分……軽いスナック菓子ならまだしも、全部ぎっしり詰まったクッキー、せんべい、キャンディ缶。
 某テーマパークの限定缶もあったが、それ以外は高級贈答菓子。
 そして申し訳なさそうにもう一回届いた段ボール二つの中身は、高級茶葉やティーカップ、マグカップ、そしてポイントをためて交換できるキャラクター皿など……。

「溜めて、もったいなくて使えなくて、どんどん溜まって、台所や靴箱とかに隠して見て見ぬ振りしてたとか……」

【ぎくっ……】

 首をすくめ、目を背けるドール。

「あ、これ! コンビニでポイント溜めて……あぁ! 交換先着限定の特別ボウルとかあるじゃないですか! すごい! 羨ましい! 私はこれ欲しかった……えぇぇ! 二個もあるぅぅ!」

【あ、アタシだけで集めたんじゃないの! 会社の同僚が買ってきたのについてたシールを、許可を得て貰って交換しただけよ! アンタにあげるわよ!】

「あ、数の多いのは普段使いで使いますが、限定は残しときません?」

【そうしましょう!】

 色が近いものが多いので、ボウル、皿、小皿、マグカップとお揃いも楽しそう。

と使う食器は食器棚に並べ、現在使う予定のないものはマジックバッグに納める作業を繰り返す。
 そんなことも数日ワイワイ楽しんだのだが、お菓子類は多すぎる……。
 いくら美味しいものでも、桜智は一日クッキー三枚がせいぜい、チャチャも豆乳やミルクヒタヒタの砕いたクッキーやビスケットは好きだが、まだ一枚まるままは食べられない。
 なので無理して琴葉が延々と食べる羽目になるのではと思っていたくらいだ。


 なのに、

「えぇぇ! いいの? ボクいっぱい食べちゃうよ?」
「どうぞ~なんなら見ます? これだけあるんですけど……」

と段ボールを開けて見せる。

「これ、何?」
「缶入りお菓子です。このクッキーもこの中に入ってましたよ」

 一応蓋を開け、包装を剥がして見せる。

「すごい~! お、美味しそう! じゃぁ遠慮なく!」

 目を輝かせたヴァーロは、お皿の上のクッキーを一枚一枚食べ始める。
 飲み物はホットミルクに、ほんの少しインスタントコーヒーと砂糖を混ぜたもの。
 甘すぎるクッキーに味変させるためだ。
 次はロイヤルミルクティにしておく。

 上品だが吸い込むように次々食べていく少年に、途中から唖然とした桜智が、

【すごいわね……本気で飢餓状態だったのね……】

と呟く。

「美味しい! これも! こっちも! クリーム挟んだの、ボク好き!」
「ラングドシャとゴーフルを並べていたのですが……」
「こっち!」
「ラングドシャですね」

 ゴーフルは薄いウェハースの間にクリーム、ラングドシャは薄いクッキーの間にチョコクリーム。
 どちらも元々桜智の好物である。
 紅茶を飲みながら、時々飲み物を追加してあげつつ見守ると、お皿いっぱいのお菓子は全部なくなった。

「……美味しかったぁぁ! あ、一人で食べちゃった!」

【その食いっぷり感心するわ~】

 桜智の呟きに、

 キュアァァ~

と寝室から声が聞こえる。

「あ、チャチャ、起きたのかな?」
「チャチャ? 赤ちゃん? ペット?」

【家族よ。アタシたちの。今日からアンタも家族だけど】

 立ち上がった琴葉が部屋を出ていき、しばらくして戻ってくる。
 その腕にはくまさんの着ぐるみ姿のチャチャが、どうして置いていったのと言いたげに、

 キュアァァ!

と文句を言っている。

「ごめんね~チャチャ。よく寝てるから起こさなかったのよ」

 琴葉は宥めながらソファに戻ると、

「チャチャ。今日から一緒に暮らすお兄ちゃんだよ。ヴァーロお兄ちゃん。よろしくねって言おうね?」

 キュッ?

フードの間からヴァーロを見て、首を傾げている。

「……えっ? えっと……えと……よ、よろしく……」

 なぜか頬を真っ赤にしてモジモジしつつ、ヴァーロがチャチャを見る。

 ん?

 桜智と顔を見合わせ、首を傾げるものの、

「あ、そうだ。ヴァーロさま、この後お部屋に案内しますね? それに衣装も大体のサイズ揃えてますので」

【なんなら、本来の姿でどうぞ? 琴葉が喜びます】

「そ、それは……いいです……」

いつになくカチコチのヴァーロを不思議に思いつつ、チャチャの背中をなでなでしていた琴葉だった。
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